
横浜の風物詩〈GREENROOM FESTIVAL〉(以下、GREENROOM)を、「音楽フェス」と一言で括ってしまうのはもったいない! たしかに同フェスには国内外の人気アーティストが集結し、複数のステージで極上のライブが繰り広げられる。しかし、この〈GREENROOM〉を体験した多くの来場者が口をそろえて語るのは、「音楽以外の時間も含めて楽しかった」という感想だ。
横浜らしい潮の香りに、光り輝く青空や港の風景。赤レンガ倉庫という歴史的価値のある場所を舞台に、ミュージック・アート・マーケット・フード・ファッションなどが同時多発的に浮かび上がる。そこでは何かを“観る”というより、空間の中で“過ごす”という感覚を味わえるだろう。
本記事はタイムテーブルをなぞるためのガイドではない。〈GREENROOM〉という横浜の2DAYSイベントをとことん楽しむための、“体験の予習”としてぜひチェックしてほしい。
時間帯別にスケジュールをアレンジ
〈GREENROOM〉らしい楽しみ方
〈GREENROOM〉を最大限に楽しむコツは、無理にすべてを回ろうとしないこと! むしろ、「何もしない時間」をあらかじめ想定しておくと、ビギナーでも無理なく楽しめるはず。
午前〜昼|フェスの“呼吸”に身体を合わせる時間

開場直後は、音楽よりもまず会場全体をチェック。ステージ位置、休憩しやすい場所、日陰、トイレやフードの導線などを把握できると、そのあとの行動が楽になる。この時間帯は、ART&MARKETエリアを中心に巡るのがおすすめ。まだ人が少ないため作品やプロダクトをじっくりと見ることができるので、フェスの騒がしさに入る前の静かな助走のような時間だ。
夕方|移り変わる風景の中でじっくり浸る時間

太陽が傾き、空の色がゆっくり変わっていく……この時間帯は〈GREENROOM〉という空間が完成形に近づく。流れる音楽が身体に馴染み、景色と溶け合う時間は、ステージ前で集中してもいいし、少し離れて海を眺めながら音を浴びるのもいい。できればお目当て以外の音楽にも耳を傾けてみよう。偶然耳にした曲が、その日のハイライトになることも珍しくない。
夜|ピークタイムを選択してとことん楽しむ時間

夜になると会場の熱量は急上昇! メインステージには続々と人が集まり、いかにもフェスらしい光景が広がる。この時間帯はあえてすべてを追わず、自分が最も観たいアクトを絞るのもひとつの選択だ。それ以外の時間は、DJエリアやフード、少し落ち着いたスペースで余韻を楽しむ。この緩急の付け方が、フェスを2日間にわたって最後まで楽しむための鍵になるはず。
ARTエリアでの静かな思考時間と
MARKETエリアでの出会いや体験

〈GREENROOM〉の原点にあるのが「ART」。 サーフ&ビーチカルチャーを軸に、海と人、自然と都市の関係性を見つめ直すという思想が、ARTエリアには凝縮されている。
写真・ペインティング・グラフィックなど表現手法はさまざまだが、どの作品にも共通しているのは、自然を“消費対象”としてではなく“共存する存在”として捉える視点。ARTエリアで作品と向き合うことで、聴く音楽の印象が変わる。そんな感覚の往復は、同フェスならではの体験と言えるだろう。実際に多くの来場者が、アート作品の前で想像以上に長い時間を過ごしている。それはアート作品がフェスの装飾ではなく、思考を促す存在として機能している証拠だ。


そして〈GREENROOM〉の大きな特徴が、無料で場内に入って楽しめるMARKETエリア。ここで楽しさを覚えて、同フェスのファンになったという人も多いのではないだろうか。
MARKETエリアに並ぶのは、単なるフェスグッズではない。〈GREENROOM〉のスタンスを支持するブランドやクリエイターが、それぞれの思想を持ち寄り、そこに共感して来場者はアイテムを買うのが醍醐味だ。フードもまたこのフェスの大事な要素。ジャンルや国籍にとらわれない多様なラインナップは、食事の時間を“休憩”ではなく“体験”に変えてくれる。海を目の前に、好きな音楽が聴こえる中で食べる一皿。それだけで、いつもの食事とはまったく違う記憶に!

「サーフカルチャー」×「洋楽&邦楽」
〈GREENROOM〉ならではのライブ

音楽だけではないと冒頭で述べたが、もちろんそれでもライブは〈GREENROOM〉の大きな魅力で、ラインナップはジャンルレスでありながら、明確なムードを持つ。同フェスが一貫しているのは、サーフカルチャーと親和性のある音楽をアップデートし続けている点。流行を追うのではなく、カルチャーとしての持続性を重視する姿勢がラインナップにも現れている。

今年のラインナップを紹介すると、5月23日(土)は、サーフカルチャーとの親和性を体現する平井 大のGOOD WAVEでのライブで幕開け。BLUE SKYではニュージーランド発のバンド・LEISURE(レジャー)や、英国ジャズエレクトロニックのEmma-Jean Thackray(エマ=ジーン・サックレイ)のサウンドスケープが音楽的な奥行きを広げ、RED BRICKではMatteo Mancuso(マッテオ・マンクーゾ)がクラシックギターの超絶技巧で夕方から夜の時間を演出するだろう。さらに、PORT LOUNGEのDJ(CAPTAIN VINYL、Alex from Tokyo、Ajuchan)でも身体を揺らしたい。
そして邦楽では、〈GREENROOM〉というフェスで鉄板のDragon AshやKREVA などに加えて、go!go!vanillas、GADORO、PESといった多彩なアクトが時間ごとに異なるグルーヴを提示し、おとぼけビ〜バ〜や長岡 亮介といった個性もラインナップに散りばめられている。

そして土曜日のトリは、現代のR&Bシーンを象徴するアーティストのひとりで、グラミー賞受賞歴を誇るマルチ・プラチナ・シンガーソングライターのELLA MAI(エラ・メイ)。フェスの終盤、ライトの明るさに移り変わった横浜の夜に登場する彼女は、甘美でありながら力強いグルーヴと歌唱で、〈GREENROOM〉の観客を包み込むパフォーマンスを届けてくれるだろう。
続く5月24日(日)は、確かなキャリアを持つAI、ORANGE RANGE、東京スカパラダイスオーケストラでスタートダッシュを切り、UKジャズを牽引するJoe Armon-Jones(ジョー・アーモン・ジョーンズ)や、iri、Kroi、SPECIAL OTHERS、YONA YONA WEEKENDERS、KIRINJIといった現在の邦楽シーンを象徴するアーティストたちでフェスらしい音楽体験を存分に味わおう。

さらに、新しい音楽の解釈を提示する GEZAN や故 Nujabes の遺した音楽を再構築する Tribe Sampler Collective – Nujabes Tribute Set –が登場するRED BRICK、SOIL&“PIMP”SESSIONS の SHACHOを筆頭にDJ KAWASAKIやDJ SHOTAが回すPORT LOUNGEにもぜひ。
そしてEzra Collective(エズラ・コレクティブ)に変わって急遽出演を決めたJANELLE MONÁE(ジャネール・モネイ)と、〈GREENROOM〉のオーガナイザー・釜萢直起が「“音楽の神”そのもの」と称える JON BATISTE(ジョン・バティステ)が続くGOOD WAVEのクライマックスは、同フェスの21年目という新たなスタートを祝うのにふさわしいステージとなるはず。
「なにを観たか」より「どう過ごしたか」
あなただけの〈GREENROOM〉を発見

横浜・赤レンガ倉庫という立地は、〈GREENROOM〉を語るうえで欠かせない要素だ。都市のど真ん中にありながら、視界は開け、風が通る。高層ビルと海、歴史的建造物と最新の音楽。相反する要素が共存しているこの場所は、都市型フェスの思想そのものを体現している。
来場者の雰囲気も独特だ。年齢層は幅広く、フェス慣れした人から初参加らしきカップルやファミリーまで、誰も浮くことがなく、それぞれのペースで過ごしている。この独特な“居心地の良さ”は、〈GREENROOM〉というフェスが20年かけて磨き上げてきた産物だろう。

今年も、「なにを観たか」より「どう過ごしたか」が記憶に残るフェスに。音楽に心を預ける時間、アートに想いをめぐらす時間、何もせずに海を眺める時間──そのすべてが平等に存在する2日間は、音楽フェスという枠を超えた都市型カルチャー体験となるだろう。今回紹介したポイントを参考に、横浜・赤レンガ倉庫で、自分なりの〈GREENROOM〉を見つけてみて!
Text by Rascal (NaNo.works)

