都市における機能服の役割はここ数年で大きく変化し、環境に適応する道具であることを前提に、「どのような思想をまとうのか」を問う時代へ。プレミアムスポーツブランド・DESCENTEが展開するハイスペック・テックウェア・カテゴリのDESCENTE ALLTERRAINと、アートディレクター・グラフィックデザイナーの上西祐理とのコラボレーションは、そのひとつの回答を提示する。

2026年6月11日(木)から21日(日)にかけて、代官山のDESCENTE BLANC 代官山で開催中の限定コレクション〈DESCENTE ALLTERRAIN GRAPHIC CAPSULE COLLECTION BY YURI UENISHI〉のインスタレーション展示は、まさにその試みを可視化する場に。本稿では、同会場で行われたメディア内覧会およびインスタレーション展示から浮かび上がった、新たな機能服の価値観を探った。

ALLTERRAINの表現の幅を拡張する
上西祐理の〈Now Printing〉という思想

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DESCENTE ALLTERRAINはスキーやスポーツの文脈を出自としながら、都市生活における機能服のあり方をアップデートしているブランドだ。防水・透湿といった素材性能はもちろんのこと、縫製仕様やパターン設計に至るまで、すべてが合理性に基づいて構築されている。

特徴的なのは、合理性を声高に主張しない点。テクノロジーは常に内側にあり、外見はあくまでもミニマル。それは機能が着る人の生活に溶け込むことを是とする思想でもあるだろう。

一方で上西祐理は、グラフィックデザインの分野において、完成形ではなく生成の過程を表現の主軸とする人物だ。印刷工程におけるズレや重なり、色の滲みなど、本来は修正・排除される要素を肯定し、プロセスそのものを視覚化するアプローチで、独自の立ち位置を築いてきた。

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今回のコレクションのビジュアルモチーフとなっているのは、2024年にginza graphic galleryで開催された上西の個展〈Now Printing〉で発表された作品群。Now Printingとは一般的に印刷現場で使われる言葉であり、完成に至る途中段階を示すサインでもある。上西はその言葉通り、2006年以降に撮影してきた日々の断片を、相反する要素(写真とグラフィック、具象と抽象、現実と非現実、普遍と刹那、デジタルとアナログ)を往来しながら作品として再構築してきた。

時を同じくしてALLTERRAINもブランドとして、ものづくりの現場で「相反する要素をどのように共存させるのか」という命題と向き合っていた。機能服としての合理性や完成度を極限まで高める一方で、 都市生活における感情・個性・表現といった要素をいかにプロダクトに取り入れるのか。その命題に向かっている過程で、偶然にも上西の〈Now Printing〉と出会ったそうだ。

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ALLTERRAINの表現の幅を拡張する存在として、これ以上ない存在だった上西。今回のカプセルコレクションは服にグラフィックを装飾として足したという次元のものではなく、ALLTERRAINが思い描くプロダクトを、上西のグラフィックで具現化した理想的な成功例と言えるだろう。

シームレスな展示とインスタレーション
互いを補完し合う機能性とアート

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会場となったDESCENTE BLANC 代官山では、プロダクト展示とオブジェやウェアを組み合わせたインスタレーションがシームレスに構成。壁面には上西のグラフィック作品が飾られ、すぐそばに同じモチーフをまとったウェアが並ぶ。グラフィックとプロダクトが連続した風景として浮かび上がることで、空間全体がALLTERRAINのプロダクト哲学を体現しているように映る。

来場者はグラフィックを見る視線と、プロダクトを見る視線を何度も往来させる。それは上西とALLTERRAINが掲げる“相反する要素”を、展示やインスタレーションを通して検証する行為であり、来場者ひとりひとりに解釈を委ねるかのような、未完の余白を感じさせるものだった。

「ゆらぎや二面性に共感していただいて、今回の取り組みが実現しました。ALLTERRAINは都市で着られる服にアウトドア品質のクオリティがあるところが特徴なので、Now Printingで作ったものの中から都市性とアウトドア性を混ぜたものを多めにピックアップしました。あと展示空間に関しては、写真がグラフィックになり、グラフィックが服になり、服を撮った写真がポスターになるというような循環が面白いなと思い、そういった要素を表現しています」(上西)

上西とALLTERRAIN との融合で生まれた、GRAPHIC CAPSULE COLLECTION。アイテムそれぞれに着目してみても、異なるかたちでNow Printingを体現している。

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ナイロンワッシャー素材のオープンカラーシャツは、軽やかな風合いとグラフィックのゆらぎを直感的に感じさせる一着だ。はっ水機能を備えていることで、都市生活からアクティブなシーンまでシームレスに対応。同素材のショーツと組み合わせることで、さらにグラフィックの立体感が浮かび上がり、そこからも「一着で完結しない」というNow Printing的な発想が見て取れた。

上西の作品を胸ポケットや背面などにビジュアルモチーフとして落とし込んだTシャツは、吸水速乾性・ストレッチ性・UV遮蔽といった機能に加えて、縫い目の裏側にはシームテープ加工も施されている。抗菌防臭加工を施した内側素材や調整可能なバックルなどを備えたジェットキャップや、はっ水加工を施した生地で取り外し可能なショルダーベルト付きのサコッシュなども、日常使いを前提としたリアルな機能を備えつつ、グラフィックが“刷られた痕跡”としてそこにあった。

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上西としても機能素材へのプリントは初めての経験だったそうで、その再現度の高さに、さらなる表現の可能性を感じていた模様。展示会場の階段を上がったスペースには上西が去年、鍾乳洞に行って作った新作グラフィックの“CAVE”シリーズも展示され、今後の展開も期待させた。

機能性とアートは対立するものではなく、互いを補完し合う関係にある──本コレクションは、単なるビジュアルコラボレーションではなく、思想レベルでの交差を物語っていた。

INFORMATION

DESCENTE ALLTERRAIN GRAPHIC CAPSULE COLLECTION BY YURI UENISHI

販売状況 発売中
展開店舗 DESCENTE TOKYO、DESCENTE BLANC 代官山、DESCENTE 新丸ビル、DESCENTE グランフロント大阪、DESCENTE ONE FUKUOKA BLDG.、DESCENTE KOBE、DESCENTE なんばパークス、DESCENTE クオーツ心斎橋、DESCENTE 名古屋 HAERA、DESCENTE ヒューリックスクエア札幌、DESCENTE STORE オンライン
展示情報 DESCENTE ALLTERRAIN GRAPHIC CAPSULE COLLECTION BY YURI UENISHI EXHIBITION
会期 6月11日(木)〜6月21日(日)
時間 11時〜20時
会場 DESCENTE BLANC 代官山
住所 東京都渋谷区猿楽町19-4 CUBE代官山C棟

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