令和ロマンのくるまが初めて監督・脚本を手がけた短編映画『BREAK SHOT』が、7月31日(金)より渋谷シネクイントほかにて順次公開される。5月16日におこなわれた令和ロマン単独ライブ『RE:IWAROMAN』の幕間映像としてサプライズ上映された本作は、全編をドライブレコーダーの視点で描き、車内に交錯する言い訳や見栄、焦り、人間の滑稽さを、緻密な会話と独特の“間”で映し出すブラックコメディだ。
限られた空間と時間の中で展開する物語は、上映直後から大きな話題を呼び、シンガポールの映画祭<World Film Carnival Singapore>では脚本賞・プロデューサー賞・短編部門賞の3冠を達成。さらに、アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)2026」でも上映されるなど、国内外で高い評価を獲得している。
今回は、同映画祭のセレモニーに出席したくるまと、本作で芸能人カップル役を演じた森川葵に、式典の舞台裏で直撃インタビューを敢行。芸人として数々の漫才を生み出してきたくるまは、初監督作品でどのような映像表現に挑んだのか。企画の成り立ちや演出の裏側、そして俳優・森川葵から見た“監督・くるま”の姿を通して、その発想の源泉とクリエイティビティに迫った。
INTERVIEW
くるま × 森川葵

企画の原型と、『BREAK SHOT』が生まれるまで
──企画の初期段階では、中華料理や野球部という案もあったとのことですが、そこから最終的に『BREAK SHOT』の形に至った経緯を教えてください。
くるま:企画段階ではいろいろアイデアはあったんですけど、スケジュールの関係と撮りやすさという部分が大きいですね。ロケの時間もそんなに取れないし、初めて撮るならワンシチュエーションで完結するものの方が撮りやすいだろうということで、車内のワンシチュエーションという形になりました。
──ドライブレコーダー視点はこの作品の大きな特徴ですが、くるまさんのYouTube企画『くるまの助手席』を連想する方も多いと思います。その点は意識されていましたか?
くるま:実は逆で、順番は映画の方が先なんですよ。『オフライン ラブ』や『ボクらの時代』でご縁があった制作会社さんと一緒にYouTubeを始めることになった時に、いろいろな企画案を投げてもらっていて、その中に『くるまの助手席』の案もあったんですよね。映画を作り始めたタイミングだったのでちょうどいいなと思って。そのことを半年以上ずっと内緒にしていたんですけど。

──制作にあたり、こんな感じにしたいとイメージしていた映画はありましたか?
くるま:全然そうはならなかったんですけど、ダミアン・ジフロン監督の『人生スイッチ』(スペインの巨匠ペドロ・アルモドバルが製作を務めた)ですね。自分が好きな不条理の具合みたいなものがあって。芸人が面白いと思うお笑いと、映画のコメディってちょっと違うじゃないですか。国が違うだけじゃなくて、面白さの捉え方や解釈が違う。でもコメディで撮っていない映画の中に、不条理な状況から生まれる笑いというか、自分が“面白い”と感じる瞬間があったりする。いろんな作品から拾っているパーツはあるんですけど、一番やりたいものに近いのは『人生スイッチ』でしたね。
“間”へのこだわり
──森川さんは最初に台本を読まれたとき、どんな印象を持たれましたか?
森川:『BREAK SHOT』は登場人物ごとの車内の状況が交差する形になっていましたが、最初に台本をいただいた時は、それぞれの車内でのストーリーがブロックごとにバラバラで書かれていて、それを一つずつ見せていくようなものでした。これをワンカットでやってうまくできるかな、という気持ちと、くるまさんの考えている面白さをちゃんと表現できるのかというプレッシャーもありましたね。

──実際に現場に入ってみて、監督としてのくるまさんはどうでしたか?
森川:よそよそしかったですね(笑)。
くるま:それはマナーとしてね!森川さんに馴れ馴れしすぎると周りの大人がピリつくと思って。

──印象に残っているディレクションや、他の監督との違いを感じた部分はありましたか?
森川:「こうしてほしい」という要望を感情の説明ではなく、「このフレーズをこういう風に言ってほしい」と、すごく具体的に伝えていましたね。車の窓越しに一生懸命、何度も何度も言い回しやテンポについて説明している姿が印象的でした。
くるま:高良さんには何回もリテイクして申し訳なかったですね。なんでもかっこよくなっちゃう!
森川:私と高良さんとのやり取りの中で、高良さんが言い出すまでに絶妙な間があってから、決断の一言を言うという瞬間があるんですけど、その間をワンカットで撮っているので結構シビアで。間の取り方の部分で結構粘られていたという印象がありました。
──間がこだわったポイントだったんですね。
くるま:元々それぞれのシーンを交差させない想定でワンカットで撮っていたので、事故のシーンまではキューが出せない。何分何秒後に車が揺れて照明が消えるというのが決まっている状態で、そこにぴったり合わせて終わらせないといけないんですよ。そのタイミングと間の取り方の兼ね合いがすごく難しかったですね。

即興性を受け入れながら演出を組み立てる
──森川さんは完成した作品をご覧になって、観客として印象に残ったシーンはありましたか?
森川:全貌を知らなかったので「こんな風に仕上がったんだ」という驚きがあったんですが 、特に印象的だったのはオダギリジョーさんのシーンですね。私たちの撮影の前にオダギリさんは撮影を終えていて、撮影前から「オダギリさんがすごかった!」という話は方々から聞いていて。その前のめりの勢いが画面にしっかり出ていて、さすがだなと思いました。
くるま:オダギリさんは本当に言うこと聞かなくて(笑)。撮影中も大暴れでしたね。
森川:さすがですね。そんな生き方をしたいです。

──アドリブへの対応も監督として求められたと思いますが。
くるま:そうですね。色々とアドリブをしていただいたので、こちらも普通にやるのもあれだしと思って、途中からカンペを出すようにしたんです。結局本番で使っているのは、オダギリさんがアドリブでボケたことに対して、俺がもう一重ねのボケを書いて言ってもらっているんです。「挟みましょう」ってオダギリさんが言い出したから、「俺が社長だったら挟みますよ。」って書いて。
森川:そのくだりありましたね!
くるま:よく見るとオダギリさんもそのカンペを見てちょっと笑っちゃってるんですけど、追い詰められておかしくなっているようにも見えるからいいなと思ってそのまま使いました。
森川:そんな裏話があったんですね。
漫才がベースにある映画をつくりたい
──今後のくるまさんの監督としての制作活動について教えてください。
くるま:今まで芸人として漫才を作ってきたので、その要素を活かした作品を作りたいですね。“映像コント”ではなく、漫才がベースにある会話を意識した映画というものを作れたらいいなと。去年初めて北野武さんの作品を見たんですが、漫才の人が作っている映画だという感覚があって、それが面白かった。まだ始めたばかりで全体像も見えていないんですけど、プロットの状態から稽古して作っていく、即興的な演出を入れていくというのが自分の色にもなるんじゃないかなと。今までの映画にないものがつくれたらいいなという気持ちですね。

──森川さんは、次にくるまさんの作品に出演するとしたら、どんな作品に出たいですか?
森川:恋愛ものが気になりますね。この間の単独ライブのコインランドリーのネタがすごく好きで。くるまさんって恋愛トークも結構好きじゃないですか。いわゆるまっすぐな恋愛ものじゃなくて、世の中の人からしたら「そうだよね、普通の恋愛ってそんなもんだよね」って共感できるような、これまでにないひねくれた恋愛ものが作れそうな気がするんですよ。それに出てみたいですね。
くるま:その時はお願いします!


他豪華出演キャストからもコメントが到着
劇場公開に寄せて、出演キャストとプロデューサーからコメントが到着した。
プロデューサー 雨無麻友子
たわいない会話の中に、見栄や焦り、人間の滑稽さがふと滲み出る。
そんな人間たちを単純に両断するのではなく、観客自身がその可笑しさや危うさを考えていく映画になっています。
漫才師であるくるま監督は、非常に強い言語感覚を持ち、“間”を自ら体現しながら設計していく演出をしていました。観客との空気の読み合いを熟知しているからこそ、“笑い”から逆算して緊張を生み出せる。その感覚が、『BREAK SHOT』では独特のスリルと映画的なリズムへと変換されています。
ドライブインシアターでの映画体験をきっかけに、この仕事に就いた私にとって、くるまの映画を世に送り出せることを、とても特別なご縁に感じております。
ぜひ劇場で見届けていただけたら嬉しいです。
児玉智洋(主演)
こんにちは。主演の児玉智洋です。
今回、くるまの初監督作品に出れてもう本当に嬉しいです。くるまがメガホンを取りました。メガホンを取りそうだなと思ってはいましたが、本当に取りました。くるまといるとワクワクします。尊敬してます。もう止まらないです。凄いたくさん映画を撮って欲しいです。僕も負けじと頑張らなくっちゃ!
オダギリジョー
令和ロマンが2年連続で『M-1』を獲り、まさに期待を背負う中で、大きく歯車が狂う。
こんなにエポックメイキングな出来事があるだろうか?
それほど時代に愛され、もてあそばれる男がいるだろうか…?
漫才を突き詰めた男が短編映画に挑戦するなら、その瞬間に立ち会いたいのはこちらの方だ。
大きな期待と共に現場に向かうと、そこには、くるまと車しかなかった。
高良健吾
令和ロマンの髙比良くるまさんから短編映画のオファー……M-1でも令和ロマンを応援していましたし、ご褒美かなと思いました。
イン前に森川葵さんとの本読みがあったのですが、その日のことは緊張してあまり覚えていません。それだけくるまさんの目を意識して緊張していたのだと思います。
本番の日はいい緊張感の中、楽しんでやれました。
くるまさんは間の事を細かく演出されていたので、芸人さんの間の集中力には学ぶ事だらけでした。
くるまさんのモノづくりに少しでも触れる事ができたのは貴重な体験ですし、しかも、監督と俳優として関われた事は自慢です。ずっと嬉しい時間でした。
前田旺志郎
映画の中ではYouTubeの動画を撮っている4人を、普段の4人の関係性や会話、キャラクターなどを踏まえてくるまさん、共演者で話し合いながら作って行きました。
くるまさんの言語化能力は凄まじく、3人とも僕らが目指すYouTuberの姿をすぐに思い浮かべる事が出来たと思います。出演シーン以外の4人のシーンも演ってみたかったなと思うくらい楽しい撮影でした。
高橋侃
レン役を演じました高橋侃です。
ドライブレコーダーが記録していたブラックコメディ。
緻密な会話劇。
撮影スタジオに入った時の高揚が今でも忘れられません。
くるま監督の世界の中で役として生きれた事とても幸せに思いました。
是非、劇場で車内で起きたリアルを覗き見してくだい。お楽しみに。
遠藤雄斗
お笑いが大好きな自分にとっては改めて夢のような仕事でした。
実際に会うくるまさんはテレビや漫才をしている時の姿とまるっきり一緒で。僕がテレビの中に入ったのか、くるまさんがテレビから出てきたのか、途中からわからなくなってきて困惑しました。今やお笑いだけにとどまらないくるま監督の新たなる航海の乗組員になれたこと誇りに思います!これからも一ファンとして、今後の作品もめっちゃ楽しみにしております!
Interview&Text by Tomoko Asai
Photo by Ryoma Kawakami
Edit by Qetic(Ken Mochizuki)
INFORMATION

短編映画『BREAK SHOT』
2026年7月31日(金) より、渋谷シネクイントほか順次公開
出演:児玉智洋、高良健吾、森川葵、前田旺志郎、高橋侃、遠藤雄斗、くるま、松井ケムリ、浅野千鶴、楠田悠人、神保悟志、オダギリジョー
監督・脚本:くるま(令和ロマン)
<劇場上映スケジュール>
東京 渋谷シネクイント 7月31日(金)〜(2週間予定)
東京 アップリンク吉祥寺 8月14日(金)〜
名古屋 シネマスコーレ 8月15日(土)〜(2週間予定)
京都 アップリンク京都 8月14日(金)〜
大阪 第七藝術劇場 8月15日(土)〜
※上映時間は各劇場の公式HPにて順次掲載。
<劇場イベント>
◼︎7/31(金) 渋谷シネクイント 劇場公開記念スペシャルトークイベント
登壇者:くるま監督、オダギリジョー、高良健吾、神保悟志
チケット販売:7月24日(金)18時よりシネクイントHPにて販売※劇場窓口での販売はございません
販売リンクはこちら
※料金:2500円均一料金(招待券・割引等一切不可)
以下、販売情報は後日発表。
◼︎8/7(金)渋谷シネクイント トークイベント付き上映
登壇者:高橋侃、遠藤雄斗、カンタ(水溜りボンド)、プロデューサー雨無麻友子
※チケット販売等については別途ご案内
※料金:2500円均一料金(招待券・割引等一切不可)
◼︎8/15(土)アップリンク京都 トークイベント付き上映
登壇者:くるま監督、プロデューサー雨無麻友子
◼︎8/15(土)大阪・第七藝術劇場 トークイベント付き上映
登壇者:くるま監督、プロデューサー雨無麻友子
◼︎8/16(日)名古屋・シネマスコーレ トークイベント付き上映
登壇者:くるま監督、プロデューサー雨無麻友子
◼︎8/22(土)アップリンク吉祥寺 トークイベント付き上映
登壇者:児玉智洋、楠田悠人、浅野千鶴
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