令和のいま、正真正銘の「ガレージバンド」が誕生するとは、誰が思っただろうーーアイルランド・ウィックロウ出身、高校で出会った4人組で結成されたバンド・Florence Roadは、自宅のガレージで演奏する姿を収めた動画がバズり、高校を卒業後瞬く間に世界へと羽ばたいた。
高校を卒業したばかりの彼女たちが、なぜここまで世界中の人々の心を惹きつけるのだろう? 初来日を果たした彼女たちに話を聞くと、シンデレラストーリーをも蹴散らす、彼女たちの才能と音楽への情熱が見えてきた。
INTERVIEW
Florence Road

──みなさんは高校時代にカバー曲をガレージで演奏していて、その様子をTikTokに投稿したことがいまの活動につながっているんですよね?
Hannah Kelly(以下、Hannah) そうです。初めは純粋に楽しむためにTikTokを撮ったり、自分たちが好きな曲を演奏したりしていました。
Lily Aron(以下、Liky) 私の家の裏庭にあるガレージで演奏していたんだよね(笑)。
Hannah そうそう(笑)。そうしたら1、2本の動画が一気に広がっていって……。
──高校卒業後すぐに世界を駆け回るミュージシャンになるなんて、まるで映画みたいですね。何気なく撮り始めた動画がいまの活動に通じると、当時想像していましたか?
Hannah いえ、本当に予想外でした。そんなことになるなんて、思いもしませんでした。でも、すごくうれしいサプライズだったよね。
Lily そうだね。その動画が、たくさんの人たちを私たちの元に連れてきてくれたことは、すごくすばらしいことだと思う。私たちがついに自分達の楽曲をリリースし始めたときには、すでにたくさんの人たちが聴く準備をして待っていてくれて。そんなふうに私たちの周りでコミュニティができていくのを見るのは、本当にすばらしい体験でした。

──いまは世界中を飛び回る生活を送っていると思いますが、この生活には慣れましたか?
Emma Brandon(以下、Emma) はい、だいぶこの生活のリズムに慣れてきました。
Lily いまでは空港でもすっかり顔馴染みになったよね(笑)。行きつけの場所もあるし、だんだんルーティーンもできてきたよね。
──ツアー中には、みんなで『マリオカート』をするのがルーティーンになっていたそうですね。
Ailbhe Barry(以下、Ailbhe) そう、あれは健全な競争っていうか(笑)。
Lily 『マリオカート』ってすごくエネルギッシュなのに、なぜかリラックスできるんだよね(笑)。ライブのあとにみんなでやると落ち着けるから、すごく役に立ってるよ。そしていま実際に日本にいるなんて、信じられない!

──日本でのライブは初めてですよね。「SUMMER SONIC」への出演とワンマンライブのための来日ですが、これまで日本に来たことはあリますか?
一同 初めてです。
Lily みんなすごく親切で、すてきで。とても親切で他人を温かく受け入れてくれるところが、アイルランドと似ている気がするな。
──では、日本で楽しみにしていることは何かありますか?
Lily 私は日本のファンのみなさんに会えるのがとても楽しみです。今回の来日では色んな場所でライブできるから、最高だと思う。
Ailbhe ちょっと不真面目な回答かもしれないけど、私は新幹線に乗って大阪に行くのが楽しみ(笑)。
Emma 私はすごく食いしん坊だから、日本の食べ物が楽しみだな。ずっと日本食を調べまくってる(笑)。
Lily そうそう、Emmaがリサーチした日本食の情報を送ってくれるんだよね(笑)。どれもおいしそうだから、私もすごく楽しみ。

──もう何か日本食は食べましたか?
Emma ラーメンを食べたよ。めちゃくちゃおいしかった。
Lily うん。おいしすぎて、「もう、これ全部ちょうだい!」って感じだった(笑)。あと、私は甘いものが大好きだから、日本のお菓子にハマっちゃって。もうずっと試してる。
Emma チョコでコーティングされたパイナップルグミが最高だったよね。あれが私のお気に入りかな。
Lily あと、昨日は箸づくり体験もしたの。自分の名前を箸に入れたんだ。
Emma かなり“観光客”って感じで楽しんでるよね(笑)。
一同 そうだね(笑)。
「音楽自身に耳を澄ませる」。 ジャンルレスな音楽性

──Florence Roadの魅力は、グランジや90年代オルタナティヴ・ロックを思わせるギターサウンドと、ありのままをさらけ出す等身大の歌詞だと思います。歌詞は自身の経験を基に書いているのでしょうか?
Lily はい、自分の経験を基にした歌詞が多いです。基本的には、自分自身の内面にあるものについて書いています。でも、友達や家族が経験したことを基に書いた歌詞もあります。あと、街を歩いているときに誰かが通り過ぎて、そのときに彼らが話していたことがインスピレーションになることもありますね。私はすごく好奇心が強いので、他の人たちの人生にも興味があるんです。
──Lilyは学生の頃から好奇心旺盛なタイプでした?
Lily そうですね。他のメンバーもみんな好奇心が強いタイプだと思う。
一同 そうだね。

──では、歌詞を書くときはどのように書いていますか? 自分の部屋で一人で書くのか、それともみんなが集まる場所で?
Lily 両方です。私の部屋から生まれたものもあるし、4人で部屋に集まってジャムセッションを始めて、そこから歌い始めたり、誰かが何かを弾き始めたりして、それが形になっていくこともあります。EmmaやHannahが書いたリフから歌詞が生まれることもある。だから、曲づくりには決まった方法があるわけじゃなくて、そこが楽しいところだと思います。いつ曲が生まれるのか、私たち自身にも分からないんです。
──だからFlorence Roadの楽曲にはロックからバラードまで、さまざまなテイストの曲があるんですね。
Lily そうですね。そのときのムードが楽曲に影響を与えているんだと思います。例えば、私たちがみんなでガレージに集まるときは、アンプの音量を目一杯上げるようにしているんです。あと、実はそのガレージはちょっと汚れていて(笑)。そういう環境だと『Figure It Out』みたいな、ロックな曲が生まれるんです。やさしい曲たちは、もっと落ち着いた環境から生まれるかな。
──これまで「自分たちがどんな音楽をつくりたいか」について、みんなで話し合ったことはありますか?
Lily 改めて話合ったことは一度もないと思う。いつもそのときにしっくりくるものを作っています。いつも“音楽自身が語ること”に耳を澄ませていて、例えばその曲が「この曲はピアノで柔らかくて落ち着いた感じがいい」と言ってくるなら、自然とそういう曲になっていく。そうやって、自分たちを一つのジャンルやタイプに限定していないのは、すごく良いことだと思います。
Emma みんなで部屋に集まっていると、自然と音楽が生まれるんだよね。何が生まれるか、そのときまで誰にも分からない。

Lily そう。だから、今後もしかしたら、めちゃくめちゃな方向にいっちゃうかもしれない。例えば、「次の曲、私ラップするから!」とか(笑)。
一同 (笑)。
──初来日を記念して8月5日にリリースされた日本限定企画盤『Between Seasons』は、まさにFlorence Roadのさまざまな側面を楽しめる1枚だと思います。リリースの経緯を教えていただけますか?
Lily このアルバムは、2つの別々のEP『Fall Back』と『Spring Forward』をひとつにまとめて、ライブ音源3曲を追加収録したものです。まるで冬から春へと季節が移り変わっていくような作品になったので、「Between Seasons」という名前をつけました。日本のみなさんに、私たちの2年間の物語を伝えられる作品になっていたらいいなと思います。
一同 そうだね。
空気も感覚も、匂いも違う。アイルランド出身ということ
──Florence Roadというバンド名は、みなさんのアイルランドの地元に実在する通りの名前から付けられたそうですね。世界中で演奏するなかで、アイルランド人としてのアイデンティティについて考えることはありますか?
Lily もちろんです。ずっとアイルランドに住んでいて、学校に通っていたときは「私たちアイルランド人だよね〜」くらいに思っていたんです。でも、アイルランドを離れてみると、こんなに自分たちがアイルランド人であることを誇りに思ったことはないと感じるようになりました。「あぁ、私の国、私の小さな島……」っていう気持ちになります(笑)。

Ailbhe 空気さえも違うし、感覚も違うし、匂いも違う。いつもアイルランドに到着した瞬間に「あぁ(これこれ)」ってなるよね。
Emma それに海外にいると、アイルランド語を話すことが増えるんです。それをすると、安心するからなのかな。
Lily そうだね。アイルランド語は、遠く離れた場所にいても、私たちと故郷をつないでくれる、私たちだけの特別な言葉なんです。
──他に、離れた場所にいても大事にしていることや、常に心に留めていることはありますか?
一同 家族かな。
Emma 家に帰る時間があれば、家族や友達と過ごすことを最優先にしています。そうすることで、地に足をつけていられるんですよね。そうして、ただの「娘」や「姉妹」に戻って少しだけこの世界から離れることが、自分たちらしさを保つことにつながっていると思います。すごく大切なことだと思う。
Hannah そうだね。スタジアムで演奏して家に帰ったら、普通に買い物に行かなきゃいけない。そういうギャップも面白いよね(笑)。

──みなさんはFlorence Roadとしての旅を始めてまだ約2年ですね。ここまであっという間だったかもしれませんが、最後にこの先のビジョンを教えていただけますか?
Lily 他の人たちのために何か良いことができるようになれたらいいなと思っています。例えば、私たちがこれまで世界中のファンの方々から受け取ったやさしさを、他の人々に返せるようなところまで辿り着けたら、それは本当にすばらしいことだと思います。だって、こういう立場にいるのに、それを返さないのは自分勝手だと思うから。
一同 うん、全く同じです。
Lily そして、これを読んでくれているみなさんに「Hello!」って言いたいな。みなさんに会えて本当にうれしいし、私たちの音楽を聴いてくれているなら、本当にありがとうと伝えたい。あと、この子(Qetic公式キャラクター:あいつ)が大好き(笑)。
Emma うん、なんかこの子、親指みたい(笑)。みんなに次のライブで会えたらいいな。そのときは、踊れる靴を履いてきてね!

Hannah 私たちを日本に呼んでくれて、本当にありがとう。Emmaが言ったように、踊れる準備をしておいてね! ロックンロールは永遠に。
Ailbhe 本当にありがとう。できるだけ早く、また日本に戻ってこられたらいいな!
一同 またすぐに会いましょう!

Interview&Text&Translation by Nagisa Nasu
Photo by Koichiro Funatsu
Edit by Sanae Akechi
PROFILE
アーティスト名
Florence Road
現代インディー・ロック・シーンの中で急速に存在感を高めている、アイルランドのウィックロー出身の4人組ガールズ・バンド、Florence Road(フローレンス・ロード)。幼なじみである Lily Aron(リリー・アロン/Vo)、Emma Brandon(エマ・ブランドン/Gt)、Ailbhe Barry(アルヴァ・バリー/Ba)、
Hannah Kelly(ハンナ・ケリー/Dr)によって結成され、10 代の頃はリリーの自宅の庭にある物置小
屋で演奏を重ねながら音楽性を磨いてきた。幼なじみでもあるメンバーによる強固なバンド・ケミストリーと、DIY 精神を感じさせるソングライティングは、Z 世代のクランベリーズとも称され、グランジや 90 年代オルタナティヴ・ロックの影響を感じさせるギター・サウンドと、等身大の感情を映し出すソングライティング、エモーショナルなメロディと現代的なポップ・センスを融合させたサウンドで急速に支持を拡大。SNS でのライブ動画やカバー投稿をきっかけに支持を広げ、2025 年以降はオリジナル楽曲で本格的にブレイク。オリヴィア・ロドリゴ本人の目に留まりツアーのオープニング・アクトに抜擢されたことでも一気に注目度を高め、BBC「Sound of 2026」、Amazon Music「2026 Artists to Watch」、Pandora「Artist to Watch2026」への選出に加え、Hot Press、DORK といった海外主要メディアの表紙も飾るなど、“次世代ブレイク候補”として大きな注目を集めている。ライブ・アクトとしての評価も高く、この夏は AddisonRae、Kings of Leon、Two Door Cinema Club らのオープニング・アクトを務める大型公演が続々と、そして、SUMMER SONIC 2026 へも出演。アイルランドから世界へ羽ばたくニューカマー最重要株として大きな期待が寄せられている。
RELEASE INFORMATION
日本企画盤「Between Seasons」
| 日時 | 2026.08.05 Release |
|---|---|
| 品番 | WPCR-18850 |
| 価格 | ¥3,410(税込) |
| トラックリスト |
01. Hanging Out To Dry / ハンギング・アウト・トゥ・ドライ 02. Miss / ミス 03. Rabbits Can Swim / ラビッツ・キャン・スウィム 04. Storm Warnings / ストーム・ウォーニングス 05. Break The Girl / ブレイク・ザ・ガール 06. Hand Me Downs / ハンド・ミー・ダウンズ 07. Goodnight / グッドナイト 08. Caterpillar / キャタピラー 09. Figure It Out / フィギュア・イット・アウト 10. Heavy / ヘヴィ 11. Hanging Out To Dry (Dublin Version) / ハンギング・アウト・トゥ・ドライ(ダブリン・ヴァージョン) 12. Miss (Live from the Bus) / ミス(ライヴ・フロム・ザ・バス) 13. Storm Warnings (Dublin Version) / ストーム・ウォーニングス(ダブリン・ヴァージョン) |
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