今年5周年を迎える福島最大級の音楽フェス、<LIVE AZUMA>が今年も10月17日(土)・18日(日)の2日間にわたり開催される。本記事では、そんな<LIVE AZUMA>をステージの一つであるPARK STAGEの過去の出演アーティスト、および今年出演を予定しているアーティストのラインナップから紐解いていく。
PARK STAGEには、どんな音楽が集まってきたのか

まず、PARK STAGEは、規模だけを見れば、あづま球場内のAZUMA STAGEに対する「セカンドステージ」である。だが、過去4年間のラインナップを辿っていくと、それだけでは捉えきれない独自の音楽的な流れがPARK STAGEには育まれてきたことがわかる。手始めに初年度となる2022年のラインナップを見てみよう。とりわけ田我流、OMSB、JUBEE、VaVa、(sic)boyといったヒップホップ勢の存在感は濃い。だが、そこだけを切り取るとPARK STAGEの面白さを見誤る。DYGL、Homecomings、No Busesといったロックバンド勢に、TOKYO No.1 SOUL SETやyonawoといったソウルやファンク、ジャズなどのブラックミュージックを独自の解釈で昇華するバンドなどが並ぶ。わかりやすく言うなら、PARK STAGEは初めから、ヒップホップを一つの背骨に、ロックやソウル、ジャズなど、異なる音楽文化が混在するステージだったのだ。PARK STAGEのJUBEEがAZUMA STAGEのDragon Ashへ飛び入りした出来事も、二つのステージ、そしてヒップホップとロックが決して切り離されていなかったことを象徴していた。


翌2023年も、C.O.S.A.、Daichi Yamamoto、GAGLE、Skaaiといったヒップホップアクトに、思い出野郎AチームやYOUR SONG IS GOODといったファンキーかつダンサブルなバンド勢、ジャズをベースに、R&B、ネオソウルなどを自在に融合させた台湾の9m88や、ゴスペルをルーツに持つFurui RihoといったシンガーソングライターなどがPARK STAGEに出演。JUBEEとAge Factoryによるロックとラップのミクスチャーサウンドを特徴としたAFJBの出演も象徴しているように、簡単に言えば、PARK STAGEの出演者を、一つのジャンルで括ることは難しい。むしろ、ヒップホップ、ロック、ソウル、ファンク、ジャズといった音楽を、それぞれ分けることなく聴いてきたリスナーの感覚に近いのではないだろうか? そして、開催を重ねるにつれて、そのジャンルごとの距離はさらに縮まっていく。



過去のラインナップから見えてくる、PARK STAGEらしさ

2024年以降、ラップとバンドが同じステージに立つだけでなく、その境界自体を行き来するアーティストが増えていく。PARK STAGEの一つの背骨と呼べるヒップホップアクトはCampanella、MFS、VaVa(初年度も出演)と充実しつつ、U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESSというタブラという生楽器とラップが絡み合うアクトに加え、ラッパーのRyohuもBand Setで出演。鈴木真海子、Kan Sano(Band Set)、WONK、TENDREといったヒップホップ、R&B、ソウル、ジャズといったジャンルの壁を融解させるアクトも幅広くラインナップされている。きわめつけはトリとしてDJで出演したテクノの巨人、石野卓球だろう。PARK STAGEでは、ラッパー、シンガー、バンド、DJが自然に混在していく。




2025年になると、そうした傾向はさらに鮮明になる。1日目は、柴田聡子(Band Set)、田我流(Band Set)、ceroが並び、「何のジャンルのサウンドか」以上に、「それをステージ上でどう鳴らすか」がPARK STAGEの一つの面白さとして確立された。一方で2日目はin-d、Kohjiyaといったヒップホップアクトにヒップホップ的な感覚も持つ礼賛やクラブ・ミュージック的なサウンドを生演奏へと落とし込むD.A.N.、R&Bやソウル的感性を爆発させるSIRUPなど、スムースな流れがラインナップから描かれていた。
こうした歴史を振り返ると、PARK STAGEが繰り返してきたのは、ただ多くのジャンルを集めることではないことが浮かび上がってくるだろう。PARK STAGEが面白いのは、ラップ、DJ、電子音、ギター、管楽器、生ドラムなど、それぞれ異なる方法で鳴らされる音楽のあいだに、グルーヴやルーツ、カルチャーといった接点を見つけられるようなラインナップが組まれてきたことなのである。
その流れは、2026年にどうつながったのか


では、本題へと移ろう。2026年のPARK STAGEは一体どのような物語を描いているのだろうか。ざっとラインナップを見れば、VaVaやJUBEE、思い出野郎Aチームといった<LIVE AZUMA>カムバック勢に加えて、TOMMY GUERRERO、Tribe Sampler Collective、tofubeats、ISSUGI、SPARTA、SPECIAL OTHERS、OKAMOTO’S、さらさ、CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN、WHITE ASHといった<LIVE AZUMA>の新顔たちが並ぶ。そこから浮かび上がるのは、これまでPARK STAGEが育ててきたヒップホップ、クラブミュージック、生演奏という複数の線だ。加えて2026年は、その一部を支えてきたスケートボードをはじめとするストリートカルチャーとの結びつきも、これまで以上にはっきりと見えてくる。
ストリート、ヒップホップ、クラブ――境界を越えていく音楽
はじめに注目したいのは、サンフランシスコ生まれのトミー・ゲレロ(TOMMY GUERRERO)だ。スケーターで、幼少期に70年代のロックやソウル、ファンクを聴き、パンクと出会ってバンドを始めたと言う彼の音楽には、ヒップホップ、ソウル、ファンク、ジャズ、ラテン、ブルースなどが入り混じっている。スケートボードと音楽を別々のカルチャーとして生きてきたのではなく、街で出会ったさまざまな音を自らのグルーヴにしてきた人なのだ。多様な人々が行き交う公園を舞台としたPARK STAGEと相性がいいのは間違いないだろう。
その感覚は、PARK STAGEの一つの背骨である日本のヒップホップへもつながっていく。ISSUGIがヒップホップへ入り込むきっかけとなったのは、中学生の頃に始めたスケートボードだった。スケートビデオからさまざまな音楽を同時に浴びたという彼の原体験は、まさにジャンルより先にカルチャーがあったことを物語っている。さらに音楽のキャリアを始める以前、スポンサーも付くほど本格的にスケートボードへ打ち込んでいたSPARTAが並ぶことで、2026年のPARK STAGEでは、ヒップホップとスケートカルチャーの近さも自然と見えてくる。
TOMMY GUERREROからもう一つ辿れる線が、ヒップホップのビートと生楽器のあいだにある。ジャズやソウルの響きをサンプリングという手法を通してヒップホップへと結びつけ、ときにローファイヒップホップの先駆け的存在として今なお世界中で聴き継がれるNujabes。その音楽を現在のステージへと蘇らせるTribe Sampler Collective – Nujabes Tribute Set –も、今年のPARK STAGEを象徴する存在だ。彼らは、Nujabesが遺したサンプルソースや愛した楽曲を、ジャズを軸とした生演奏で再構築するプロジェクトであり、実際にサックス、トランペット、鍵盤、ギター、ベース、ドラムなどの生楽器に加え、DJまで擁する。ここまでPARK STAGEで何度も交差してきた「ビート」と「生演奏」という二本の線が、彼らのステージでは文字通り一つになる。
一方で、ヒップホップからクラブ・ミュージックへと伸びる線もある。DJ/プロデューサーとしてクラブに立ちながら、自ら歌い、ラップもするtofubeats。ビートメイカーとしてキャリアを始め、現在はラッパーとしても活動するVaVa。そして、初年度からPARK STAGEに出演してきたJUBEEは、ヒップホップを軸にレイヴやロックへと活動領域を広げてきた。しかも今年はJUBEE & DA RAP ROCKERSというフルバンド形態で出演する。PARK STAGEでこれまでも実践されてきたジャンルに縛られない音楽の在り方の一つの象徴としても、ライブを届けてくれるはずだ。
バンド/生演奏から見える、もう一つの広がり

では、これまでもPARK STAGEの一つの見所だったバンド/生演奏の面から今年のラインナップを見たらどうだろう。
もっともわかりやすいのが、インストゥルメンタルバンドであるSPECIAL OTHERSだろう。歌やラップではなく、即興性を伴ったアンサンブルとグルーヴそのもので観客を巻き込んでいく彼らは、「何を鳴らすか」だけではなく「どう鳴らすか」を重ねてきたPARK STAGEの流れにも自然と重なる。かつてフェスを「大規模なストリートライブ」のように捉えていたという彼らの感覚も、開かれた公園を舞台とするPARK STAGEとどこかで響き合っているだろう。SPECIAL OTHERSと、電子音楽と生音をミックスさせるCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUINが同じPARK STAGEに並ぶのも、面白い対比になりそうだ。
さらにファンクやソウルの要素を持ったOKAMOTO’Sと思い出野郎Aチームが隣り合う存在としてラインナップされていることはもちろん、今回はR&Bやソウルを軸にしながら、最新作では自身の掲げる“Live Bluesy”という感覚をさらに押し広げたさらさがBand Setで出演。Kan SanoやWONK、TENDRE、SIRUPらがこれまで示してきた、R&Bやソウル、ジャズとポップ・ミュージックの境界を軽やかに行き来する流れもしっかりと受け継がれている。
とはいえ、PARK STAGEをソウルやヒップホップを中心としたステージと定義してしまうのも違う。レトロリロンのポップネスやWHITE ASHの鋭いギター・ロックまでが同じ場所で鳴るからこそ、その輪郭は簡単には固定されない。過去にもAFJBやSATOH、D.A.N.、礼賛など、異なる角度からロックや電子音楽の感覚を持ち込むアクトが出演してきた。その振れ幅もまた、PARK STAGEらしさの一つなのだ。
すなわち、PARK STAGEにおいて、生演奏は特定のジャンルを意味しない。ジャムの即興的なグルーヴ、電子音との融合、ソウルフルな歌、ロックの衝動まで、その“鳴らし方”自体に深さと幅がある。
PARK STAGEで、“予定していなかった音楽”に出会う

フェスへ行く前には、タイムテーブルを眺めながら「このアーティストだけは観たい」と予定を立てる。もちろん、それもフェスの楽しみ方の一つだ。だが実際に会場を歩いていると、そんな予定にはなかった音に足を止める瞬間がある。名前さえ知らなかったアーティストを最後まで観てしまったり、その日の帰り道に楽曲を検索したり。そうした偶然もまた、複数の音楽が同じ場所で鳴るフェスだからこそ生まれる体験だろう。
これまでのPARK STAGEのラインナップを振り返って面白いのは、そうした偶然への入り口が、いくつも用意されてきたことだ。ヒップホップが好きなら、そのビートの先にジャズやソウルがある。クラブ・ミュージックが好きなら、生楽器で近しいグルーヴを生み出すバンドがいる。ロックを目当てにしていても、ファンクやR&B、ラップへとつながっていく。まったく別の音楽へ飛び移るというより、自分の好きな音楽から「半歩だけ外側」へと進んでみる。その先に、まだ知らなかった音楽が置かれている。
2026年も同じだ。Nujabesの音楽に惹かれてTribe Sampler Collectiveを観た人が、そのままISSUGIやSPARTAのラップに耳を向けるかもしれない。あるいはJUBEE & DA RAP ROCKERSを経由してバンドサウンドの面白さに気づくこともあるだろう。さらさの歌を目当てにしていたら、いつの間にか思い出野郎Aチームのファンキーな音に魅了されている、なんてこともあるかもしれない。
2022年からPARK STAGEに並んできた名前を辿ってみると、そこにあるのは単なるジャンルの幅広さではない。一つの音楽を入り口に、その隣にある別の音楽へと進んでいけるような連なりだ。目当てのアーティストを観るだけでは終わらず、タイムテーブルに丸をつけていなかった誰かが、帰る頃には新しいお気に入りになっている。今年も帰る頃には、タイムテーブルを開いた時にはまだ知らなかった名前が、一つくらい増えているかもしれない。それこそがPARK STAGEの魅力であり、ひいては<LIVE AZUMA>というフェスが提示してきた、音楽との出会い方なのだろう。
Text by 高久大輝
Edit by Yu Oda