みなさんは「浅井健一のソロ作品」と聞き、どのようなイメージを抱かれるだろうか? 「スリリングでとんがったかっこいい音楽?」「シンプルでイカすロックンロール?」「永遠の少年性を帯た歌?」。中には「恐い」「激しい」「とっつきにくい」なんて負のイメージを持って敬遠してきた方もおられるかもしれない。しかし、そんなこれまで聴かず/聴けずにいた方にこそ、彼のこの最新ソロアルバム『PIL』を聴いてもらいたい。今作には、カッコ良くて、スリリングで、美しくて、それでいてナイーブな浅井健一ワールドはそのままに、良い意味での聴き易さと間口の広さ、数々の興味深いフックが内包されている。言い換えると今作は、彼の世界観や佇まいはそのままに、これまで以上に触れ易く、入り易く、且つハマり易い作品になっているのだ。
これまでで最も制作期間が長かったという今作は、制作メゾッドの更なる広がりや期間を経たことでの楽曲の珠玉性等、これまでの彼のファンはもとより、これまで聴かず嫌いだった方まで、幅広い人を魅了する作品となっている。
そんな彼に今作について色々と話を聞いてみた。
Interview : 浅井健一
製作期間が長かったぶん、自分のその時々のやりたかった思いが
色々と詰め込めたとは思ってる
――今回のアルバムタイトルは、『PIL』ですが、これは、「ピル」? それとも「ピーアイエル」? のどちらでお読みすれば…?
正式には、「Pocky In Leatherboots」。「レザーブーツの中のポッキー」です。
――ポッキーって、あのお菓子のポッキーですか?
そう。
――その辺りはなんか感触的な感じがしますが、実際はどういった意味が?
ブーツの中にポッキーがいるっていう意味。
――なるほど。
それでいいんじゃん。その方が楽しいと思うよ、逆に(笑)。人が考えたテーマより。
――今回、ソロアルバムとしては久しぶりですが、まずは僕の今作を聴いた感想から。いい意味で凄く丁寧に作られてる印象を持ちました。
SHERBETSやPONTIACSも入れるとかなりハイペースでの制作イメージがあるだろうけど、実は今回の作品って、2年前から制作に入ってたんだわ。今まで自分の作ってきたアルバムの中では、最も制作期間が長い。なのでその分、綿密に作られている。あと今回は、自宅でレコーディングした部分も多かったし。それもあって自分の気持ちが細部まで今まで以上に行き届いた作品になっていて。その分、みんなの心にも浸透すると思ってます。
――どれもライヴ感のある曲ばかりだったので、自宅録音の曲があったとは驚きました。でも、確かに幾つかの曲は、宅録ならではのデリケートさがありますもんね。いわゆる空気感や奥行きを大事にしているというか。
今回は5曲(“MORRIS SACRAMERNT”“青いチョコ”“Mona Lisa”“CRAZY PEGASUS”“エーデルワイス”)が俺のスタジオ『スタジオスー』って所で録音しました。自宅のコンピュータを使って。あとの7曲は都内のスタジオでレコーディングした。その2つがミックスされた作品。スーのやつは楽器は全て自分が弾いてます。
――自宅って…。失礼ですけど、もしや浅井さんがコンピュータも?
そう、自分で。前回のソロアルバムの時に、深沼君(深沼元昭=PLAGUES、Gheeeのボーカル&ギター、作詞作曲プロデュース業も並行して行なっている)と一緒に作って、彼の家でコンピューターを使って音楽を作ることをやってみたんだわ。それで、「こうやってコンピュータを利用すればいいんだ」ってところを学んで。それがきっかけで、今回なるべく一人でやってみようかなって。
――マニュピレーターさんと一緒ではなく、お一人だけで?
そうなんだわ。もちろん最終的には、深沼君にエンジニアとして細かい部分も含め、仕上げてもらうんだけど、そこまでは全部一人でやったよ。
――いわゆる打ち込みのソフト等を使ってですよね。
プロトゥールスというレコーディングソフトっていうのかな? それを使いました。
――正直イメージにはなかったので意外でした。
もちろんバンドみたいに、みんなが集まってバーンとやるのにかなわないところもあるよ、コンピュータは。だけど、コンピュータでしか出来ない世界もあることも知ってたし、今回、自分でも扱えるようになったんで、やってみた。それによって音楽の作り方も変わったし、広がったところもあるよ。
――浅井さんのパソコンに向かってる姿、見たかったなぁ(笑)。
見なくていいよ(笑)。必死こいてやってただけだよ。
――今回は特に作品性や構築感がかなりあったので、これで納得いきました。
作り方が違うから、これまでとはまた違ったものになったとは自分でも思ってるよ。
★インタビューまだまだ続く!
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