2000年代はじめのアニマル・コレクティヴ、MGMT、ダーティー・プロジェクターズを筆頭とするUSインディ・バンド・ムーヴメントの中で、特に活気づいていたNYブルックリン・シーン。中でも不定形集団イェーセイヤーは、そのエキセントリックなポップサウンドで独特の個性を放ってきた。
初来日した<FUJI ROCK FESTIVAL’10>ではその独創的な中毒サウンドでレッドマーキーを大きく沸かせた彼らが最新作『Fragrant World』のリリースに伴って初となる単独来日公演を先日2月12日(火)代官山UNITにて行い、大盛況のうちに幕を閉じた。ここで彼らの魅力が凝縮されたライヴのショート・レポートをお届けしたい。
Report:Yeasayer
2013.02.12(TUE)@代官山UNIT
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オープニングアクトを務めた80 KIDZが会場を熱く盛り上げてから30分、期待感と独特の緊張感が入り混じった会場が静かに暗転すると、プログラムされたアナウンスが淡々と流れ、不穏な照明と共にアナウンスが乱れはじめ、照明が激しく明滅する。最新作『Fragrant World』の世界観が現出する一夜を予見させるには十分にクールな登場だ。
幕開けの一曲目は『Fragrant World』からの“Blue Paper”。以前より存在感を増したシンセサイザーがすぐさま夢幻的な空間を創り上げる。妖艶なギターを操りながらもセクシーな歌声を怪しく轟かせるアナンド・ワイルダー(G,Key,Cho)、様々なエフェクトを駆使したベースプレイを放つアイラ・ウルフ・サートン(B,Cho)、サンプラーで奥行きを演出し、歌声で魅せるクリス・キーティング(Vo,Key)の3人が案内人となって、みるみるうちに我々を彼らの世界観に引きずり込んで行く。新しいドラマーと新しい機材を武器に、それぞれマルチプレイヤーとしてのセンスを全開にしつつ、静かに熱気を帯びて行くイェーセイヤーのパフォーマンスはいきなり2曲目でひとつの沸点へと辿りつく。レイドバックなリズム感とメロウなR&Bアプローチが最新作の中でも特に印象的な“Henrietta”である。後半、曲がセンチメンタルな転調をしてからは涙チョチョ切れもののサウンドスケープが会場を支配したこの曲から、そのまま一気に最新作のリードトラック“Longevity”、往年のキラーチューン“O.N.E”へと畳みかける展開にはフロアも大盛り上がり!
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その後も不穏なビートとダークなメロディが酩酊を誘うような曲や ミュージックビデオの奇妙さが話題となった“Madder Red”、そしてアンセム“Ambling Alp”など観客のツボを押さえながらも、深化した彼らの世界観を魅せ切ったイェーセイヤー。今後さらなる変貌を予感させる未発表の新曲など緩急をつけたセットを繰り広げて行く中で、新鮮だったのは傑作チャリティー・コンピ『ダーク・ワズ・ザ・ナイト』収録の“Tight Rope”とラストを飾ったエンディング曲“Wait For The Summer”だ。その見事なコーラスワークとリヴァーヴ感が心地よく染みいるような曲であることを再確認され、改めて特異なクリエイティビティを持つ才能集団である事を痛感させられる。フロアバンガーとは違った心地よいノリと思わず歌ってしまうようなメロディを堪能した90分。まだまだ底知れない彼らのさらなる進化をこれからも楽しみにしていきたいと思ったのは私だけではないはず。
text by Ken Suzuki
photo by Takayuki Mishima
セットリスト
01. Blue Paper
02. Henrietta
03. Longevity
04.O.N.E
05.Don’t Come Close
06.Madder Red
07. Demon Road
08. Folk Hero Shtick
09. Reagan’s Skeleton
10.Ambling Alp
アンコール
11. Devil and the Deed
12. Fingers Never Bleed
13.Tight Rope
14.Wait For The Summer
Release Information
Now on sale! Artist:Yeasayer(イェーセイヤー) Title:Fragrant World(フレグラント・ワールド) Pachinko Records UICO-1253 ¥2,300(tax incl.) Track List |