オウテカはその活動をスタートさせた1987年から現在に至るまで、およそ20年以上にわたりエレクトロニック・ミュージックのフィールドにおいて唯一無二のカリスマであり続けている。めまぐるしくトレンドが移り変わるその世界において、常に一目置かれる存在であり、サウンドは常にアップデートを繰り返し、新しい作品を世に送り出すごとにその評価を高め続けてきた。いまでこそ音楽ファンには馴染みの言葉となった“IDM(インテリジェント・ダンス・ミュージック)”も彼らがいなければなかったかもしれない。彼らのサウンドはそれだけ独創的であり、衝撃的で、その後のシーンに大いなる道筋を提示し続けてきた。いまでこそエレクトロニック・ミュージック通としても知られるトム・ヨークが、早い時期からその影響を公言していたのもオウテカだったりする。
ここ日本でも彼らにインスピレーションを与えられたアーティストは少なくない。NUMBやサイドラムら人気アーティストを輩出した〈リヴァース〉の一派、コーマなどのロムズ勢、あるいは田中フミヤやDJ KENSEI、PROGRESSIVE FOrMなどなどテクノからアブストラクト系、エレクトロニカに至るまでオウテカから何かしらのインスピレーションを受けているだろうアーティストは枚挙に暇がない。またオウテカのバックボーンにエレクトロやヒップホップがあるからだろうか、ヒップホップのサウンドメイカーたちからも人気が高いし、ロック・バンドのBUCK-TICKが彼らをリミキサーに起用したのも有名な話だ。ともかくその影響はジャンル、世代を超えて絶大である。
今回はそんなオウテカによる通算11枚目のアルバム『エクサイ』のリリースを記念し、オウテカに影響を受けた様々なフィールドのキーパーソンたちのコメントを紹介! ネットレーベル〈分解系〉の主宰者の矢向氏、二次元で活躍するアーティストふんわりちゃん、アーティスト&2.5Dスタッフとしても活躍中のオウテカ女史ことLicaxxxといった新世代のアーティストがオウテカをどのように捉えているのか注目です! あ、忘れちゃいけない。長年にわたり様々な立場からオウテカをサポートし続ける唯一の旧世代(失礼!)、東森氏のコメントも要チェックですよ!
(text by Naohiro Kato)
無機質で複雑怪奇なんだけど不思議と何度も聴きたくなっちゃう
Q1:初めてオウテカを聴いたときの衝撃を教えてください。
未来の音楽を聴いてるみたい。無機質で複雑怪奇なんだけど不思議と何度も聴きたくなっちゃう。心を持ったロボットが届けてくれたお弁当(ネジとか入ってる)にビックリみたいな感じかな”(_◜◡‾_)”
[初めて聴いたアルバム:『Autechre Lp 5』]
Q2:あなたが体感したオウテカのライブ・エピソードを教えてください。
オウテカさんの姿はよく見えなかったけど、真っ暗な空間の中で研ぎ 澄まされた感覚でもって、飛び交うあらゆる音とビートがまるで目に見えるような感じだったよ。
あっという間で気づいたらライブ終わっちゃってたよ(~ ・◡・)~
[初めて観たライブ:2008年「AUTECHRE」at LIQUIDROOM]
Q3:オウテカを一言で表すなら?
常に最前線を行く、スーパーサウンドトルーパー!( ・`ω・´)b
バイオグラフィー:ふんわりちゃん
2012年に突如として現れた、Dr. ミズノとメカニックPhasma&NOEL-KITを擁するまだ色々秘密系ガール。現在までに「ふんわりちゃんと一緒!」「ふんわりちゃんと四角いやつ!」という2枚のEPをリリースし、各所で人々をふんわりさせているとかいないとか。 |
壮大な空間、はじめて聴くような謎の音が複雑なリズムで絡む感じ….
Q1:初めてオウテカを聴いたときの衝撃を教えてください。
初めて聞いたのは高校生の時で、テクノやIDMってなんだろうと思って聞いてみたのがきっかけで、『Quaristice』(08年)を聞きました。正直、当時はUKロック一筋だったあの頃はあまりよく分からなかったです(笑)! けどあらゆる音楽に触れていくうちに、気づいたら〈Warp〉サウンドを沢山聴くようになり、改めてオウテカも聞き直しました。壮大な空間、 はじめて聴くような謎の音が複雑なリズムで絡む感じ….こういう音ってどうやってつくるんだろう…..と思ったことはとても大きかったです。楽曲制作する時も、カチカチしててしっとりした音、など既存の名詞ですぐには表現出来ない音をつくることを目指しています。
Q2:あなたが体感したオウテカのライブ・エピソードを教えてください。
オウテカのライブは生で見たことはないのですが、ネットや人に聴く限りだと音に集中する実験的空間で体験できると聞いたのでそれはとても気になっています。音源を聞いているだけでも、壮大さや音質、定位などを広い空間で体験したら気持ちいいんだろうなあ…と思っていました。実験的音楽であればあるほど、音の明確さだけでは計ることの出来ない、空間の作りを丸ごと体験したいと私は思います。 多分音源では聞こえてない音も沢山あるでしょうし…..早く生で見たいですね!
Q3:オウテカを一言で表すなら?
“未来社会の終末、機械化された大海原で時空歪んできた。”って感じでしょうか…..
(私なんかが一言で表して良いんでしょうか…しかも一言じゃない…)
バイオグラフィー:Licaxxx
1991年生まれのギークになりたいクズ学生。 寺山修司目指してビートメイクしたり、日々思索。夢か現か、yep!! |
攻撃性と美しさの二面性でぼくらを深いところに連れていってくれる
Q1:初めてオウテカを聴いたときの衝撃を教えてください。
自分はVJをやっていることもあって、最初のオウテカは高校時代に見た『Gantz Graf』(02年)のミュージック・ビデオが最初でした。当時、あの攻撃的なグリッチな音と映像の同期の意味でアレックス・ルタフォードの映像にやられた感が強くて、さらにあの同期を手付けで作ったというインタビューを読んでさらに衝撃を受けたのを覚えています。そのあとは『confield』(01年)、『Autechre Lp 5』(98年)と遡って聴きましたが、それまでダンスミュージック一辺倒だったので自分にとってはIDMやアンビエントな方向へと聴き漁るきっかけになったのはオウテカなので、初めて『Gantz Graf』見たときの興奮は忘れられないですね。
Q2:あなたが体感したオウテカのライブ・エピソードを教えてください。
ライブを初めて観たのは2005年のエレグラでした。といっても最初から観れたのではなくて、ライブ後半の20分間くらいしか見れなかったのですが。。たしかタイムテーブルが2番手くらいで、急遽遊びに行ったこともあり、そんなに早い出番だとは思わず、現地着いたら終わり間際で悲しんでたのを覚えてます。
オウテカの暗闇の中で電子音が暴れ回るライブを少しでも観れたのは良かったし、次のライブでは最初から観てさらに深いところに連れてかれるのを期待してます。
Q3:オウテカを一言で表すなら?
一言でというのは難しいですね。アルバムごとにそのときの深く無機質な表情を見せつけてくれる音楽家というところでしょうか。初聴きが『Gantz Graf』だったこともあり自分の中では無機質さと攻撃性の代名詞でしたが、『Amber』(94年)や近年の『Oversteps』(10年)で見せてくれるダークで美しい音もまたオウテカの醍醐味だと思います。この攻撃性と美しさの両面の二面性でぼくらを深いところに連れてっていってくれるのが、自分の中のオウテカです。
バイオグラフィー:Naohiro Yako(flapper3 / Bunkai-Kei records)
2010年よりトラックメーカーのGo-qualiaとともにオンラインレーベル<Bunkai-Kei records>を主宰。分解系でのリリース等のプロデュースをするほか、<OUT OF DOTS>や<Re-Union>といったイベントのオーガナイズやDJとして活動。また個人としてVJや、2002年よりメディアデザイン集団flapper3の設立メンバーとしても活動している。 |
フロアが暗転して最初のキック音がでた時点で完全に彼らの世界に引き込まれた
Q1:初めてオウテカを聴いたときの衝撃を教えてください。
衝撃というよりは、クールなビートと印象的な旋律にやられた!って感じでした。
[初めて聴いたアルバム:『Incunabula』(93年)]
Q2:あなたが体感したオウテカのライブ・エピソードを教えてください。
オウテカのライブは8回くらい観てるけど、一番思い出深いのは日本で初めて完全暗転空間でライブを披露した2005年の川崎チッタでのショー。ちょうど『Untilted』(05年)をリリースした後で、2001年の<FUJI ROCK>の出演がキャンセルになってから初めての来日、その前のフミヤさんのChaosでの来日公演から6年振りくらいだったから、フロアの皆のテンションも半端なかった。真っ暗闇の空間に放たれるポリリズミックなビートとその上を飛び交うノイジーな音の粒。好き嫌いがはっきり分かれるであろうストイックでエクストリームなパフォーマンスだけど、自分はフロアが暗転して最初のキック音がでた時点で完全に彼らの世界に引き込まれました。あとは2001年にトータスがキュレーションしたUKのATPでの彼らのショーも印象に残ってます。
それとオフ・ステージでの悪ガキのようなショーンと穏やかなロブの佇まいも。
一緒にボーリングに行ったのもいい思い出です。
[初めて観たライブ:94年の来日公演(ザ・グリッドのフロントアクト!!)]
Q3:オウテカを一言で表すなら?
一言、難しいですね。
ベタですがcreativityとか?
バイオグラフィー:東森努
2001年より約10年間のBeatink勤務を経て、現在は代官山UNITにてブッキング/企画に従事。