6月22日(土)から7月21日(日)、アニエスベー ギャラリー ブティックにて川内理香子の個展『Under the sun』が開催される。

川内はこれまで、食への関心を起点に、不確かで曖昧な身体と思考のつながりをテーマに、ドローイングやペインティングをはじめ、針金やネオン管、樹脂や大理石など、さまざまなメディアを横断して作品を制作してきた。

本展では、人々が同じ目線で座り、食べ物を格差なく共有し、自然の環境に適応しながら、無防備な状態で身体と精神をむき出しにして食事を楽しむ「ピクニック」という体験を、文化、歴史、社会の階層といった視点から考察。その定義と行為に光をあてる。

会場はペインティングとドローイングを中心に構成され、さらに、服を制作する前に色や素材の質感、仕上がりを確認するために使用されるアニエスベーの布地(スワッチ)を使った作品も展示予定だ。また、アニエスベーが1994年から続けているアーティストTシャツコレクション「T-shirts d’artistes!」にも、今回川内理香子が参加する。アニエスベーの世界観に共鳴し実現したこのコラボレーションをぜひ楽しんで頂きたい。

アニエスベー ギャラリー ブティックにて、川内理香子の個展『Under the sun』を開催 240618_agnesb_sub1
(C)Rikako Kawauchi, courtesy of the artist and WAITINGROOM / Photo by Shintaro Yamanaka (Qsyum!)
アニエスベー ギャラリー ブティックにて、川内理香子の個展『Under the sun』を開催 240618_agnesb_sub2
(C)Rikako Kawauchi, courtesy of the artist and WAITINGROOM / Photo by Shintaro Yamanaka (Qsyum!)

アーティストステートメント

ピクニック。

ピクニックの定義はなんだろう。野外で食事すること。それがピクニックの定義だろうか。普段は建物に身を包まれながら、屋内で済ませる食事を屋外でとる。内にあるはずのものを外に置き、自然の中で食事を楽しむ。野晒しの食事と、野晒しの身体と、そこでの食べるという行為。

ピクニックは外でただ過ごすことではなく、そこで食事をとらなければピクニックではない。ピクニックにおいては食事というものに重きが置かれる。食事をするということは、無防備な行為でもある。

だから動物たちは獲物を狩った後に、安全な場所、自らが狙われない場所へと移動して食事をするのだろう。食べるという無防備でむき出しの行為を、人間にとっては、外気から身を守る皮膚の延長とも思える建物から飛び出し、身体もむき出しの状態で行うピクニックは、身体も、そして精神も、むき出しになる行為のように思えてくる。

ピクニックの歴史的な側面に目を向けると、ピクニックの起源は1900年ごろにまで遡るらしい。諸説あるピクニックの始まりの1つに、悪口の掛け合いとして使われていた「pic-nic」という文化から始まったとされるものがある。ここから生まれた価値観は、平等であるということらしい。

平等な、対等な立場だからこそなんでも言える、ということだろうか。年齢や普段の立場に関わらず皆平等である、ということがその概念に繋がっていったと考えられそうだ。外での食事や食卓のセッティングは、常に流動的で臨機応変に自然の土俵に対応しなければならず、また食べるものも格差をつけるのは難しい。そこでは人の文化的な営みよりも自然に対応することが要求されるだろう。同じ目線で座り、部屋の境界はなく、地続きの土の上で同じものを食べるのがピクニックだ。

簡易的な布やシートをひき、内と外の間のような境界の中で、人々も、食べ物も、自らも、それを取り囲む自然も、全ての領域が曖昧模糊に溶け込めるようなひとときだから、外で食べたり飲んだりすると、食べ物がいつもより、より美味しく、そして特別なものに感じられるのかもしれない。

川内理香子(2024年5月)

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INFORMATION

川内理香子『Under the sun』

アニエスベー ギャラリー ブティックにて、川内理香子の個展『Under the sun』を開催 240618_agnesb_main-1
会場:アニエスベー ギャラリー ブティック/東京都港区南青山5-7-25 ラ・フルール南青山2F
会期:2024年6月22日(土)~7月21日(日)(月曜休廊 ※7月15日はオープン)
時間:12:00~19:00
オープニングレセプション:2024年6月21日(金)19:00~21:00
協力:WAITINGROOM
広報協力:YN Associates
会場設営:artifact

川内理香子

1990年東京都生まれ。2017年に多摩美術大学大学院・美術学部絵画学科油画専攻を修了。現在は東京を拠点に活動中。食への関心を起点に、身体と思考、それらの相互関係の不明瞭さを主軸に、食事・会話・セックスといった様々な要素が作用し合うコミュニケーションの中で見え隠れする、自己や他者を作品のモチーフとして、ドローイングやペインティングをはじめ、針金やネオン管、樹脂や大理石など、多岐にわたるメディアを横断しながら作品を制作しているアーティストです。制作を通して描くことで、捉えがたい身体と目には見えない思考の動きを線の中に留めている、と本人は語ります。近年の展覧会として、2023年個展『Even the pigments in paints were once stones』(WAITINGROOM/東京)、『The Voice of the Soul』(ERA GALLERY/ミラノ・イタリア)、2023年グループ展『アーツ前橋開館10周年記念展 – New Horizon – 歴史から未来へ』(アーツ前橋/群馬)など。また、2015年『SHISEIDO ART EGG』ではART EGG賞を、2021年『TERRADA ART AWARD 2021』では寺瀬由紀賞、2022年『VOCA展2022』では大賞のVOCA賞を受賞。

HP