80年代にはまだストリート&アンダーグラウンドだったヒップホップが、各々のローカルを飛び出し勢いよく世界を魅了した90年代、アイルランドからロサンゼルスへ写真の勉強をしにやってきた1人のアーティストがいた。後に「B+(ビー・プラス)」という名でフォトグラファーとして活動し始めてからは、ヒップホップアーティストをメインに数々のポートレートを撮影。このジャンルが少しでも好きな人であれば、きっと一度はB+が撮影した写真や映像を目にしたことがあると思う。
そのヒップホップ界にて生きるレジェンドフォログラファーB+が、約3年半ぶりに東京・渋谷にあるTRUNK HOTELにて個展<12th presents Tried by Twelve:photography by B+>を開催した。
ヒップホップ界のレジェンド、写真家B+による12組のポートレート
12th presents『Tried by Twelve:photography by B+」at TRUNK HOTEL
新旧問わず、これまでにB+が撮影をした写真の中から選ばれた12枚のヒップホップアーティストたちのポートレート……Damian Marley、Erykah Badu、Flying Lotus、Jay Electronica、Kamasi Washington、Kendrick Lamar、Lauryn Hill、Madlib、Notorious B.I.G.、Ol’ Dirty Bastard、Questlove(The Roots)、Thundercat(アルファベット順)らの姿を捉えた大きなサイズのポートレートが、各々の世界観を放ち壁一面に展示されているギャラリーの空間は圧巻だった。
今回の個展は、今年2月にコロナでこの世を去った、B+の友人であり、ロサンゼルスをベースにラジオ番組を中心にレコードプロモーター、DJとして活躍をしていたByze Oneへの追悼の意を表したものでもあり、タイトルは1996年にリリースされたThe East Flatbush Project「Tried by Twelve」より引用。ブルックリン発の名曲を、当時ラジオでロサンゼルスに広めたのがByze Oneだったのだそうだ。
7月15日(金)~18日(月)まで、4日間に渡り開催された個展では、7月15日(金)の夕方からはB+も在廊しレセプションパーティを開催。会場にはヒップホップカルチャー、ストリートカルチャー、そしてアートにゆかりのある人々が、年齢層幅広く続々と来場。ファッションディレクターの小木”POGGY”基史、BEDWIN & THE HEARTBREAKERSデザイナー/DAYZディレクターの渡辺真史などファッション界で活躍する人々から、Rip SlymeのILMARIとRYO-Z、WISE、Tempalayの小原綾斗、PERIMETRON/millennium paradeのShu Sasaki、NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのXBS、K DUB SHINE、DJ BAKUなど音楽界で活躍するアーティストたちが姿を現した。
ファッションディレクターの小木”POGGY”基史
BEDWIN & THE HEARTBREAKERSデザイナー / DAYZディレクターの渡辺真史。DAYZでは、B+とAPPLEBUMとのコラボレーションTシャツを販売。
RIP SLYMEのILMARI(左)、RYO-Z(右)とWISE(中)
バンドTempalayのフロントマン小原綾斗
プロデューサー、クリエイティブディレクターなど多岐にわたり活躍するPERIMETRON/millennium paradeのShu Sasaki
松葉屋代表、盆栽家の小島鉄平(左)と、フォトグラファーとしても活躍中のNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのXBS(右)
K DUB SHINE
またギャラリーと併設しているTRUNK HOTELのロビーでは、7インチコレクターでもあるB+が自らDJプレイをしたほか、IZPON、ARIWA(ASOUND)、applebum team、dayz team、Tasshin(田代音造園)、12th teamなどが、ヒップホップ、レゲエ、ダブ、ブレイクビーツとビートの効いた選曲でDJプレイ。ロサンゼルスからレコードを持ってきたB+は実に楽しそうにソウル、ファンク、カリビアン、南米系のサウンドをプレイし、音楽が本当に好きなんだなと感じさせてくれる一面を見せてくれた。
来場をしている人たちを見て感じたことは、それぞれにお気に入りのアーティストがいて、その写真(ポートレート)の前で記念撮影をする人たちの姿が多かったということ、またB+という写真家を通じて各々のアーティストたちの魅力を改めて感じた人たちも多かったのではないだろうかということ。そしてアート好き、音楽好きが多く集まったからか、この先もヒップホップ史上に記録されていB+による世界最高峰の写真と、グッドミュージックに溢れたTRUNK HOTELの1階の空間は始終良い空気感で溢れかえっていた。
DJ BAKUのお気に入りは、1995年に雑誌「fine」のために撮影されたNotorious B.I.G.のポートレート
ジャズ・ベーシスト 中村照夫(左)、B+(右)
レセプションでバイナルをプレイしたARIWA(ASOUND)
Photo by Atsuko Tanaka
Text by Kana Yoshioka
INFORMATION
12th presents/“Tried by Twelve:photography by B+”
2022.07.15(金)~18(月)
TRUNK(HOTEL)内ROOM101