2017年12月9日、10日に華山1914文創園区で第2回<Culture & Art Book Fair in Taipei(以下、CABF)>が開催された。第1回目の際は入場するのに数時間も待つほどの盛況ぶりだったということで、台湾の独立系出版が今面白いと聞き、これは行くしかない! そう思って約10年ぶりに訪れた台北。

元々日本統治時代の酒工場だった場所を「文化創意=文創」の意を持たせる建物としてリノベーションした地区は、新旧が混在したノスタルジックな空気をまとい、外を散歩するだけでもわくわくした。数多くの出店ブースに加え、トークショーやワークショップ、会場の外ではライブも行われイベントは終始活気に満ちていた。今回は出店者の中から、台湾でも注目のクリエイターたちに話を聞いた。

『秋刀魚』(編集部)

2014年に「Discover Japan Now」をコンセプトに台湾人目線で日本の文化や街を紹介する人気雑誌『秋刀魚』。26歳のEVAが編集長を務め、日本人の知らない日本を気づかせてくれるディープな視点が面白い。

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━この雑誌を創刊したきっかけを教えてください。

「雑誌」に情熱を持ち続ける若いメンバーで結成したメディアです。自分たちの趣味からどうやって雑誌出版業界に新たなものを生み出せるかを編集部で考えていた時、台湾は日本文化の影響を受けていたことに気付いたんです。50年の日本統治時代を終えても街中に残された日本式建築、アニメキャラクター、ラーメン屋、日系デパート……。これらは正統派の日本文化ではありませんが、台湾と日本の繋がりが見受けられるものと言えます。私たちの回りにも、日本の地下鉄マニア、地方や離島へ日本の民芸を探しに訪ねる人、東京中の人気レストランを食べ回ったグルメな人など、日本を詳しく知っている人が多くいます。こんなに日本に詳しい台湾人がたくさんいるのに、日本文化にフォーカスした台湾発の雑誌はほとんどありません。『秋刀魚』は出来る限り台湾と日本両方のライターを集め、国の距離を超え、台湾視点で最新の日本情報を読者に紹介しようと思っています。日本の読者に台湾の今を見せ、興味を持ってもらえる雑誌を目指してお互い良い交流をしていくのが私達の目標です。

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━台湾読者の反応は?

発行部数は30,000部で、現在販売している地域は台湾、香港、中国、シンガポール、マレーシアになります。積極的に日本の書店へも進出できるよう頑張っています。読者は、やはり日本文化が好きなアジア圏の方がメイン。面白いのは「旅」、「グルメ」などではなく、マニアが注目しているような専門テーマのほうが読者ウケがいいです。台湾読者には「民芸工芸」や「鉄道研究」、大人向けの「ガチャガチャ」のようなテーマがウケています。『秋刀魚』を通して、より日本を知ろうとするきっかけになったらと思っています!

公式サイト:秋刀魚

Argi Chang (本冊圖書館「Artqpie Library」オーナー兼デザイナー)

CABのキービジュアルを担当したArgi Chang。デザイナーだけにとどまらず、編集や、空間デザインなど幅広くライフスタイルに関わるものづくりを手がけている。台中に夫婦で営む本冊圖書館「Artqpie Library」がある。

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photo by haveAnice

━簡単なプロフィールを教えてください。

「佔空間Artqpie」はブランド名であり、私たちの最初の原点、本冊圖書館「Artqpie Library」はお店の名前です。何かを出版する時は「咱誌Let’s Zine」という別名で活動しています。内容的には写真、イラスト、空間建築を取り扱い、日常生活やローカルなライフスタイルを幅広くフォーカスし、日々の出来事を伝えたい思っています。温度のあるものを本という形として残し、シェアすることを目的としています。空間デザインを考えたり、本も編集したり、独立出版や独立展示会も手掛けています。

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━今回のキービジュアルを描くにあたり、このCABFをどのように感じていますか?

CABFは人との繋がりや絆を更に深めることのできる、アットホームなイベントだと思っています。今回イラストは妻(Janeni)が担当して、私は全体的なレイアウトをデザインしました。最初メインビジュアルを頼まれた時は、驚きつつも嬉しかったです。アートにはさまざまな形がありますが、その中で見る人には自分なりに楽しんでもらいたいし、本とZINEはただの商品ではなく、普段の生活の中でも必要なものだという思いも込めています。このメインビジュアルを通してその思いが来場者に伝われば嬉しいです。

━台中のお店を日本の人々に紹介したいのですが、どのようなテーマのショップなのか教えてください。

台中は居心地のよい街だと思います。私達のお店は多くの本屋と違い、飲食をやらずに、紙、本を専門として運営しています。入り口から作業スペースの仕事場まで、全て自分達で手作りしました。店内の書籍は多いとは言えませんが、私達の出版物のためにわざわざ足を運んでくれるお客さんもたくさんいらっしゃいます。台湾や日本の本をもっと地元の方やここを訪ねて来た方に読んでもらいたいと思っているので、お店では不定期で読書企画をやったり、様々なジャンルのクリエイターやアーティストを集め、展示会も行っています。

Facebook:Artqpie Library

Zzifan_z(イラストレーター)

イラストレーターZifanとそのマネージャーZoeyのふたりで活動するユニット。独自のスタイルと優しい色使いで日常を切り取ったワンシーンのような、ポップなイラストを描く。彼らの世代を表現しているイラストは、SNSなどでも人気。代表的なキャラクターは「肉女草男(肉食女と草食男)」。

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━日本語がところどころに書かれていたりと、なんだか日本人としても懐かしい感じがします。これは何か日本の影響をうけているのですか?

小さい頃からあだち充、高橋留美子、江口寿史などの日本漫画家の作品を読んでいたので、知らず知らずに影響を受けている気がします。それもあって、自分の作品も懐かしい昭和の日本のようなレトロ感を見る人に感じさせているかもしれないですね。

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━今後の活動を教えてください。

来年はより多くの時間を費やして、漫画の創作に力を入れたいと思っています。また機会があれば、化粧品などの商品パッケージのデザインやコラボレーションもチャレンジしてみたいです。

Facebook:Zzifan_z

DingDong / 叮咚(フォトグラファー)

台湾のミュージシャンやアーティストの撮影や、大手企業の広告撮影なども行う新進気鋭のフォトグラファー。あたたかい視点で切り取る写真が見る人の心を掴んでいる。

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━今回の『swim!swim !swim!』と『run!run!run!』はどのような思いで制作した写真集ですか?

この写真集を見て楽しんでもらい、心から笑ってくれると嬉しい。内容はほとんど子供達が運動しているシーンだけど、そのストーリーや動機はそれぞれ違います。『swim! swim !swim!』は妻が亡くなった初めての夏に、自分の気持ちを整理するため、自分と対話するようにして完成させた作品です。悲しい気持ちではありましたが、自分がまた写真を撮れる可能性を探すために改めて撮影を通し、楽しく艶やかな彩りで表現しました。一方、『run!run!run!』は数年前撮った写真を振り返って出版した作品。「自分が才能を持っていることはとても素敵なことだから、初心を忘れずに前に進むべきだ!」そう思いを込めて制作しました。

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━今後の活動を教えてください。

来年は新しいシリーズの写真集『Berlin tables』を作る予定です。今年ベルリンで地元の人々17人の家に短期滞在し、その時撮った彼らの友達やホームパーティーなどの写真を編集して出版します。今までのスタイルと全然違うため、自分でも凄く楽しみにしています。そして『Berlin tables』の新篇の続きもこれからソウルに撮影しに行くので、是非楽しみにしていてください。

Facebook:DingDong

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本屋、編集部、イラストレーター、カメラマン。国も職業も違えども、素晴らしいと思うもの、面白いと思うもの、繋がりが生まれる楽しさ、そういうのはもちろんだけれど、愛すべきものが同じ人々の集まる空間はたくさんの可能性を秘めている。

来場者が過去最高になった今回。それだけでなく台湾と日本の出店者、スタッフが交流する場となったことが嬉しかったと主催のFujin Tree代表・小路さんは語っていた。今後もテーマを変えて様々なカルチャーイベントを行っていくとのことで、3月にはコーヒーのイベントも開催する予定だ。国境を越えて、ひとつのテーマを持って人と人が出会うリアルなイベントってやっぱり面白い。また、3月も台湾に飛ぼう、と思った。

EVENT INFORMATION

第二回Culture&Coffee Festival

2018.03.24(金)・25(土)
場所:松菸文創園區 四號倉庫
入場料:150元

詳細はこちら

text by 佐藤めだか