音楽とアートを横断する希代のアーティスト、カールステン・ニコライの個展が開催される。
カールステン・ニコライは旧東ドイツの生まれ。大学でランドスケープアーキテクチュアを専攻し、卒業後は都市のデザインを手掛けていたが、90年代に入ると美術家としてベルリンで活動を始める。才能はすぐに開花し、1977年にはドクメンタ(美術界の動向に与える影響力が大きく、世界の数ある美術展の中でも特に重要な展覧会)に出展し、世界的な評価を獲得する。
ここ日本でも山口のYCAMでカマルコ・ペリハンと協同してインスタレーション作品を発表(2000年)したのを皮切りに、2003年には越後妻有アートトリエンナーレの川西エリアにサンレコーダーを設置し、3年間のこの地における日照時間を計測して保管することで、客観的事実の記録を通してパターンを可視化させた。
Carsten Nicolai + Marco Perjhan “polar m [mirrored]”
また、2012年の芸術祭では信濃川流域で感じた水やその波動に着目し、水槽に入った水の波紋が周波数の変化を受けてスクリーンに投影される作品『Wellenwanne LFO』を生み出した。この周波数の変動により、変化する波紋が鏡に反射して映し出されるプロセスは、作家の言葉を借りれば「無作為の行為」であり、そういった無作為をコントロールしたり、分析したりすることが可能なのか、それがカールステン・ニコライの作品を生み出す大きなテーマとなっている。
さらに、彼はアートの分野だけでなく、アルヴァ・ノトの名前で電子音楽でも知られるようになり、ファクシミリ音やクリック音にまで音の領域を広げるなど視覚アートと音楽の世界を自由に行き来しながら活動の場を広げている。日本が世界に誇るアーティスト、坂本龍一とのコラボレーションも話題となった。
Alva Noto Ryuichi Sakamoto Live in 2012
そんな彼の個展がアートフロントギャラリーで開かれることが決定した。今回のアートフロントギャラリーでの展示は、『bausatz noto ∞ [color version]』 を中心に展示。レコードと4台のターンテーブルがセットになっており、回転速度を変えたりしながら同時にエンドレスにループで再生される音を観客は聞くことができる。作品そのものが音楽を作り出す装置で、音楽とアートの2つの世界で活躍する彼の代表的な作品となっている。
さらに個展の初日にはカールステン・ニコライが来日し、作品の一部を使用したオープニングパフォーマンスを行うことが決定している。世界で活躍するアーティストの世界観を味わえるまたとないチャンス、チェックしてみてはいかがだろうか。
EVENT INFORMATION
カールステン・ニコライ:bausatz noto ∞
2015.12.04(金)〜2015.12.23(水・祝)
オープニングパフォーマンス:12月4日(金)19:00〜 ドリンクあり(有料)
OPEN 11:00/START 19:00(月曜休廊)
アートフロントギャラリー
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