2012年の5月に開催された個展<おそらく、永遠に片思い>より約2年の歳月を経て、作家/イラストレーター/現代アーティストD[diː]が新たな作品を発表する。

7月25日(金)より骨董通りへ移転となった「hpgrp GALLERY TOKYO」にて、8月21日(木)から9月7日(日)の18日間、D[diː]の新作個展<Harmony/my melody , your melody(ハーモニー/私とあなたのための旋律)>が開催される。

近年はイラストレーターとしてアパレル・ブランドのタイアップをはじめ、セルフ・プロダクトの開発にも力を注いできたD[diː]。5月にはテキスタイルをベースとしたバッグやポーチなどライフスタイル・アイテムを中心としたブランド『THE TEXTILE AND GENE』のデビューコレクションを披露(この秋にはオフィシャル・ウェブストアをはじめ、一部セレクトショップなどで発売される)。グローバル展開を軸としたプロジェクト『ASKING FOR THE MOON』でもスウェット地をテーマにクロージングよりのプロダクトを開発するなど、新たなチャレンジを精力的に行ってきた。

こうした活動の歳月を経た、今回の個展は念願の開催。本展覧会では、2メートル大の草花をモチーフとした大作や、映像作家である山口崇司氏との共作で映像のインスタレーション作品も展示(第二展示室)予定。今までにないアプローチでD[diː]の新たな表現を鑑賞することができるだろう。

Exhibition Statement by D[diː]

Harmony / my melody , your melody
D[diː]個展 ハーモニー/私とあなたのための旋律

ハーモニーとは、ご存知のとおり調和という意味だが、近頃、この言葉をとても重要に感じている。例えば、「ハーモニーが奏でられていない」……料理の一皿の中であれば、素材の味がてんでバラバラではとても美味しいとは言えないしろものになるだろうし、……男女の間であれば、ケンカや行き違いばかりだろうし、……職場であれば、各々が協力しあわないので利を得るのが難しく、……当然、音楽であれば、不協和音の集合体となり、その耳障りの悪さに気分を害することさえあるだろう。

いつまでたっても、ユートピアは実現されない。人間が文明をもちはじめて一度たりとも持続したことがない。今後私たちが生きている限りおそらく、聖書に描いてあるような天国も、仏典にあるような極楽浄土も現出することはないのではなかろうか。なにかの犠牲の上に、断片的かつ局所的にのみ存在することはあったとしても。であれば、この世に正義や平和というものが存在するとして、しかしそれを成立させるための必要悪や誰かの不幸が不可欠であるならば、重要なのは一元的な善悪の価値観ではなく、それら全体が入れられた状況における調和、ハーモニーが奏でられていたか否かということになってくる。

私は夢想する。それは、未来なのか、現在に存在する廃墟化した場所なのか、過去の滅びた文明跡なのかはわからない。かつてはその存在自体がものものしく、他を威圧し圧倒していたような巨大な乗り物や人物、兵器、凶器、建造物、なんてことのない日常品まで……忘れられて、うちすてられた人工物や存在が、長い時を経て植物が寄生し絡み合い、機能していたころであれば縁遠かったであろう野生動物や自然と融合し、完全に機能停止というハーモニーを奏でることを。

経年劣化、風化、色あせて、ぼやけていく、個人的な思い出も歴史も何もかも……その先にある繁殖のハーモニー。そういうものを想ったときに、私の中で原風景のような憧憬と懐かしさが沸きおこる。

一方で、ハーモニーとは、そのときどきで移ろいやすく、また個人的な価値観の物差しでいうと千差万別に存在する側面をもつ。今展示で、D[diː]という一人の作家が提示するハーモニーの前に立ったときに、何かしら琴線に触れ、心地よさを感じてもらえたのならば、「どんな不協和音で狂ったメロディであったとしても、あなたが良ければ、このハーモニーはあなたのための旋律となる」

Comment from gallery:hpgrp GALLERY TOKYO戸塚憲太郎

D[diː]は、「ないものねだり」を制作の根底に置いている。2年前の個展<おそらく、永遠に片思い>は、求めてやまない動植物への「愛情」と、それに対するアレルギー反応という「拒絶」で成立していた。近づきたくて求めれば求めるほど自らが拒絶するものを追いかけ続けるなんて、痛々し過ぎると思った。しかしすぐに、本当は自分もそうしたいがおそらく出来ないだろうということに気付き、そんなD[diː]に憧れた。

本展「ハーモニー/私とあなたのための旋律」でD[diː]は不安を露呈している。自分が今幸せだとすると、それは誰かの不幸の上に成り立っているのではないか。今生きていられるのは、自分のために誰かが死んでいるからではないか、と。多分、そうなのだと思う。さすがにもう気付いている。環境破壊や地球温暖化、終わらない戦争、そしてポスト311の世の中の空気感。何かが絶望的におかしく、ハーモニーとはほど遠い。

D[diː]が夢想する世界には人間はいない。なぜなら人間がハーモニーを壊すから。人間が理想とする世界に一番不要なのは人間という矛盾。やはり「ハーモニー」も求めれば逃げて行く、決して手に入らない「ないものねだり」ということか。

Event Information

Harmony/my melody , your melody
D[diː]「ハーモニー/私とあなたのための旋律」展

2014.08.21(木)〜09.07(日)@hpgrp GALLERY TOKYO
OPEN 12:00/CLOSE 20:00
定休日:月曜日・毎月最終日曜日

オープニングレセプション
2014.08.21(木)
START 19:00/END 22:00