――来場される方には、どんな気持ちで作品を見てもらいたいですか?
他人の気持ちをコントロールすることはできません。見る人に任せます。私はただ扉を開くだけです。その私が開いた扉の裏に私がいろいろセッティングした世界を見ていただければ。「本当の世界」というものは存在しません。
誰の目にも世界は違った風に映っている。世界について考えた時点で、「本当の世界」というものは無くなってしまいます。「本当の世界とは、バカな人のためだけにある」という有名な言葉がある。頭を使わないといけない。一度、世界を「ダークサイド」にしてしまいましょう。闇の中を通らないと、光はわからない。ニーチェの名言にもあるように、「夜もまた一つの太陽」なのです。
――最後に、日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
とにかく皆さん、来てください。そして何度でも足を運んで、楽しんでください。今日来てくださった方の中にも、「また来ます」と言ってくださった方がいました。次に来場されるときは、また別の新しい作品も見ていただければと思います。
また、私は日本の3DCGアーティストとコラボレーションすることにも興味があります。ただしアニメーションではなく、リアルな映像のクリエイター限定で。それから、英語ができないとダメです。
「世界を『ダークサイド』にしてしまいましょう」という言葉も飛び出したが、これは決して、ダース・ベイダーになってしまえという意味ではないそう。ダークサイドへの誘惑に打ち勝ったルークのように、光を得たければ必ず闇を通らなければならない。そう考えながら作品を見ると、彼の写真の中にこそ現実が広がっているようにさえ思えてくる。
実際にセドリックさんにお会いしてみて、自分の世界観というものを持った芸術家という印象を受けた。ジョージ・ルーカスから認められるのも納得である。本人からも「自分は『場所』のフォトグラファーだ」というコメントがあった。自分の芸術家としての役割をきちんと把握されているのだろう。自分が見たそのままの世界を相手に見せたい。決して誰かに媚びるためにやっているのではないという真摯な姿勢が垣間見えた。
また「『スター・ウォーズ』のファンのためだけに作品を作っているのではない」とも話していて、本人は『スター・ウォーズ』のファンではないのかと疑ってしまった。しかし、ただファンとしての気持ちを押し出し過ぎてしまうと、作品のバランスが崩れてしまう。そこで、「新作が公開されたら観に行くけど、すぐには観に行かない」と語るなど、絶妙な距離感を取っているのかもしれない。ファンと言うより、もはや『スター・ウォーズ』は生活の一部なのだろう。
実はこれまで、『スター・ウォーズ』作品を全て見ていたわけではない。初めて『DARK LENS』作品を見たとき、一部の日常世界に架空のキャラクターが違和感なく存在していることに妙な印象を受けた。
その一方で、とにかく「もっと見たい。キャラクターは分からないけど、もっと見たい」と思い、彼のサイトにアクセスしていた。その時点では、なぜその場所にそのキャラクターを配置したかまではよく分からないという印象だった。
しかし、取材に備えて全シリーズを鑑賞したのちに今回の写真展を見たことで、それぞれのキャラクターの背景も分かり、より作品世界が深まったように思う。カーボンで固められたハン・ソロが屋外に晒された『Carbonite, Lille & surrounding wastelands, 2007』は、どことなく哀愁が感じられる。
また、夜の建設現場の前に佇むダース・ベイダーを写した『Darth Vader, Dubai 2009』は、エピソードⅥで新デス・スターの製造を手下たちに急かせていた彼の姿と重なる。作品を通すことで、よりセドリックさんの作品世界にも近づけた。
セドリック・デルソーが繰り広げる『DARK LENS』の個展は、ディーゼル渋谷地下1階ギャラリースぺースにて2016年2月11日まで開催中。入場は無料なので、ショッピングのついでにでも、その新しい世界に足を踏み入れてみてはいかがだろうか。
インタビューでは日本人アーティストとのコラボについても話が出た。我こそはという3DCGアーティストの方もぜひ会場に訪れ、名乗りを上げてみよう。
取材/平原学
記事提供元:イベニア
日本・世界の“面白い”イベント”情報を探し出し、紹介することを目的としているWebサイト。規模の大小に関わらず、斬新な企画のイベント、思わず人におススメしたくなるイベント、とにかく変なイベントの数々を情報提供しています。
EVENT INFORMATION
DARK LENS
2015.11.20(金)– 2016.02.11(木)
OPEN 11:30/CLOSE 21:00
DIESEL ART GALLERY(DIESEL SHIBUYA内)
東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti B1F
不定休
03-6427-5955
アシスタント·キュレーター:KITAOKA Sawako – 北岡佐和子
協力:株式会社 堀内カラー/株式会社 フレームマン/TRNK