松岡広⼤が主演を務め、CMディレクター・後藤匠平、太⽥良、隈本遼平の3名が脚本・演出を担当した配信ドラマ・ドラデリ『素顔』。このたび、隈本遼平監督と、第1話に出演する女優・浅川梨奈の対談が実現。制作の舞台裏や作品に込めた思いについて語ってもらった。

対談:浅川梨奈×隈本遼平監督

━━CMディレクターである隈本監督が、どのような経緯で配信限定ドラマの演出をすることになったのでしょうか?

隈本 僕らの仕事は、CMやMVなどの映像が多く、ドラマや映画に携わることはあまりなかったのですが、コロナ禍の中で何ができるか、何かコンテンツを作れないか、と考えていた時に、配信ドラマであれば作ったものをすぐに見ていただくことができるのではと思い、スタッフとミーティングを重ね、このドラマを制作することになりました。

━━CMとドラマには違いを感じますか?

隈本 CMとドラマでは演技にも違いがあると感じますね。CMは商品メッセージを中心においているので、(台詞も)最終的に商品に向かっていく言葉ですし、演技だけでなく編集などの表現も異なってきます。ドラマや映画は、見る人それぞれに感じてもらえばよいのですが、CMは見た人に、商品を欲しいな、いいなと思ってもらえる映像になっていないと意味がありません。その点が大きく違うのではないかなと思います。

━━今回の配信ドラマを、短編ドラマという形態にした理由はなんでしょうか?

隈本 配信ドラマは、場所も時間も問わずに見ることができるので、視聴者の生活環境を想像した時に、短編の方が気軽に見ることができて良いかなと思いました。新人の僕らの作品でも気軽に見てもらえる表現形態を考えた結果ですね。

━━今回、意識したポイントは?

隈本 短編ドラマなので、舞台を一つのシチュエーションに限定したいと思いました。理容室というワンシチュエーションの中で、物語がどう転がれば面白いのか? 長編作品ですと、主人公の設定などを細かく描くことができると思うのですが、説明で使う尺を省きつつ、物語が進行する中で少しずつ設定や背景が明らかになり、結末へ向かっていく。あとは、松岡くん演じる主人公とお客さんの表情の対比を魅力的に描いていく、というところですかね。

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━━本日対談する浅川さんの印象を教えてください。

隈本 浅川さんは、もともとは主人公の所有物だったマネキンが人になって主のもとへ訪れる、という難解な役なのですが、初めてお会いした時はまだ脚本を修正している段階でした。もともとは影があるというか、尖っている方なのかな? と思っていたのですが、実際に会うとイメージとだいぶ違いました。明るくてやわらかい雰囲気で。

浅川 私、普段そんなこと言われたことないですよ(笑)。

隈本 なので、もともとは少し冷たくて淡々としている感じをイメージしていたのですが、稽古で本読みをしたときに、笑顔を入れてみようかとか脚本を何度か修正しながら完成に近づけていきました。浅川さん、実際にはどっちだと言われること多いですか?

浅川 私、尖っているとか影があるとか言われたこともないですし、片や、やわらかいとか明るいとか。私のこと皆さんどう思っているのかわからないですし、むしろどう思っているか知りたいです(笑)

━━浅川さんは、女優業に本格進出してから多数の作品に出演されていますが、いままでの作品と違いを感じる部分はありましたか?

浅川 監督がドラマ制作が初めてということで、本読みの時だったと思いますが、「普段の本読みはどういうやり方をしてますか?」と監督から聞かれたんです。普段なら、監督からの合図をきっかけに普通にト書きを読んでいくことが多いですが、今回は松岡さんと二人で話し合って「間などの感じも入れてみながら読んでみる」というやり方を監督に提案させていただいたりしました。

━━稽古はどのような雰囲気でしたか?

浅川 監督が私達に寄り添ってくれている感じがしました。監督が自分の頭で考えていることを具体的に話してくださったおかげだと思いますし、私達の演技をまず肯定してくださるんです。そのうえで、皆さんと会話を積み重ねてブラッシュアップする作業をしていきました。

隈本 もともと、決め込んで進めるのが性にあわないんですかね。そのやり方は、俳優の方に受け手に回られると成立しないのですが、今回の松岡さんと浅川さんは、積極的に前に出てきてくれてやりやすかったです。アーティストの意見を聞きながら作るMVのように、二人で話していただいたアイデアを作品に反映させていく。毎回アップデートを重ねるような感覚で進みましたね。

浅川 私はよく意見を聞いて持ち帰り熟考することが多いのですが、松岡さんは、事前にイメージを作り、現場に入るイメージがあったので、いい意味で真逆のタイプでした。なので、今回みなさんとお仕事をさせて頂きながら私自身も新しいお芝居の作り方を学ぶ機会にもなりました。

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━━それでは作品の内容について伺っていきたいと思います。「マネキンが人間になり、元々の持ち主のところへ訪れる」というストーリーは、どのようなきっかけで着想を得たのでしょうか?

隈本 学生時代の友人で、美容師の友達がいるんです。その友達の引っ越しを手伝ったときに、マネキンを捨てるタイミングになったんですね。でも、実際に捨てるとなると、人毛だし、人っぽくてなんだか捨てづらい。特に髪の毛が人感を出すというか……ゴミ袋に入れるのをすごくためらいました。そのことを思い出したときに、ふと思ったんです。もしマネキンが心を持っていたらどうだろうか? 理容師のところにそのマネキンが来たらどうだろうか? そんな思いつきから生まれました(笑)。

━━マネキンを演じるのは、浅川さんにとっても初めての経験だったと思いますが、いかがでしたか?

浅川 オリジナルの作品に出演させていただくことが久しぶりで。原作があるものとないものだと、役に対しての考え方も違うのですが、オリジナルで、しかも、もともとはマネキンの気持ちを想像しながら演じるというのは、すごく難しかったけど、新鮮でした。

━━マネキンというと無表情なイメージがありますが、撮影時に難しさはありましたか?

隈本 もともと僕の描いていたイメージと違うものもあったのですが、むしろそれが良かったですね。普段の生活で知らない女性からいきなり声かけられたら怖いじゃないですか。この作品にあるそんな怖さをどう払しょくするか悩んでいたのですが、撮影を進めるなかで、浅川さんが演じるのならそこは怖いままでもいいのかもしれない、と思うようになりました。怖さのなかにも、浅川さんご本人の根の明るさや優しさがどことなく見える気がして、むしろ魅力的なんじゃないかと。好きなのに相手から忘れられているとか、そんな人間的な感情の表現もすごくよかったですね。

浅川 撮影を進めるなかで、自分のなかで何段階か感情を作って、どうつなげていくか? を考えていました。最初の頃はどれだけ笑っていても、どれだけ真顔でもとにかく「なんか怖い」と思ってもらえるようなイメージで。ばすきあは感情の起伏も多くて、相手に少し恐怖心を与えてしまうところもあるのですが、表情、話し方、仕草などを一つずつエンディングに繋げられるように意識していました。

隈本 俳優陣が演じたその微妙な感情表現をきちんと出していこうとしていたら、実は尺が伸びてしまいました(笑)。もともとは短編尺だと、10分ぐらいをイメージしていたのですが、彼女の人間的な部分や純粋な気持ちなのに怖くなってしまう繊細な部分を省略することは(作品にとって)よくないと思ったんです。ただ、尺の長さを気にせず楽しめるように編集はしてあります。

浅川 今作は、短編の作品なので、特にセリフだけでいかにリアリティを持たせられるかを意識していました。セリフのシチュエーションを頭のなかで想像しながら演じてみたので、いままでにないような感覚ですごく難しさを感じましたが、自分なりに大事にしながら届けられたのではないかなと思っています。

隈本 ぱっと見、めちゃくちゃ怖いんだけど、「昔付き合ってたしね」「とはいえ、マネキンだしなぁ……」みたいな人間ドラマとして見てもらえたらいいな、と思ってます。

浅川 (ばすきあの行動は)愛情ゆえの行動で、ストーカーではなく、愛ゆえに盲目的で、二人にしか見えない絆が存在しているということを感じてもらえたらいいですね。

━━お二人の話を伺っていると、共通のイメージを持たれているように感じるのですが、どのように共有していったのですか?

隈本 具体的に話し合ってはいないのですが、僕が本読みの段階からバスキアの感情を延々と話していたので、松岡さんも浅川さんもきっとその感情を受け取ってくれたのだと思います。

浅川 監督から具体的なワードでヒントをいただくことができたので、自分とのイメージにずれがない状態でお芝居できたのではないかなと思います。

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━━お話を伺って作品を見ることがますます楽しみになってきました。手応えはいかがですか?

隈本 松岡さんと浅川さんの芝居で、怖さだけでなく、二人の愛情が感じられる作品になりましたので、完成した作品を見た皆様の声を聞きたいと思ってます。

浅川 ファーストカットをモニターで見たときに、画がめちゃくちゃ綺麗だったんです。超おしゃれ。おしゃれ以外の言葉が出てこない。一昔前の世界を切り取ったように、映像の色味とかもうすべてが本当に素敵で。

隈本 ロケ地であるこの理容室の魅力もあると思うのですが、そこにお二人が入ることで、より魅力が増しているのを撮影中から感じましたね。

━━作品の中にCMディレクターらしさやこだわりは出ていると思いますか?

隈本 先程お話したロケ地の魅力の伝え方などは、CMで培ってきたものだと思います。ただ、今回は、撮影中に浅川さんが画を褒めてくれたとき、カメラマンがにやけたりしてて(笑)。それでカメラマンやチームの気持ちもどんどんと乗ってきて、相乗効果でいい画が撮れたのかもしれません(笑)。

━━本作は日本だけではなく海外への配信も予定しているとのことですが、海外の人に向けてのアピールポイントは?

隈本 髪を切る行為は世界中どこにでもあるのですが、理容室って日本的な場所だなと思うんです。今回、松岡さんがすごく理容師の練習をしてくれて所作とかも完璧で。そうした空気のひとつひとつに、どこか日本的な風景を感じてもらえるのではないかと思っています。まあでも、もともと狙っていたわけではないですけどね(笑)。

浅川 黒髪ロングの女性って日本やアジア系を思い浮かばせると思うんですが。髪を触る丁寧さ、“おもてなし感”と言いますか、そういった細やかな部分がこの作品にはいくつもあると思います。

━━━次にお二人が組むとしたら、どんな作品を作ってみたいですか?

隈本 浅川さんのやわらかい笑顔を立てた世界観ですかね。今回は浅川さんのセクシーな部分に踏み込めなかったので、優しい女性のセクシーな部分だったりを撮りたいですね。

━━具体的にはどんな設定ですか?

隈本 天然でふわふわな感じ。なんだろうな……。保育園の先生だけど、子供が好きになっちゃうみたいな。園児と先生の恋? ですかね(笑)。

浅川 またご一緒させていただけるのであれば、アーティストの方のMVなどにぜひ出演させていただきたいと思います。

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━━それでは、最後にこの作品の見どころを教えてください。

隈本 浅川さんと松岡くん、年の近い二人の男女による恋人のような会話、その中で生じるすれ違いなど、面白く見れると思います。ぜひそこに注目してください。

浅川 画の美しさはもちろんですが、すごくミステリアスな作品で、愛情とか絆とか色々な要素が詰まった作品になっていると思います。愛するが故の行き過ぎた行動など、もしかしたら女性なら思わず共感してしまうような感情が散りばめられていると思います。自分の感情と照らし合わせながら見ていただくのも面白いんじゃないかなと思います。もちろん、第2話、第3話もぜひ見ていただければと思います。

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浅川のほか、“変わったお客さん”として登場する各話のゲストに、実力派俳優・眞島秀和や、人気お笑い芸⼈・三四郎の相⽥周⼆らが名を連ねている『素顔』。公式ホームページや各SNSでは写真や動画が随時更新されているほか、現在は予告編が公開中なので是非チェックを。

ドラデリ「素顔」

INFORMATION

ドラデリ『素顔』

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動画配信サイトVimeoにて8⽉21⽇(⾦)より配信がスタート!
出演:松岡広⼤
ゲスト:第1話 浅川梨奈/第2話 相⽥周⼆/第3話 眞島秀和
脚本・演出:後藤匠平、太⽥良、隈本遼平
企画/プロデュース:箱森菜々花
制作著作:AOI Pro.

公式HP