日比谷OKUROJIでは、6月20日(土)から7月13日(月)まで、没入型体験イベント<都市洞窟エソラゴト ver.1>が開催されている。本イベントは、文具ブランド「ぺんてる」を展開するアストラム株式会社と、プラス株式会社ステーショナリーカンパニー、セーラー万年筆、日本ノート株式会社の4社による共同プロジェクトだ。
飲食店や雑貨店が立ち並ぶ日比谷の高架下に、突如として現れる洞窟。都市空間の中にありながら、フランス・ラスコー洞窟の壁画や原始の満天の星空を再現したプロジェクションマッピングとプラネタリウムを体験できる。光、音、星空に包まれ、五感を研ぎ澄ましてゆったりと没入するひとときが過ごせる場所だ。今回は一般公開に先駆けて実施された、先行体験会の様子をレポートする。
ステーショナリーは創造力、絵空事を描く力を世の中に取り戻す

「都市洞窟エソラゴト ver.1」は、アストラム株式会社を含むプラスグループのステーショナリー4ブランド合同プロジェクト「人類にエソラゴトを」の一環として開催されている。
プラス ステーショナリー、ぺんてる、セーラー万年筆、日本ノートの4ブランドが「チームエソラゴト」として、2025年12月より始動したプロジェクト「人類にエソラゴトを」。本プロジェクトに込めた思いについて、アストラム株式会社の田島宏氏は次のように語る。

「今から約2万年前、文字を発明する以前から、人類は洞窟に色鮮やかな壁画を描き、夜空に輝く星を結んで人や動物の姿を見いだし、星座を生み出しました。人類の知性は、そうした絵空事を描くことから開花していったのではないかと考えています。
しかし現代は、与えられた大量の情報を追い、ネットで検索して良し悪しを判断したり、AIに判断してもらったりしています。人として根源的な喜び、存在意義とは果たして何なのでしょうか。
『チームエソラゴト』は、ステーショナリーは創造力、すなわち絵空事を生み出す道具だと信じています。そうした事業に携わる私たちだからこそ、絵空事を描く力を世の中に取り戻してもらうための一助となるようなプロジェクトを展開したいと考えています」

AI時代の今だからこそ、自ら手や頭を使い、「絵空事を描けるチカラ」こそが人類を前進させる種なのではないか。そう問いかけるプロジェクトだ。
同プロジェクトの一環として、2026年1月に関係者限定の招待制イベントとして「都市洞窟エソラゴト ver.0」を開催。約1,000人の来場者が訪れ、「都市の中に洞窟を作ったことに驚いた」「絵空事への可能性を感じた」といったコメントが寄せられたという。
一般公開となる今回は、ver.0からさらに進化し、より没入感のある空間となっている。ver.0に引き続き、プラネタリウムクリエイターの大平貴之氏が監修を務め、音楽はフランス出身の作曲家Eric Aron氏が担当。さらに、壁画は先史学博士・五十嵐ジャンヌ氏の学術協力のもと作り上げられた。

壁画から星空へーー“感覚”を研ぎ澄ます40分
会場に足を踏み入れると現れるのは、木造の曲面壁。暗闇の中に心地よい木の香りが漂い、それだけでもリラックスした気持ちになる。

奥へ進むと、岩のような質感の壁に囲まれた空間が現れる。パチパチという焚き火のような音に耳を澄ませていると、大平氏によるナレーションが流れ始める。洞窟の中にいるように音が響く空間に、都心の高架下にいることを思わず忘れてしまいそうになる。

壁の一部がスポットライトのように照らされ、徐々に壁画が浮かび上がってくる。この洞窟は、フランス西南部のラスコー洞窟をモチーフに作られている。ラスコー洞窟の壁画は、旧石器時代にクロマニョン人によって描かれたとされている。馬や牛など、当時の人々にとって身近だった動物が描かれているが、これらの壁画は実は夜空の星座を表しているとも言われている。
先史学博士の五十嵐氏は、この洞窟壁画の体験について次のように話す。
「美術館や本の中では、『洞窟壁画』といっても見られるのは四角い紙やパネルに印刷されたものだけです。けれど、ここでは洞窟のような真っ暗な空間で壁画を味わうことができます。日本でこんなことができるのか、と驚きました。近い距離で見られますし、没入感もあるので、ぜひ皆さんに楽しんでいただきたいです」

さらに進み、白いカーテンをくぐると、波の音が聞こえ、満天の星空が現れる。監修を務めた大平氏は、このカーテンをくぐる瞬間が、このプログラムの中でも特に気に入っているポイントだという。確かに、まるでトンネルを抜けたときのように、暗闇から一気に星空の世界へと飛び込んでいける。
天井を見上げると、かなり広範囲にわたって星空が映し出され、ゆっくりと星たちが動いているのがわかる。一般的なプラネタリウムは丸い天井に星空を映すが、ここは洞窟の形状を生かしたいびつな形の内装となっている。いびつな天井にプロジェクションを施すため、細部までこだわって調整し、ver.0と比較してもより広範囲にわたって星空が映し出されるようになった。

大平氏は、これまでにも数々のプラネタリウムを手がけてきたが、今回の取り組みについてこう語る。
「星空は、私たち人類に比べると、はるかに長いスケールで変化しています。2万年前と現在の私たちに見える星空は、ほとんど同じものなんです。つまり、ここで星空を眺めることは、人類が最初の記録を残したころと、ほぼ同じ体験をしていることになります。情報にあふれた今だからこそ、かつての人類の体験に立ち返り、そこから将来を考える。そんな体験を作れたらと思って、今回のプロジェクトに参加しました」

プラネタリウムの奥には、座って鑑賞できるソファエリアもある。大きなクッションに体を沈めて星空を眺めていると、大平氏の言うように、自然と過去や未来へ思いを馳せたくなってくる。
そして、星空の下では美しい音楽が流れ、より深い没入感を演出する。音楽を担当したEric Aron氏は、リラクゼーションを意識して制作したと語る。
「リラックスして、星空に没入できるような時間を演出したいと考えました。前回よりも星空を鑑賞できる時間も長くなったので、瞑想状態のように感覚を高めてくれる音楽を目指しました。
この空間を通して、人間の創造性と宇宙のつながりを感じていただけたらいいなと思います。テクノロジーがあふれている時代ですが、創造性こそが人間の特徴であることを忘れてはいけません」

プログラムの時間は40分程度。普段の生活の中で、40分間も空を眺めることはあるだろうか。日常では、ほとんど空を見ない人も多いだろう。優しい音楽と、ゆったりと流れる星空を見ていると、頭がすっきりとし、落ち着いた気持ちになってくる。
洞窟内での鑑賞を終えたあとには、蛍光ペンで壁に絵や文字を描けるコーナーもある。日常のなかで、壁に文字や絵を描く機会は多くない。壁画と星空によって刺激された創造力を、すぐに発揮できるチャンスだ。

社会人も学生も、忙しい日々を過ごしていると、つい自分の感覚を忘れがちになる。目の前にあるものをしっかり見られなくなったり、身の回りの音や声に耳を澄ませなくなったりする。そして、自分が何を感じているのか、徐々にわからなくなっていく。
そんなときにこそ、立ち止まってこの洞窟に足を運んでみてほしい。壁画や星空をぼんやりと見つめているうちに、自分の感覚が生き返ってくるのがわかるはずだ。
アストラム株式会社の田島氏は、このプログラムを通じて、人々が再び五感を意識し、行動を変えるきっかけになればと語る。
「それぞれの人が五感を開いて、感じたことを信じて行動することで、もっと豊かな世の中になると思っています。AIの活用が進み、情報が増えた世界では、合理性が追求される一方で、自分の感覚を仕事や生活に活かす場面が減ってしまっています。そんななかでも、アナログで直感的に使えるステーショナリーを作る私たちだからこそ、このプログラムを通じて、皆さんが感覚を取り戻すきっかけを作れたらと思います」

Text by 白鳥菜都
Photo by Akira Arai (Nacasa & Partners Inc. ),Official
INFORMATION

都市洞窟エソラゴト ver.1
開催期間:2026 年 6 月 20 日(土)~7 月 13 日(月)
開催時間:10:00~18:30(1 日に 11 回実施。各回所要時間 40 分)
開催場所:日比谷 OKUROJI 〒100-0011 東京都千代田区内幸町1丁目7−1
アクセス:https://www.jrtk.jp/hibiya-okuroji/access/
日比谷駅・銀座駅・内幸町駅・有楽町駅・新橋駅の各駅から徒歩 6 分
当日の受付・集合場所:日比谷 OKUROJI H05 区画
チームエソラゴト
プラスステーショナリー、ぺんてる、セーラー万年筆、日本ノートの4ブランドか組織するチームエソラゴト、「絵空事を描けるチカラこそ、人類を前進させる種でないか?」と世の中に問いかける「人類にエソラゴトを。」プロジェクトを推進しています。私たちは、文房具は想像力を生み出す道具だと信じています。