輪の中に入り、自身も盆踊りを楽しまれていた〈プロジェクトFUKUSHIMA!〉代表/ディレクターの山岸清之進さんに、<フェスティバルFUKUSHIMA!>に込められた想いについて、お話を伺いました。
Interview:山岸清之進
ーー<プロジェクトFUKUSHIMA!>はどのようにして始まったのですか?
3.11に震災があって、そして原発の事故があって、5月には大友良英さんや遠藤ミチロウさんなどが中心となって「福島でフェスティバルをやろう!」と動き出しました。会場の放射線量は当初から低かったんですが、当時はまだ情報が錯綜し、世の中が混乱していました。そこで考えたのが今回の会場にも敷いたこの「大風呂敷」だったんです。できるだけ安心してフェスを楽しんでもらえるよう、全国から送ってもらった風呂敷をみんなで縫い合わせ、放射性物質が拡散しないように会場の芝生に敷いたんです。そうしたらそれが図らずも作品としても素晴らしいものになって、フェスのビジュアルアイコンにもなっていったんです。
ーー今日のステージの装飾にも使われていますが、一瞬でお祭り気分になれますね。
ネガティブな地名になってしまった「FUKUSHIMA」をいかにポジティブにしていけるか。それには政治や経済、科学の力も必要だけど、やっぱり文化の力も必要だよねというのがフェスのテーマなんですが、それってものすごい大きなテーマですよね。アーティストができることなんてたかが知れている。まさに「大風呂敷」を広げてしまったわけです(笑)。でもだからこそ、自分たちで広げたその大風呂敷に似合うフェスにしようと頑張り続けることができました。
ーー装飾の大風呂敷にはそんな意味もあったんですね! そこから、<F/T>に参加するようになった経緯は?
2013年、3回目の開催時にロックシンガーの遠藤ミチロウさんが「盆踊りしようぜ」と言い出して、“ええじゃないか音頭”を作ってみんなで踊ったんです。そしたら盆踊りがこのフェスにフィットして、「これでいいのかもしれない」という感覚をみんなが持てたんです。福島をめぐる状況が刻々と変わるなかでフェスの内容も毎年変えていたんですが、盆踊りだけは「来年もこれをやろう」と思えました。
それから毎年夏に盆踊りをするなかで、<あいちトリエンナーレ>などから声がかかるようになり、昨年<F/T>に声をかけていただいきました。今回のように福島以外の土地で開催するときは、「福島のことを忘れないでほしい」というより「福島で生まれた新しい文化を伝えたい」という思いで踊っています。
今年の<F/T>のテーマは「融解する境界」。アートの力で異なる価値観や国籍、世代などの壁をくぐり抜け、「境界」を超えた対話を生み出そうというのがその主旨とのことですが、盆踊りはまさに出演者と観客、そして参加者同士の「境界」を取り払い人と人を繋げる、<F/T>のオープニングにぴったりのコンテンツでした。
<F/T>は池袋の東京芸術劇場を中心に12月6日(日)まで開催中! 文化の秋、芸術の秋を満喫しちゃいましょう!
EVENT INFORMATION
フェスティバル/トーキョー15
2015.10.31(土)〜2015.12.06(日)
東京芸術劇場、あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)、にしすがも創造舎、アサヒ・アートスクエア、彩の国さいたま芸術劇場、池袋西口公園、豊島区旧第十中学校、ほか
主催プログラム:12演目・3企画、連携プログラム:18演目