人の連なり、行進のパターンが描きだすのは、
民衆の力と対話、そして抵抗の権利。
共同体とは何か? 民衆が集う自由とは?
――Bruce Davenport Jr

ューヨークのダウンタウン・アートシーンに深く関わり1981年、MOMA P.S.1にて開催され、現代にまで語り継がれる<New York/New Wave>展キュレーターを務めたDiego Cortez(ディエゴ・コルテス)。今現在、彼が最も注目するアーティストBruce Davenport Jr(ブルース・ダベンポート・ジュニア)の日本初個展<Good Stuff To Look At>が9月1日(土)より原宿VACANTにて開催される。

ルイジアナ州ニューオリンズに生まれセルフトート・アーティストとして現在も故郷で制作を続けるブルース・ダベンポート・ジュニアは、キュレーターディエゴ・コルテスとの出会いを経て、近年アメリカを中心としたアートシーンで大きな注目を集めてきた新進気鋭のアーティスト。2010年~2012年の間、大規模展<ニューオリンズ・ビエンナーレ Prospects 1/1.5/2>に参加し、BENETTONを含め世界中の数多くのコレクターに所蔵されるなど、精力的に活動を続けている。今回の行われる展覧会では、ブルース・ダベンポート・ジュニアによる本展のために制作された新作の大判ドローイング10点を中心に紹介する日本で初めての企画展となる。

ブルース・ダベンポート・ジュニアの作品は、ニューオリンズに根付くマーチング・バンドの歴史と文化がコミュニティーの団結を支えて来た背景をドローイングを通して紹介している。写真を元にシャープペンとカラーマーカーを用いる事で、綿密かつ色彩豊かにマーチング・バンドの躍動と熱気を、グラフィカルな模様として画用紙上に蘇らせるその世界観は非常に独創的で美しい。運動性そのものの美を描こうとしたフューチャリストやシュプレマティストの様に、ブルース・ダベンポート・ジュニアの作品の核となるのは“フロー(=流動)”のアイディア。都市の地形により演出される人々の歩行の軌跡は、ストリートそのものの描写であり“政治”、“交通”、“感情”、“階級”などストリートに存在するあらゆるフローを取り込んだドローイングはさながら“都市の縮図”を眺めているかの様でもあり、浮世絵にもみられる俯瞰絵図のようにも楽しめる。

かのバスキアを始め、これまで永らくアートの世界で多くの作家達を見守ってきたディエゴ・コルテスを持ってして、

『バスキアがストリートとスタジオを、ウォーホールが写真と絵画を独自の方法で融合させた様に、ダベンポート・ジュニアの作品はフォーク・アートやアウトサイダー・アートの境界を飛び越えてコンテンポラリー・アートの中で新たな文脈を切り開いていく絶対的な力強さがあります。その根底にある理念とは、牧師としてコミュニティーが抱える問題に奔走したダベンポート・ジュニアの父の様に、2005年のハリケーン・カトリーナで被災した地元コミュニティーをアートの力で建て直し支援する事、かつてヨーゼフ・ボイスが社会におけるアートの役割を説いた様に、ダベンポート・ジュニアにとってのアートとは人々を繋ぐ活動なのです。』

とまで言わしめるブルース・ダベンポート・ジュニアの才能を目の当たりに出来る貴重なこの日本初個展<Good Stuff To Look At>は、まさに百聞は一見に如かずの魅力で溢れている。観る者を引き込む絶対的な輝きを放つその作品群はいよいよ今週末より原宿Vacantに登場となる。

Event Information

Good Stuff To Look At/Bruce Davenport Jr Exhibition
2012.09.01(土)~2012.09.15(土)@VACANT
OPEN 12:00/CLOSE 20:00(月定休)
DOOR ¥200
Planning:Diego Cortez/NO IDEA