たくさんの金魚が美しい光の中を泳ぎ回るアートアクアリウム。その世界を作り上げた木村英智さんが、京都・元離宮二条城においてクラシックカーのコンクール、コンコルソ・デレガンツァ京都2018を開催する。さらには東京、日本橋において『水戯庵』という、彼流の言い方では“日本伝統文化のライブハウス”をオープンした。エンターテイメントでも、今までにはない世界を作り上げる木村さん。そんな彼の根底には何があるのか。
28歳でセミリタイア
「僕は28歳の時にセミリタイアして世界中を放浪していたんです」。
アートアクアリウムを始めたきっかけを尋ねると木村さんはそう切り出した。それまでは熱帯魚などの観賞魚の貿易業を営んでおり、忙しい日々を送っていた。そんなある秋の日、学生時代の友人たちと飲む機会があった。因みに木村さんは6月生まれ、友人たちは10月前後だという。まもなく30歳を迎えるという話題から、ふと木村さんは気づいた。僕の20代の夏はあと1回、彼らは10月生まれだからあと2回もある!! と。
それまで遊びの誘いも断り仕事に追われる日々を送ってきたが、「30歳になり大人になってしまうことがすごく怖くなったんです」。木村さんは「大人になりたくない症候群」と自らも分析するように、とにかく“大人”と呼ばれることを恐れていた。その理由は簡単だ。「10代なのに良く出来たね、20代なのに頑張ったね、でも30代以降そういわれることはなくなっていくでしょう。僕はいつまでもそういわれたいんです」という。そんな恐怖感から、順調だった事業を縮小し、世界中を旅してまわったのだ。
放浪の旅で出会った衝撃の光景、そしてアートアクアリウムアーティストへの転身…
Text:内田俊一(Shunichi Uchida)
Photos:大石隼人