昨今のコロナ禍中、おうちにいる時間が増えたという方も多いことだろう。
これほどまで多く、そして唐突におうちにいる時間が増えてしまうと、余暇をどう過ごしたらいいのかわからない。なかには、家でヒマを持て余してしまっている方もいらっしゃるはずだ。
かくいうQetic編集部も、おうちで何をしたらいいんだろう、なんて思いにふけりながらNetflixで配信中の映画やドラマなんかを観ていたところ、こんな考えがふと頭をよぎった。「アーティストの人たちってこの作品を観て、どんなことを考えているんだろう?」
ということで、Qeticではこの度、Netflixで現在配信中の映画やドラマ、ドキュメンタリーなどの映像作品の中から、アーティストの方々にひとつの作品を選んでいただき、その作品に対してどんな思いや感情を抱いているのかを赤裸々に語っていただいた。彼らの意見を聞いた上で作品を観れば、きっと思いを共有できるはず!
第32弾となる今回は、大人なギターレス四重奏(カルテット)を奏でる4人組ペンギンラッシュ・望世(Vo.)、真結(Key.)が語る『セックス・エデュケーション』『ミッドナイトゴスペル』。
ペンギンラッシュ 望世(Vo.) – 『セックス・エデュケーション』
タイトルを見て懸念される人は少なからずいるのかもしれない。
“SEX EDUCATION”、“性教育”だ。
タイトルの通り性にまつわることを中心に話が展開していくが、それらを全面的に押し出す内容では無い。恋や友情、家族関係やLGBTQ+、アイデンティティに関わる様々な環境に置かれている人物たちが登場する。今の10代や私と同世代である20代が抱える悩みや日常がリアルに描かれており、通ずることも多くあると思う。
だからと言って10代、20代に特に観てもらいたい訳ではなく、私はぜひ40代、50代、というか全世代にぜひ観ていただきたいと思う。
ドラマの話からは少し逸れるが、私は大学でノンフィクション作品を制作するゼミを専攻し約2年間、卒業制作に向けて若年者の妊娠について調査・取材を行っていた。
日本は性教育において圧倒的に後進国であることをご存知だろうか。取材をしていく中で若年者の正しい性知識の乏しさを強く感じた。私自身、思い返してみると学校で十分な性教育は受けていなかったと思う。デジタルネイティブ世代である私たちは物心ついた頃から情報を得る方法がたくさんあった。その中には間違った情報も山程ある。また、若者と呼ばれる私たち世代と4,50代の親世代との性に関わることへの認識が大きく離れていることも強く感じた。
日本では性について話すことがタブーのようにされている。性について正しい知識を得られないまま、家族や友人、パートナーと話すこともできず、インターネットに溢れかえっている間違った情報を信じて試してしまう人も多いのではないだろうか。元来日本では性に関するタブーの発想はなかった。詳細に書きたいが、途轍もない文量になってしまうため、気になった方は性に関わる日本史をぜひ調べていただきたい。
この作品では現代の日本でタブーのようにされていることが非常にカジュアルに描かれている。演出や音楽の使い方も凄く良い。カジュアルなのだ。ここにエロはないし、教育と名付けられているが堅苦しさや重さも感じない。あくまでドラマなので性についての知識がここで全て得られる訳ではないが、この作品を通して性についてカジュアルに考えてもらえるきっかけになればと思う。
この作品に年齢制限はない。どの年代にでも観ることができるようにされているのには制作者の強い意志さえ感じる。だからこそ全世代に観て欲しいのだ。(性的描写があるのである程度の年齢は、、、かもですが)
私が文章にすると凄く硬くなってしまった気がする、、、がしつこいけれど作品はとってもカジュアルだ。兎にも角にも、このドラマを全世代の方に観てもらいたいと思っている。
ここまで長々と書いてきましたけど、シンプルに話が面白いんですよ。ここまで読んでくれたあなたはとりあえずシーズン1の第1話、ポチッと押してみてください。
『セックス・エデュケーション』予告編 – Netflix
ペンギンラッシュ 真結(Key.) – 『ミッドナイトゴスペル』
『アドベンチャー・タイム』というコメディアニメの原作者であるアメリカのアニメーター、ペンデルトン・ウォードとコメディアンのダンカン・トラッセルによって作られたNETFLIXオリジナル作品です。
アドベンチャー・タイムの大ファンであることからこの作品を見始め衝撃を受けました。
作品の主人公は、宇宙のとある星に住むポッドキャストの宇宙版『スペースキャスター』の配信者クランシー。
このクランシーがシミュレーターと呼ばれる宇宙空間を移動できる乗り物で平行世界の様々な惑星を訪れ現地の人々にインタビューをしていきます。
インタビュー内容はこの作品の共同制作者ダンカンのポッドキャスト番組で行われた実際のインタビューの音声をそのまま使用していて、ゲスト(すべて実在人物)も中毒治療の専門医師や作家、現役の魔術師、ダンカンの母親など実に様々。
彼らとダンカンの、リアルな対話と哲学をアニメーションという世界で観て聴くことができるドキュメンタリー的な作品です。
まずは第一話を観てみてください。
はじめは世界が乖離しているように感じ少し違和感を覚えるとおもいますが、何話か見ていくうちに徐々に受け取る感覚が変わってきます。
また、ダークコメディを愛するペンデルトン・ウォードが描く“可愛いキャラクターやポップなアニメーションの中に潜む狂気や毒”の世界観もだんだんと虜になっていきます。アニメーションで表現したことでインタビュー内容もより深く拡張できているのではないかなと思います。
様々な隠喩も発見でき、そこも面白いポイントです。
“綺麗ごとだけで終わらない”・“ネガティブを肯定する考え”・“善や悪を決定しない”など、真理を追究する作品です。
この作品はNETFLIXという、内容に対する制限がほとんどない表現ができる環境があったからこそ作れたのではないかなと思います。この素晴らしい作品を実現してくれたNETFLIXさんに感謝です。
みなさんにもシリーズ全8話を通してアニメーションの意味や、作品が伝えたい哲学的なテーマ(生と死、実在、自我、瞑想など)など考えて愉しんでほしいです。
観た人に新しい観点と癒しを与えてくれる作品です。
是非ご覧ください。
『ミッドナイト・ゴスペル』予告編 – Netflix
▼合わせて読む
Vol.29 児玉奈央 – 『ニーナ・シモン~魂の歌』
Vol.30 コレサワ – 『愛の不時着』
Vol.31 Akari Dritschler(FAITH) – 『13の理由』
INFORMATION
ペンギンラッシュ
大人なギターレス四重奏(カルテット)を奏でる4人組。
名古屋出身。高校の同級生であったVo.Gt.望世(みよ)、Key.真結(まゆ)を中心に結成。
2017年に2人をサポートしていたBa浩太郎(こうたろう)とDr.Nariken(なりけん)が正式加入し現4人体勢に。
2016年に1stシングル『une』をリリース。その後もコンスタントに作品をリリースし続け、昨年6月に2ndアルバム『七情舞』を、2020年9月にビクタースピードスターレコーズからのメジャーデビューアルバム『皆空色』をリリース。圧倒的なスキルと予測不可能な曲展開、表情豊かな鍵盤の音色とハスキーな女声ボーカルで構成された唯一無二の音楽を発表し続けている。