北出栞による『「世界の終わり」を紡ぐあなたへ デジタルテクノロジーと「切なさ」の編集術』が4月23日(火)に太田出版より発売される。

〈セカイ系〉より2000年代から2020年代=現在までの道のりをたどり直す

〈セカイ系〉は「社会」を描かないものとして長らく揶揄の対象となってきた。しかし、その誕生が2000年代初頭であったことを思い返すと、インターネットの普及によって「世界」の意味するところにドラスティックな変化が起きたことを鋭敏に捉えた想像力でもあったのではないか。「社会」を冠するデジタルテクノロジーであるソーシャルメディアが人々に分断やストレスをもたらしている現在、カタカナの「セカイ」という表記が再び存在感を増している。〈セカイ系〉と呼ばれる作品やそれに関する言説の再解釈を通じて、デジタルテクノロジーを通じた「世界」との向き合い方を再検討できるはずだ。
 
本書は上記のような問題意識に基づき、デジタルテクノロジーと主にアニメ・ゲーム・音楽作品を中心に、2000年代から2020年代=現在までの道のりをたどり直す。1章では導入として、〈セカイ系〉について過去の議論を振り返りつつ、デジタルテクノロジーと「作品」との関係という観点から再整理する。2章・3章・4章では、2020年代に入ってなおピークを更新し続けている庵野秀明、新海誠、麻枝准の3人に光を当て、デジタルテクノロジーとともに「作る」ことについて、各作品に込められたテーマ性についても掘り下げつつ考えていく。5章・6章・7章では、動画投稿プラットフォーム/ソーシャルメディアの登場以降、相対的に「作家」の存在感が小さくなっている現実を受け止めつつ、消費するだけでなく「作る」立場に立つための思考とは何か検討する。8章ではエピローグとして、デジタルテクノロジーとともに「作る」ことの本質とは何かに加え、それまでの議論を通して浮かび上がってきたスマートフォン/ソーシャルメディア時代における「切なさ」のありかという主題を統合して論じる。
 
自費出版による〈セカイ系〉評論アンソロジー『ferne』が話題を呼んだ編集者・ライターの北出栞が、アニメ・ゲーム・音楽作品などに見られるイメージを横断しながら、「セカイ」という表記が捉える現代のリアリティの正体を探る一冊。
 
◆主な目次
1章 セカイは今、どこにあるのか
2章 デジタルな実存の再構築(リビルド)
3章 ミュージックビデオ的想像力
4章 タッチパネル上で生まれる「切なさ」
5章 「ポスト・ボカロ」とは何か
6章 浮遊する「天使」のサンプリング
7章 タイムラインの中で「かたち」を捉える
8章 セカイに向けて響く祈りの歌
〈セカイ系〉論の新境地──北出栞『「世界の終わり」を紡ぐあなたへ』刊行|TikTok〜ソーシャルゲーム〜ミュージックビデオ〜アニメを横断する全8章 artculture240313-siori-kitade2
北出栞(きたで・しおり)

〈セカイ系〉論の新境地──北出栞『「世界の終わり」を紡ぐあなたへ』刊行|TikTok〜ソーシャルゲーム〜ミュージックビデオ〜アニメを横断する全8章 artculture240313-siori-kitade1

INFORMATION

「世界の終わり」を紡ぐあなたへ
デジタルテクノロジーと「切なさ」の編集術

著:北出栞

装画:米澤柊

予価:2,530円(本体2,300円+税)

発売:2024年4月23日

判型:四六判並製

ページ数:230ページ

SBN:978-4-7783-1926-7

詳細はこちら北出栞