ソーシャルデザインをテーマにした国内最大級の都市フェスティバル<SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2020>(以下、SIW)が、11月7日から渋谷にてスタートした。15日までの9日間で30以上のカンファレンスが実施され、プログラムの会場観覧とオンライン配信が、すべて無料で実施されることになっている。

フェス全体のグランドテーマは「HOW -今を、これからを、どう生きるか- 」

新型コロナウイルスの感染拡大で、生活様式も、価値観も大きく変わりつつある2020年。今年で3回目を迎えるSIWだが、「そのひらめきが、好奇心が、次の未来を刺激する」(2018年)、「NEW RULES 新しい価値観が未来をつくる」(2019年)と、これまでテーマに掲げてきた“未来”と対照的に、“”という言葉が用いられているのがとても印象的だ。

そもそも、渋谷エリアのオフライン会場オンライン配信を並行しての開催方式自体が、新たな都市型イベントのあり方を模索するという意味でも、「HOW」というテーマと連動している。

つまり、いろんなことが、あらかじめ計画され用意された“プラン”や“ビジョン”ではなく、起こってしまった予定外の事態への“対応”として決まり、否応なしに物事が進んでいるのが今の状況ということだ。だからこそ、今まさに、これからの社会を作っていくための“イメージ”が必要になる。

そして、その舞台となるのが渋谷の街であるということにも必然性がある。SIWは渋谷区が共催、一般財団法人渋谷区観光協会一般社団法人渋谷未来デザインが後援のイベント。大手企業もパートナーとなっている。そういったイベントでありながら、ビジネスやマーケティングだけでなく、アートやカルチャーについて鋭敏なアンテナを張っているところにも特徴がある。

ちなみに僕も先日に行われた「2050 SHIBUYA ミライノオンガク」というトークセッションに、藤井丈司さん、渋谷慶一郎さん、ゴッドスコーピオンさん、斎藤アリーナさんと共に登壇させていただいた。テーマは「2050年の音楽」。トークの中では「30年後の渋谷に流れているであろう未来の音楽」をテーマにU-25のクリエイターから応募いただいた作品の公評も行ったのだが、どれも刺激的だった。

SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA「2050 SHIBUYA ミライノオンガク」アーカイヴ

今年のプログラムにも興味深いラインナップが多い。
いくつかピックアップして紹介したいと思う。

物理空間を超えて乱反射する都市風景

宇川直宏、☆Taku Takahashiらも参加する渋谷の都市フェス<SIW 2020>の魅力とは?柴那典がピックアップ、注目カンファレンス5選も ac201110_siw2020_1-1440x960

SPEAKER:宇川直宏/川田十夢/齋藤精一
11月11日(水) 14:00-15:00

DOMMUNEを主宰する宇川直宏さんと、AR三兄弟の長男として活動する“通りすがりの天才”川田十夢さんのトークセッション。モデレーターはパノラマティクス(旧:ライゾマティクス・アーキテクチャー) 主宰の齋藤精一さん。宇川さんも川田さんもテクノロジーを用いてメディアを自在に拡張してきた経歴の持ち主で、しかも、カルチャーに対しての深い洞察と愛情がその原動力になっている。おそらくARやVRを用いた“都市の拡張”がキーになるのだろうけれど、それだけでなく2人のキャラクターがどう噛み合うのかとても楽しみ。

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進化する社会システム

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SPEAKER:中村利江/伊東正明/長田新子
11月11日(水) 18:30-19:30

中村利江さんは日本発のフードデリバリーサービス「出前館」の会長。伊東正明さんは「吉野家」の常務取締役。つまりモチーフはフードカルチャーということになるんだけれど、そこに「社会システム」というテーマをかけ合わせることでとても興味深い内容になっている。長らく日本の外食文化を開拓してきた牛丼屋と、コロナ禍で一気に急拡大しているフードデリバリー。生活に密着している身近な分野だからこその話が聞けそうな気がする。中村利江さんの女性起業家としてのバイタリティにも注目したい。

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音楽文化の未来図

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SPEAKER:浅川真次/田村優/☆Taku Takahashi
11月12日(木) 15:30-16:30

インターネットラジオ局「block.fm」を主宰し、今年4月にいち早くオンラインの音楽フェスティバル「BLOCK.FESTIVAL」を立ち上げたm-floの☆Taku Takahashiさんは、コロナ禍での音楽文化の変容を最前線で見ているアーティストの一人。m-floの育ての親でもあり、日本のクラブカルチャーを牽引してきた「アーティマージュ」の浅川真次さん、kz(livetune)やryo(supercell)などネット発の新たな才能をいち早く世に送り出した「インクストゥエンター」の田村優さんと、三者が語る音楽文化のこの先はとても興味深い。

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音楽×数学×自然
~境界をこえた掛け算創造の時代〜

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SPEAKER:中島さち子/北村久美子
11月13日(金) 15:30-16:30

中島さち子さんは日本人女性唯一の数学オリンピック金メダリストであり、ジャズピアニストでもあるという多才な経歴の持ち主。現在では「STEAM教育」の第一人者としても活動している。「STEAM教育」とは、Science(科学)、Technology(テクノロジー)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の「STEM」にArts(芸術)の頭文字を加えた、知識詰め込みではなく新しい価値を生み出していく教育の象徴。一方、北村久美子さんはSXSWのJAPAN FACTORY (JAPAN DAY/JAPAN HOUSE)の共同創設者。海外経験も豊富な二人による「ロジック×カルチャー」の話は楽しみ。

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価値の感じ方

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SPEAKER:松園詩織/山峰潤也
11月12日(木) 12:30-13:30

松園詩織さんはアート作品を複数人で共同保有できる会員権プラットフォーム「ANDART」の代表取締役社長CEO。山峰潤也さんは東京都写真美術館、金沢21世紀美術館、水戸芸術館を経て現在は「東京アートアクセラレーション」の共同代表をつとめるキュレーター。アートに対して、美術館などで一般的な“鑑賞”でも富裕層に限定される“所有”でもなく1万円の少額投資から“共有”という新たな関わり方を提案するのがANDART。一方で、山峰さんは、資本や技術がパワーを持つ現代に対して社会批評的な観点も踏まえつつ様々なメディアアート作品などの展示やプロジェクトを仕掛けてきたキュレーター。二人の語る「価値」がどう結びつくのかは、アートの分野を超えた示唆を生みそう。

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他にも興味深いセッションが沢山ある。スポーツやeスポーツについての話題もそうだし、平井卓也デジタル担当大臣や、東京都のデジタル戦略を担当している宮坂学副知事など、DXを推進している行政のトップが登壇するのも大きなトピックだ。そして、多くのコンテンツがオンラインで無料公開され、アーカイブも残るということもポイントだろう。

沢山のアイディアに触れることのできる9日間になりそうだ。

Text by 柴那典

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SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2020

日程:2020年11月7日(土)〜11月15日(日)
会場:渋谷スクランブルスクエア スクランブルホール(QWS)/渋谷 PARCO/渋谷キャスト/渋谷ストリーム/ラフアウト/渋谷区立宮下公園/ヨシモト∞ホール/バーチャル渋谷(予定)など
入場料:無料 (一部プログラムは有料)
プロデューサー:金山 淳吾(渋谷区観光協会代表理事) /長田 新子(渋谷未来デザイン理事)
主催:SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 実行委員会
共催:渋谷区
特別協賛:公益財団法人日本財団
ゴールドパートナー:株式会社 KDDI/東急株式会社/東急不動産株式会社/全国労働者共済生活協同組合連合会/株式会社ミクシィ
シルバーパートナー:株式会社アカツキ/大東建託株式会社/株式会社シブヤテレビジョン/スズキ株式会社/DAZN Japan Investment 株式会社/パーソルキャリア株式会社/株式会社みずほ銀行/東急建設株式会社/フォルダ株式会社/Nomaps/イベントレジスト株式会社/Breath Bless/株式会社 IMAGICA GROUP/TGC teen/マースジャパンリミテッド/大日本印刷株式会社/シュア・ジャパン株式会社
特別協力:株式会社 AOI Pro./株式会社ウェザーマップ
株式会社エードット/株式会社ブーマー/Life is Style/LIFE TUNING DAYS
後援:一般財団法人渋谷区観光協会 /一般社団法人渋谷未来デザイン
問合せ:siw@fds.or.jp

※新型コロナウイルス感染症拡大の状況により、各プログラムの開催場所・手法に関しては随時変更となる可能性があります。

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