ところで、“Dwelling”ってどういう意味? どこか懐かしい空間がそこに。
『The Darkness is Rising』2014年
作品はメルヘンチックでもあり、どこか幻想的な雰囲気をたたえています。
今回のテーマの“Dwelling”は、日本語にすると“すみか”。“House”の方が馴染みのある言葉なので、最初は意味が解らず『?』となってしまいました。
ですが、作品を観て納得。会場内に設置された物語の“すみか”のなかに広がるのは、どこか懐かしく気持ちをほっとさせてくれる空間でした。大きな樫の木の上に建てられたツリーハウスやブランコ、世界中の深海を旅する潜水艦。暗闇を照らし出す灯台の輝き。夜なべ作業をするためにともされているあかり。
あらすじを読んでいた時にはぼんやりとしかイメージできなかった世界観が今にも動きだし、物語の登場人物たちの息遣いが今にも聞こえてきそうです。
それにしても細工のとても細かいこと。ジオラマのように立体感をもっている作品なので、少し立ち位置を変えて目線に変化をつけてみると細かい発見がたくさんあります。正面から見えないところに細工がしてあったり、物語のキーワードとなるような単語も作品のあちこちに登場していたり、見るたびに新しい発見がありそうです。
会場内にある映像ブース。こちらはちょっと大きいおうち。
スーさんがイギリスで受けたインタビューの様子や、過去の作品を使って撮影した映像を見ることが出来ます。ちょうどこの時はシンデレラを流していたのですが、おとぎ話のキラキラとした空気感を損なわず、キャラクターが本を飛び出して動き回る姿、本とアニメと映画の良いトコどり。画面に吸い込まれるように見入ってしまいました。これは必見です。
スマホや電子書籍、果ては街中のプロジェクターなど、私たちの生活にはあらゆるところにデジタルな文字があふれています。そこからもたらされる情報はとても刺激的ではありますが、いつも時間に急かされていて考える前にどんどん画面が変わってしまうせっかちな存在でもあります。
ひとつの物語を細部まで読み込み、切る、破くといった行為を経て、読むための本から見るための本へと生まれ変わった古本。長い時間を生きてきた古本は、目まぐるしい今だからこそゆっくりと時間を楽しむことや空想することの楽しさを伝えたいと願っているのかもれません。
※英語のページです。過去の作品や写真集などを見ることができます。
2015.04.29 青木美佳
スー・ブラックウェル「Dwelling-すみか-」元記事はこちら!
記事提供元:イベニア
日本・世界の“面白い”イベント”情報を探し出し、紹介することを目的としているWebサイト。規模の大小に関わらず、斬新な企画のイベント、思わず人におススメしたくなるイベント、とにかく変なイベントの数々を情報提供しています。
EVENT INFORMATION
スー・ブラックウェル「Dwelling -すみか-」
2015.04.29(水)- 06.14(日)会期中無休
OPEN 11:00/CLOSE 20:00
ポーラ ミュージアム アネックス
入場料:無料
参加アーティスト:スー・ブラックウェル