文筆家・つやちゃんによる著書『スピード・バイブス・パンチライン ラップと漫才、勝つためのしゃべり論』がアルテスパブリッシングより刊行。7月26日(金)に発売される予定だ。
漫才とラップに潜む「意味と音のせめぎ合い」を探求
2020年代の国内のエンターテインメントを牽引する「漫才」と「ラップ」。ともに演者が丸腰で舞台に立ち、自らの言葉と身体だけを用いて、瞬間的かつドラマチック、そして端的に観客の心を掴む口語(しゃべり)を用いた芸能だ。
『スピード・バイブス・パンチライン』では、現代において優れた漫才とラップがどのように「人の心を動かすしゃべり」を実現しているのかを考証。著者のつやちゃんは「意味と音のせめぎ合い」がその背景にあると仮説を立て、「スピード」「バイブス」「パンチライン」という3つの切り口から意味と音のせめぎ合いについて分析を実施した。2001年にスタートし、新たなスターを輩出し続けるM-1グランプリという賞レースで競われる漫才。同じく、新たなトレンドが次々に生まれ若きスターが登場し続ける日本語ラップ。これらの「しゃべり」の最前線で生まれる様々な技術を比較検討し、「人の心を動かすしゃべり」に求められるものを魅力的に探求していく。
総合カルチャー誌『クイック・ジャパン』で掲載されていた連載に大幅な加筆修正を加え、書籍刊行にあたり、ヨネダ2000とTaiTan(Dos Monos)の二組へのロングインタビューも実施。第二部では、ウェブメディア TOKIONの連載「痙攣としてのストリートミュージック、そしてファッション」をもとに、実際のキャラクター生成の実例をラップとファッションの関係から紐解く。ラップ、漫才、ファッション、ジャンルを軽やかに越えながら、21世紀の語りの秘密を解きほぐす画期的な「しゃべり論」の登場だ。
◯第1部 スピード・バイブス・パンチライン
序章 勝つためのしゃべりの時代に
第1章 スピード
加速する言葉、ハートの行方 キングコング───SEEDA
間に宿るメッセージ 和牛───OZROSAURUS
沈黙は豊穣なり スリムクラブ───Gotch
第2章 バイブス
システムをズラす快楽 ヨネダ2000───ゆるふわギャング
ループの遠心力 ミルクボーイ───NORIKIYO
取り憑かれたように語れ ウエストランド───ちゃんみな
「恵まれざるもの」たちの声 ハイツ友の会───dodo
日常の語り、揺らぐ世界 ナイツ───あるぱちかぶと
第3章 パンチライン
押韻は死ぬまで止まぬ タイムマシーン3号───ZORN
モジュール化するパンチライン 霜降り明星───Watson
意味からの逃走 ジャルジャル───Tohji
第4章 インタビュー
ヨネダ2000 すべては「どすこい」の繰り返しからはじまった
TaiTan 嘘はバレる。それだけ
◯インタールード
◯第2部 上昇するためのしゃべり──ラップされるファッション
序文 素早く、豊かに語るためのケーススタディ
破擦音は本能を呼び覚ます KOHH──ヴェルサーチェ
言い換えの多層性 Elle Teresa──シャネル
模倣品まで書きつくせ valknee──バレンシアガ
語り手の立つ場所 Watson──Air Force1
◯あとがき