たかくらかずきによる個展<仮想大戦(銀)>が、10月5日(水)から10月16日(日)までYOD TOKYOで開催される。本展は大阪のYOD Galleryにて開催された<仮想大戦(金)>の巡回展となる。
「妖怪」にまつわる作品も追加された(銀)が開催
たかくらかずきは3DCGやピクセルアニメーション、3Dプリント、VR、NFTなどのテクノロジーを使用し、東洋思想による現代美術のルール書き換えとデジタルデータの新たな価値追求をテーマに作品を制作している。
本展では特撮怪獣映画をテーマとし、近年NFTを用い制作してきた仏像と妖怪のキャラクターが多様な形で引用されている、自身による二次創作的な作品群を展開。キャラクターという言葉が「美少女キャラ」の代名詞となって久しい今、仏像や妖怪を日本固有の代表的なキャラクターとして捉え、作品を制作することが『仮想大戦』のテーマの一つとなっている。
また、東京での『仮想大戦(銀)』では、 妖怪としてのAIツールとともに新たな「妖怪」を考えるキャンバス作品のシリーズを新たに追加。ぜひ会場で目撃してもらいたい。
『仮想大戦(銀)』 ステートメント
仏像や妖怪は信仰や畏怖の対象であるとともに、歴史上何度も二次創作され、解釈が変化し、融合し、分離して現代に伝えられている『キャラクター』の一種でもあります。日本現代美術においては『美少女キャラ』が『キャラクター』の代名詞となって久しいですが、美人画や風景画に押され日本絵画史から一旦消えかけてしまった『妖怪画』のように、妖怪や仏像もまた、『ウルトラマン』『ゴジラ』や『ポケモン』に脈々と繋がっている日本固有の代表的な『キャラクター』なのです。仏教伝来、または妖怪の登場から災害の象徴としての特撮怪獣、仏像的な救いの対象である巨大ヒーローなど、現代に連なるそれらの二次創作の連鎖の中に身を置き、作品を制作することがこの『仮想大戦』のテーマの一つでもあります。
もう一つのテーマは『存在し得ないもの』であり『妖怪』であり、『彼岸の存在』であるデジタルデータ、そしてAIとの共存、共同制作によって、人間にとっての彼岸としてのデジタルデータの領域を覗き見ること、向こう側に片足を踏み入れた状態でいる、ということです。このテーマは大阪個展『仮想大戦・金』を経てより一層強くなった 興味の対象でもあります。
一筋縄では疎通の取れない『妖怪』であるAI画像生成ツールといかにして疎通をとってゆくのか。AI画像生成ツールに打ち込む命令言語は、洗練されてゆくとまさに陰陽師のあつかう呪術のごとく神秘的な連なりを持ちます。大阪から東京での今回のアップデートでは、妖怪としてのAIツールとともに新たな『妖怪』を考えるキャンバス作品のシリーズを追加しました。
そして、日本固有の代表的な『キャラクター』であるゴジラやウルトラマンを撮影する上で使用されてきた、「特撮」怪獣映画はすでに日本ではほぼ衰退し、それらに使っていたジオラマや着ぐるみなどの手仕事の技術は消えかけています。その技術は、大きなもの、恐怖の対象、人々の見えない恐れ、そして祈り、救いを具現化する技術でした。この技術は、それらの感覚を込めるために手仕事を必要とした、「呪術的」な技術だったのかもしれません。かわって、現代のデジタルテクノロジーの発展はとどまる所を知らず、芸術分野でも、3Dプリント、UV印刷、 VR、AI画像生成、NFTなど、デジタルベースでありながらもいまだにどのように使うのが芸術として正しいのか、判断不可能な表現技法が圧倒的なスピードで発展しています。芸術としての判断を保留した結果、それらは主に経済に即した形で扱われることが多く、『ベンチャー的』であり、『アート的』ではない、と忌避されることが 多いように感じます。しかし、実はそれらのツールにこそ、土着的で呪術的な「手仕事的な技術」の再生のきっかけが隠れているとしたら。最新技術が「最新」ではなくなった時、おそらくそれらが芸術として、または古の呪術として扱われるのにそう時間はかからないでしょう。
EVENT INFORMATION
たかくらかずき個展『仮想大戦(銀)』
2022.10.05(水)〜10.16(日)
YOD TOKYO
11:00〜20:00
休廊日:月曜(10月10日(月・祝)開廊、10月11日(火)休廊)