本プロジェクトに参加したデザイナーの声
東西南北の各チームを代表する4名による山手線への印象や今後の未来についてコメントをいただきました。
【東チーム】Sabah Khaled(Cairo, Egypt)
東京における山手線の位置づけはとても独特で面白いです。どの駅もそれぞれ異なっていて(まるで異なる世界へのゲートのよう)、単なる交通手段というよりは暮らしの一部として人々を繋いでいるように思えました。その魅力を育てていくべきです。一方で、外国人観光客の視点でみた時に、自分ひとりでまわる事を想像すると、英語のサインや情報が少なく混乱してしまうとも思います。
【西チーム】Xinying(Singapore)
このプログラムを通じて、JR東日本のメンバーの献身的な姿勢と、仕事に対する情熱に驚きました。また、東京は単に渋谷・新宿・銀座だけではないということを感じましたね。全てのブログラムが素晴らしかったですが、特にホームステイの経験と座禅が印象に残っています。国際的なデザイナーとの出会いも勉強になりました。短いプログラム期間で文化的な違いを受け入れるのは大変ではありますが、クリエイティブな時間を共に過ごす事で新しいビジョンやコラボレーションの契機が生まれると感じています。将来的には、ブランディングデザインなどの分野で、シンガポールと日本とのコラボレーションができたら嬉しいです。
【南チーム】Wing Lau(Sydney, Australia)
最も印象的だったのは、プログラムを通じて、とても大きく多様な都市を深い深いレベルで見ることができた事です。もう1つ見ていて驚いた事は、(JR東日本が)過去・歴史・伝統の価値を高めようとしながらも、より良いものを探ろうとする姿勢ですね。企業は常に動き続ける時代や文化と関係性を保つために、変わり続けなければならない。例えば、(初日に訪れた)寺田倉庫の天王洲アイルでの取組みが良い例で、彼らが保有・運営している同じ土地を使って、自ら「倉庫会社」から「地域発展(コミュニティデヴェロップメント)の会社」を志向しています。山手線は、異なる東京の部分を相互に結びつける重要な「ジェル」だと実感しました。グローバル都市において、独特な役割でもあり、でも効率的で、東京のコミュニティぽいなと思います。一方で、人びとからみてこの緑のライン(山手線)はJR東日本の他の路線との特別な差異がなく、通常の交通手段として認識されているようにも感じましたね。
【北チーム】Francisco Roca(Buenos Aires, Argentina)
このプログラムは、全体が繋がっていると思うので各パートをバラバラに語る事は難しいですね。山手線の時刻表と同じで、1つの電車が遅れれば他の電車に影響するのと同じで。東京のようにゴチャゴチャとした都市を、1つの強いアイデンティティでまとめるのはとても難しいけど、山手線はそれができているように思えます。外国人にとって、デザインやビジュアル、(英語の)サインは極めて明確だと思います。明るい緑色や新型車両のデザインがその役割を担ってますよね。山手線はさらにこの特徴を強めるべきだと思いました。例えば、もっとクリアでパワフルな環境デザインやグラフィックを駅や車両に施せるかもしれない。(2020年のオリンピック・パラリンピックを視野に入れて)人々が何か新しくて、ただ電車に乗る以上の感覚をもたらすものをデザインで表現できたら良いと思いました。
text & interview by 野中ミサキ
photo by Junichi Takahashi