間や、人間によって作られたものを含め、永遠に存在するものはこの世にはなく、あらゆるものは時の影響を受けています。そんな「時の経過」について考えさせられるグループ展<Traces of Disappearance(消失の痕跡)>がエスパス ルイ・ヴィトン東京にて始まりました。

ミュリエル・ラディック(Murielle Hladik)とエヴァ・クラウス(Eva Kraus)の2人をキュレーターとして迎えた本展は、「保存と腐朽」や、「永遠性の希求と儚さ」など、相反する要素が共存する「両価性」がテーマ。

4組のアーティスト、畠山直哉(Naoya Hatakeyama)、カスパー・コーヴィッツ(Kasper Kovitz)、アンヌ&パトリック・ポワリエ(Anne and Patrick Poirier)、袁廣鳴(ユェン・グァンミン/Goang-Ming Yuan)が、多種多様なモチーフや物質、媒体を用いてこの概念を表現しています。

人間の実存に深くかかわる問いかけが、普遍的な衝撃をもたらすことを認識させてくれる本展。会期の最初と最後に足を運び、作品の様子の変化を楽しんでみてはいかがでしょうか。

畠山直哉(Naoya Hatakeyama)

作品名『Mont Ventoux』/テーマ「理想の地
[twocol_one]

©Louis Vuitton / Jérémie Souteyrat Courtesy of Espace Louis Vuitton Tokyo

[/twocol_one]
[twocol_one_last]

©Louis Vuitton / Jérémie Souteyrat Courtesy of Espace Louis Vuitton Tokyo

[/twocol_one_last]

日本人アーティストの畠山直哉は、フランス南部に位置するヴァントゥ山の写真を通して、理想的である一方、地中に潜む見えない力に抗うことはできない風景をテーマに選び、崇高の概念に迫っています。作品からは、剥き出しで荒々しくも崇高な高地がもつ、さまざまな危険を秘めた美しさとともに、戻ってきた安らぎと黙考の静けさが伝わってきます。

カスパー・コーヴィッツ(Kasper Kovitz)

作品名『The Sheer Size of It』/テーマ「聖地
[twocol_one]

©Louis Vuitton / Jérémie Souteyrat Courtesy of Espace Louis Vuitton Tokyo

[/twocol_one]
[twocol_one_last]グミに鳩に巨大なタワーまで。「時の経過」を考えさせられるグループ展がルイ・ヴィトンにて開催 art140128_traces-of-disappearance_Kasper2-e1390897165420

©Louis Vuitton / Jérémie Souteyrat Courtesy of Espace Louis Vuitton Tokyo

[/twocol_one_last]

オーストリアの作家、カスパー・コーヴィッツの新作『The Sheer Size of It』では、「一時性」がテーマ。直径7メートルにもおよぶ本作は食用のグミ素材で作られています。「時の経過」とともに、素材の色素はまるで夢の残像のように薄まっていく–カスパー・コーヴィッツはこの変化を通して、素材のはかなさや、作品そのものの一時性を表現。また、グミ素材を用いて作品に描かれている理想的な場所の情景と、素材の透過性により見える作品の背後に輝く東京の地平線とが透けて融合することで、自然と都市の対比に応じるように、想像と現実からなる絵画が形作られます。しかし、その場所のユートピア的な自然もまたはかなく変化しているのと同様に、絵画の素材は朽ちていきます。

アンヌ&パトリック・ポワリエ(Anne and Patrick Poirier)

作品名『Soul of the World』/テーマ「記録された記憶と記録されない記憶
[fourcol_one]

©Louis Vuitton / Jérémie Souteyrat Courtesy of Espace Louis Vuitton Tokyo

[/fourcol_one]
[fourcol_one]

©Louis Vuitton / Jérémie Souteyrat Courtesy of Espace Louis Vuitton Tokyo

[/fourcol_one]
[fourcol_one_last]

©Louis Vuitton / Jérémie Souteyrat Courtesy of Espace Louis Vuitton Tokyo

[/fourcol_one_last]

記憶の分類システムとその流れ“–記憶がどのように保存、分類、忘却されるのか–”に注目したフランス人アーティストのアンヌ&パトリック・ポワリエは、哲学者アンリ・ベルクソンが唱えた「記憶の円錐」にインスピレーションを得て、高さ7メートルにおよぶ円錐型のインスタレーション『The Soul of the world』を制作しました。作品に登場する、鳩は記憶そのものの不確かさや脆さを、また鳩が飛び交う様子は、記憶の変遷“–記憶がどのように保存、分類され、また忘却されるのか−”を表象しています。アンヌ&パトリック・ポワリエの「生きている」インスタレーションは、捉えがたいものを、目に見えて感じることができる空間です。

袁廣鳴(ユェン・グァンミン/Goang-Ming Yuan)

作品名『Disappearing Landscape-Reason to Be a Leaf』/テーマ「デジタルメディアを用いて再現された人工的な自然界
[twocol_one]

©Louis Vuitton / Jérémie Souteyrat Courtesy of Espace Louis Vuitton Tokyo

[/twocol_one]
[twocol_one_last]

©Louis Vuitton / Jérémie Souteyrat Courtesy of Espace Louis Vuitton Tokyo

[/twocol_one_last]

動くデジタルイメージ作品『Disappearing Landscape – Reason to be a leaf』を発表。カメラが鮮やかな緑色の葉に沿って動き、一見すると生け垣のように思われるものの、続いて見ていくと、デジタル処理を施された葉の人工的な配列であることが明らかになります。葉脈、葉静脈など葉のすべてのディテールが徐々に消え去り、形式的なかたちのみが残ります。このシリーズにおいて袁廣鳴は、イメージの重要な特徴を消すことで現実に変化を与え、その重要な特徴なしにイメージとしての存在を維持できるのかという疑問を提起しています。

Event Information

Traces of Disappearance(消失の痕跡)
2014.01.18(土)〜04.13(日)@エスパス ルイ・ヴィトン東京
OPEN 12:00/CLOSE 20:00(休館日:不定休)
ENTRANCE FREE
INFO:03-5766-1094