新監督・田口に、「泣け!」と言い放つフジ隊員
3番目の演目は、新世代ウルトラヒーローメドレー。ウルトラマンゼロ・ギンガ・Xと、新しい時代を担う3人のウルトラヒーローのテーマソングをまとめたものだ。
演奏に先駆けて名前を呼ばれたのは、現在テレビ放送中の『ウルトラマンX』のメイン監督を務める田口清隆。
フジ隊員こと桜井に「アガってる?」と指摘され、「アガってます! さっきオープニング映像に自分の名前が出ていて、膝が震えてしまって……。」と緊張をあらわにした。
田口監督が語ったのは、オーケストラの舞台の背後に設置された、大型のモニターが映し出す映像について。一番目の“ウルトラマンの歌”では、当時のテレビ放送の背景映像のまま、番組スタッフやキャストなどの名前がすべて今回の演奏者・登壇者の名前に差し替えられたものが流された。田口監督には、このことを当日まで知らされていなかったようだ。
『ウルトラマンX』で初めて作品のメイン監督を務めたと言う田口監督。設定やキャスティングなど作品を作っていく上で「やってみて初めて知る苦労がいっぱいありました。」と語る。
フジ隊員 (Xの演奏を聴いたら)泣いちゃうかもしれないね。
田口監督 泣いちゃうかもしれないですね。
フジ隊員 泣け!
監督と元ヒロインと言うより、若手隊員と先輩隊員のようなやりとりで観客の笑いを誘った。
監督をやる予定じゃなかった? 歴代監督・飯島敏宏の意外すぎる過去が明らかに。
4番目は“ウルトラ警備隊の歌”や“ワンダバUGM”を収めた、特捜隊メドレーである。
ゲスト登壇したのは、円谷特撮作品を多く監督した飯島敏宏。並びに『ウルトラセブン』、『帰ってきたウルトラマン』を初めとするウルトラマンシリーズの主題歌や、劇中音楽の作曲を多数手がけた冬木透だ。
フジ隊員から思い出に残っていることを尋ねられ、飯島監督の口からは意外な言葉が飛び出した。
「初めて申し上げますけどね、ウルトラマンの監督の予定に僕はいなかったんです。臨時なんです。その臨時が、いま50年も経ってこんな話をしていて、自分でもビックリしている。」
もともと『ウルトラQ』の脚本をやりたくて円谷プロに出向したという飯島監督。初めて映像を撮りたくなったのは、『ウルトラQ』第19話の「2020年の挑戦」からだそう。
また当時の苦労に話が及ぶと、「ウルトラマンの最初の脚本を書いたとき、主題歌が脚本の後に出来てきて、それを見たら《自慢のジェットで敵をうつ》という歌詞が出てくる。「ジェット」って、ジェット機のことかな? そんなの知らなかったけど、大丈夫かなこれ、って……そんな風にうろたえながらやっていました。」とも語った。
一方、冬木は円谷プロ2代目社長・円谷一から突き付けられた難題について振り返る。
「当時はCGなんてものも無い中、社長から『テレビの画面で宇宙の大きさを表現するのは不可能だから、音楽でそれをやってくれ。』というような注文を戴きまして……これは大変なことになったなぁと。」
今聞けば仰天するようなエピソードの数々である。
なお、この回のメドレー内で演奏された“ワンダバ”にも指揮者のこだわりが。再び指揮者・矢澤の言葉だ。
「ヴァイオリンのボウイング(運弓法)を変えているんですよ。ふつうは弓をダウン・アップと繰り返して弾かせるが、それでは『ランターカターカ』と間延びしたような演奏になる。すべて力が入れられるダウンのみの運弓を行うことで、『ワンダバダバ』とキレのいい演奏につながっている。」
これも“オーケストラが歌う”ための工夫の一つである。
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