しかし、1973年の変動相場制導入以降、輸出拡大を目指した自動車産業は、より安価な製造コストを求め、生産拠点を海外などへ移し始めました。このため、保見団地では、ちらほらと空き家が目立つ状況が続くこととなり、この状況を改善するため、公団は例外的に法人契約を認め、保見団地が社員寮として使用されることになりました。そこに押し寄せたのが、入管法改正を機に働き口を求めてやってきたブラジル人たちです。
こうして保見団地は、2008年に全体の人口8,885人のうち4,036人のブラジル人、比率で言うと45.4%を記録する日本有数の外国人集住地区となり、現在でも、約3,000人前後の日系人労働者(主にブラジル人)が日本人とともに生活しています。2016年、年齢、性別、国籍、生活習慣、趣味嗜好など、多種多様な違いを受け入れ活かすという多様性が求められるなかで、図らずも先進的に多様性のリアリティーを帯びたのが保見団地でした。
3年間の異国人との生活で出会った喜怒哀楽
保見団地を訪れた名越啓介の住込みは、10代のブラジル人たちと出会い撮影を繰り返すことで始まります。あるときは、彼らとバーベキューを楽しみ、あるときは、ただただ共に時間を過ごし、思春期のブラジル人たちの目の前に起こる日々を捉え続けました。ヒップホップを始める者、スケートボードに興じる者、暴走族の集会や中学校の卒業式、喧嘩の果ての逮捕劇、出会ったころは18歳だった男の子の成人式、恋愛を経ての出産、そして団地内で行われるクリスマスパーティー。
3年間の生活のなかで、彼らの日常と成長を記録したドキュメンタリー写真、全245枚を収録――。そして名越とともに団地に家を借りたノンフィクション作家、藤野眞功が保見団地の住人、そして名越啓介との生活を綴ったルポルタージュを寄稿し、全288ページの写真集として完成しました。
たびたび訪れる日本の四季のなか、昭和の趣を色濃く感じる団地という舞台で、少し異質にも感じられる住民たちの、何気ない喜び、そして失われゆく自由への渇望が綴られています。「月並みこそ黄金」。そんな言葉がこぼれ落ちる写真集です。
Familia 保見団地 TEASER
PRODUCT INFORMATION
Familia 保見団地
2016.11.25(金)
¥2,980(+tax)
写真家 :名越啓介
文章 :藤野眞功
判型 :天地225ミリ×左右170ミリ
ページ数:288P
発行 :Vice Media Japan
販売 :世界文化社
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