青山礼満(アオヤマレマン)
CLUB OPUST代表
1993年3月15日
東京都世田谷区下北沢出身
最後に空白や空っぽについて考えて書いていたら本当に空白の時間になってしまった。
ここ半年間、たくさんの変化があったと思う。
それは僕にもだし、みんなにも。
今日は僕が本当に正々堂々とホストをしようと思えた出来事を書こう。
素直に、ここ半年間このコラムを書くことに向き合えなかった。
やっぱり僕は物書きじゃないし、器用でもない。
毎回短い文章だが、スラスラと書けるわけでもなく、いろんなことを思い出して整理してこのコラムと向き合っている。
家にいる時間も増え、体重が増え、本当はコラムを書く時間がたくさんあった。
でも、書かなかったり書きたくなかった理由がある。
歴史的な世界の状況の変化の一部として、
少しネガティブな形で、僕らホストクラブで働く男の子たちは脚光を浴びてしまった。
何が正解で何が不正解かわからない中、そういった話題に触れることが怖かった。
しっかりと対策をとっても、僕らは「夜の街」の住人としてひと括りにされてしまう。
何を書いても、世間はあの話題でいっぱいで、
生粋の根明な僕はネガティブな雰囲気に引っ張られたくなかったからだ。
毎日、悪いニュースばかり取り上げられるが、ふと自分や自分の周りを見渡してみてもそこまで暗い雰囲気でもなかったかなと思う。
辛いのはみんな同じだったから。
そんな渦中のなか、しばらくの間お店を閉めた。
休みの間、自分の中でホストという仕事に一つの疑問が生まれた。
この状況で、営業再開したときにお客様に営業をかけていいのか?
気軽に“飲みに来なよ”なんて言えないし、高額なお会計も少し気が引けた。
でもそんな時期に、自分から顔を出してくれたお客様には感謝している。
ただ自分が生きていくだけなら、贅沢をしたいだけなら
簡単に“お店に来てよ”、“シャンパン入れてよ”と言えただろう。
こんなこと、お店のトップに立つ人間が言っていいのかもわからないけど……
客観的に見て、当時はホストクラブや自分自身の需要を感じなかった。
このときだけは、世間のネガティブな雰囲気に飲み込まれそうな気分だった。
休みの間のことはあんまり覚えていない。
本当に退屈だったから。
毎日毎日、ソファーで横になって、時間の感覚もおかしくなった。
始まる時間も無ければ、終わる時間もない。
何にも追われないことに不安が募っていった。
お客様にも会っていないから、飽きられたんじゃないかとか
この時期にホストクラブに通うことを辞めた子も多いんだろなとか
一人でいるとポジティブなイメージがあまり沸かない。
そんな気持ちを払拭できないまま、営業がはじまった。
再開後、この気持を引きずったままだったからなかなかモチベーションが上がらず
売上や順位に対しても全く執着がなかった。店で僕だけ。
自分が想像している以上に従業員のみんなは逞しかった。
仕事ができる喜びや感謝にあふれていた。
それはお金を稼ぐってことじゃなくて、ただ単純に仲間と仕事ができる喜び。
休みの期間中、溜め込んでいた元気を全て営業にぶつけていた。
従業員にとって、僕らのお店はただのホストクラブじゃない。売上を上げるために存在する場所じゃない。
そこは、みんなにとっての居場所。
女の子の顔も明るかった。
僕が少し落ち込んでいるのを気づいていたのか、優しい言葉を持って会いに来てくれた。
本当は元気づけたり笑顔にしなくちゃいけないのに、あげなくちゃいけないのに
このときは、もらってばかりだった。
再開した月の締日。めちゃくちゃ泣いた。
営業後、店長の前で泣きじゃくった。
代表という立場なのに踏ん張れなかった不甲斐なさに泣いた。
従業員のたくましさに泣いた。
女の子の優しさに泣いた。
気づかないようにしていた。
自分の不甲斐なさやメンタルの弱さに。
「正々堂々ホストをしよう」
こんなことを従業員に言い続けていた。
ズルはしないで、ダサいことはせず、お客様や従業員と向き合おう、と何年も言い続けてきた。
あのときみんなが強かったのは僕のこの言葉を素直に受け止めていてくれたからなのかもしれない。
そんなとき、それを言い続けていた自分が自分自身を信じきれていなかった。
自分が一番ダサかった。何にも向き合えてなかった。
「正々堂々ホストをしよう」
自分にとってこのスローガンが信念になった。
調子がいいときに自分に説くこの言葉はみんなの士気を押し上げた。
調子が悪いときに自分に説くこの言葉は自分自身を信じようと思える言葉だった。
少し長くなってしまったが、この期間僕の中で考えが少し変わった
初めて弱った自分も見たし、周りに助けてもらって見えてきたことだ。
それは、
指名してくれたお客様に満足して帰ってほしい。
という気持ちから
絶対に満足して帰ってもらわなきゃいけないという責任に。
それが、今の僕が思う
「正々堂々ホストをしよう」