アートブックノススメ：番外編｜イシヅカユウ-『多毛留』／米倉斉加年

Qeticでは『アートブックノススメ』として、毎月編集部がピックアップしたアートブックを紹介しています。

今回は年末年始特別版として、アーティストやクリエイターがオススメする書籍をご紹介！　アーティストたちの本棚にはどんな本が並んでいるのか、中でもオススメの一冊とは！？　リアルな本棚の写真や、お気に入り書籍の紹介コメントも。2022年に向け、新たなインスピレーションを与えてくれる一冊をぜひ見つけてほしい！

今回はイシヅカユウが『多毛留』／米倉斉加年をピックアップ！

イシヅカユウ -『多毛留』

私の本棚、写真を撮ってこんな素敵なサイトに載せて頂くのが憚られるくらいかなり雑然としています。実はこの本棚には持っている本の半分程度しか入りきっておらず、残りはベッドの下や押し入れの中など、とにかくなんとかして納めようとしていますが全く収まりきっておりません。でも、かつて売ってしまった本を「あの本読みたい！」と急に思い立って買い直そうと思ったら絶版でプレミアが付き買い戻すのに苦労した経験があったりで、いつのまにか処分できなくなってしまいました。

せめて本棚を綺麗に整理しておこうと、隣同士の本のジャンルを最初のうちは揃えていたのですが段々おざなりになって、今ではめちゃくちゃなようななんとなく揃っているような、不思議な混沌が出来上がっています。私達が住んでいるこの世界も、こんな風に隣同士が似ているけど違ったり、違うけど似ていたり、不思議だなぁとこの本棚を見ながら物思いに耽ったりもするのです。

今回紹介するのもそんな私たちの世界にある、隣同士のことを描いた作品。俳優でありイラストレーター、作家として沢山の美しい作品を遺した米倉斉加年さんの絵本『多毛留』。漁師の父と、朝鮮半島から来た母との間に生まれた多毛留の物語を、繊細な絵と文で描いています。作者は福岡出身であり、また韓国を大きく打ち出した食品のCMに、今より遥かに差別意識も大きく韓国料理も一般的ではなかった時代に出演し、仕事が無くなってしまったこともあったのだそうです。

40年ほど前の日本のことを「今より遥かに差別意識も大きい」と先ほど書きましたが、今の社会はそこからどれほど変わったかなと考えます。たしかに料理は浸透したし、ドラマや映画もみんなよく観るようになりました。しかし現代に於いてもまだ変わらず、同じ人種であるにも関わらず隣の国への差別や分断がある中で、今、そしてこれからに読み継ぎたい作品です。