コロナ禍の影響により、クラブやライブハウスをはじめとする数々の文化施設が幕を閉じた2021年。四半世紀にわたり東北の音楽シーンを発信し続けたミュージックバー・bar fam(バーファム)もつい先日「閉店」を発表した。

しかし、ステイトメントには期待すべき未来への“挑戦”も込められていた。

音楽ファンの集う仙台のミュージックバー・bar fam

全国的に名を馳せた伝説のクラブ・BLUEblue(ブルーブルー)が仙台一番町・稲荷小路にオープンしたのは1993年。その後、berkana(ベルカナ)としてのリニューアルを経て、2011年に名称をbar famに変更した。

キャパシティは50人程度とコンパクトだが、ローカルを中心に幅広い世代の音楽好きが集まった。週末にはあらゆるジャンルのDJイベントが開催。“bar fam出身”の DJも少なくはない。しかし先日2021年11月30日、店長・鈴木真一は自身のnoteより【famからの重要なお知らせ】と題したステイトメントを更新。2021年末をもってbar famを閉店する旨を発表した。(※ 12/13現在、22年1月の閉店にスライドすることが bar fam noteより発表あり)

経緯は、純粋な“コロナ禍の影響”だけではなかった。彼は20年以上、音楽の仕事に携わる中で「どこかで新たなスタートをせねばならない」と考えていたという。

ざっくりではありますが「時代のニーズに合う小規模運営による新しい遊び、寛ぎ、癒しを提供したい」と考えておりました。また同時にファムを継続できないかという考えがあったのも事実です。
しかしながら、新型コロナウイルスが世界を覆い、一気にそれらの想いはファムを早い時期にクローズせねばならない、という絶望の心境に陥ったことを今も鮮明に覚えております。
とにかく食いつながねば、という思いからお弁当配達の業務委託の仕事を始め、先月末までの1年6ヶ月続け凌いで参りました。

noteより引用

同仙台市内のクラブ・HI-HATの閉店が転機に

2021年8月にファムのスタッフ・6969が急逝したこと、そして運営を鈴木1人だけで行うようになったことで、体力・気力に限界を感じた鈴木。しかし2021年9月、同じく仙台にあるHI-HAT Sendai(以下HI-HAT)の閉店を機に、新たな発想が生まれたという。

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クロージングパーティ翌日のHI-HAT

HI-HATは2015年に仙台・国分町にオープンしたライブハウス兼クラブ。かつてブルース&ソウルバーだった場所を改装し建てられた。無骨なレンガ造りの内装と、約100人は収容できる広々としたフロア。HI-HATもまた全国に多くのファンを抱える“ハコ”だった。

2021年9月に開催されたHI-HATクロージングパーティを訪れた鈴木。彼の脳内に「ハイハットの場所で現運営を続ける」というアイディアが浮かんだ。

ご挨拶に伺ったハイハットのフロアにて「こんな素敵な場所が仙台から無くなってしまって、いのだろうか?」という思いが一気に溢れてきました。この数年、場所を変えるなら小さな箱へ~といった気持ちが、次の日の早朝、まだ空も暗い時間ふと目覚めたとき、180度心境が変化しておりました。

noteより引用

当時のハイハット店長へコンタクトをとったのち、管理会社の紹介を受け、契約。キャパシティも運営費も、現bar famより大きい。この挑戦にあわせ、bar famでは2021年12月4日よりクラウドファンディングをスタートした。

支援の種類は2パターン。リターンのない「シンプルなご支援」か、1回分の通常イベント入場チケット(ドリンクサービス含む)が受け取れる「ドリンク付イベント入場チケット支援」のいずれかを選択できる。新店舗は2022年1月中旬から2月頃にオープンを予定している。その準備に向け、設備投資や新店舗移転における旧店舗の家賃負担、諸経費などを募る。

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東北の音楽シーンの未来を見据えた挑戦

仙台は東北のなかでも有数の音楽シーンが盛んな都市。東京をはじめ全国で活動するアーティストが足を運ぶようなベニューがいくつも存在する。閉店したHI-HATも含め、いずれも都市同士をつなぐプラットフォームとしての重要な役目を担っている。

bar famのチャレンジは決して容易ではないが、未来の音楽シーンに希望の光を宿すことには違いないため、心から応援したい。支援の受付は今月12月末まで。また、今後は現・bar famの借り手も募集する予定だ。

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Text:Nozomi Takagi

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