来月末に開催が迫った<FUJI ROCK FESTIVAL’25>(以下、フジロック)。大自然でのキャンプやフェスごはんなど様々なトピックが並ぶ中、やはり話題を集めているのはその出演ラインナップ。とりわけ、<フジロック>が初来日となるビッグネームやアップカミングな新人アーティストは開催前にぜひとも抑えておきたいところ。そこで今回は3日間の中で特に注目したい名前をピックアップ。私も観たことが無いし、あなたも観たことが無いはず。来るライブの熱狂に想いを馳せつつ、今年の<フジロック>の予習としてぜひご一読ください。
ヴルフペック(Vulfpeck) 【7/26(土) GREEN STAGE出演】
全ファンクリスナー歓喜の初来日。2025年現在で世界最高のミニマルファンクバンドでありながら、遊び心に満ちたDIYスピリットで数多のオーディエンスを踊らせてきたヴルフペックが7/26(土)のヘッドライナーに登場します。クランキーなギターに「歌える」ベースライン、そして何より俗世を忘れさせてくれるひたすらハッピーなアンサンブル。どのライブ映像でも圧倒的なキレで極上のエンターテイメントを届けています。
2年前の<フジロック>でベストアクトの呼び声も高かったコリー・ウォンの出演が布石となっていたのか、初来日にしてのヘッドライナーとして堂々登場するヴルフペック。実はライブの本数が年に数回ほどしかない彼ら、そういった意味でも<フジロック>は決定的なステージになること間違いなしです。彼らが敬愛してやまない山下達郎も同日に出演予定、忘れられない一日になりそうです。
カトリエル&パコ・アモロソ(CA7RIEL & Paco Amoroso)【7/26(土) GREEN STAGE出演】
ヴルフペックが「ついにか!」だとすれば、このデュオの出演発表は「マジで!?」という驚きをもって迎えられました。なぜなら彼らは去年最も話題を呼んだ新人アーティストであり、世界中がその動向に注目する、正真正銘のスターの卵だからです。「カトパコ」ことカトリエル&パコ・アモロソは地元であるアルゼンチンのインディーシーンで腕を磨きながらも、しばらくメインストリームからは見向きもされていませんでした。そこで彼らはラテンポップの王座を射止めるべく、過剰にポップで享楽的なスタイルへと舵を切ります。その作戦は成功、さらに昨年出演の「Tiny Desk Concert」で同番組史上に残るバズを達成し、一気にトップスターへの道が開けました。
かねてからフュージョン〜プログレを操るなど類稀なるミュージシャンシップを発揮していたカトリエル&パコ・アモロソ。そこに軽妙なラップが乗り、フレッシュなグルーヴがすぐさま発生します。言語やジャンルを超えた、この地球で彼らだけが体現することのできる、摩訶不思議でパワフルなカトパコワールド。このタイミングでの<フジロック>出演は奇跡としか言いようがありません、万難を廃してぜひとも体感しましょう。
エムドゥ・モクター(Mdou Moctar)【7/25(金) WHITE STAGE出演】
アルゼンチンのカトリエル&パコ・アモロソに代表されるように、欧米圏以外の実力あるアーティストが集うのも<フジロック>ならではの魅力。中でも注目したいのはニジェール共和国はトゥアレグ族出身のエムドゥ・モクター。そのサイケデリックかつドラッギーなプレイスタイルとレフティでストラトキャスターを操る姿から「砂漠のジミヘン」の異名を取るなど、超一流のプレイヤーとして支持を集めています。2021年に名門〈Matador Records〉と契約を結び、現在はバンド形態へと姿を変え、粘っこいブルースバンドとして世界中を行脚しています。
YouTubeなどでアップされているライブ映像はどれも熱狂的。トゥアレグ族の象徴的なリズム「タカンバ」を掛け合わせたどこか怪しいフレーズと肉感的なパフォーマンス、これはどう転んでも<フジロック>で映えるビジョンしか見えません。異能のギタリスト/シンガーソングライターとして羽ばたいているエムドゥ・モクター、苗場の森ともマリアージュに最大限の期待を込めてぜひとも当日のスケジュールに組み込んでいただきたいです。
ザ・パンチュラス(The Panturas)【7/25(金) CRYSTAL PALACE TENT&7/26(土) FIELD OF HEAVEN出演】
この流れでピックアップしたいのがインドネシアはジャワ島ジャティナンゴール出身のサーフロックバンド、ザ・パンチュラス。かの地に根付くスンダのサイケデリックな響きをザ・ベンチャーズやディック・デイルといったレトロながらも勢いのあるグルーヴに落とし込んで大所帯で増幅する、唯一無二の音楽集団として人気を博しています。10年にも渡る活動の中で磨かれに磨かれた演奏は本国でも支持されている一方、アークティック・モンキーズやインターポールなどゼロ年代のスタイリッシュなロックバンドの影響を匂わせる歌の強さは言語を超えた魅力を有しています。
アリやホワイト・シューズ & ザ・カップルズ・カンパニーなど、既に日本でもライブパフォーマンスが評価されている二組に並ぶ実力を有しているザ・パンチュラス。初来日となる<フジロック>では7/25(金)と7/26(土)のダブル出演という厚遇っぷり。FIELD OF HEAVENに姿を表す7/26(土)はもちろん、7/25(金) 深夜のパレス・オブ・ワンダー(CRYSTAL PALACE TENT)は熱演確定。毎年のように狂乱のセッションが繰り広げられるこの移動遊園地、主役に輝けるだけのポテンシャルを彼らは隠し持っています。お見逃しなく!
フェイ・ウェブスター(Faye Webster)【7/26(土) WHITE STAGE出演】
エムドゥ・モクターやザ・パンチュラスが剛のグルーヴの使い手だとするならば、こちらは柔のグルーヴの達人。米アトランタを拠点に10代のころからSSWとして活動していたフェイ・ウェブスターは、チルアウトの中にフォークやカントリーといった歴史の息遣いが感じられる要素を盛り込み、ビヨンセやウィルコのジェフ・トゥイーディーといったトップアーティストたちを虜にしてきました。昨年リリースの最新作『Underdressed at the Symphony』ではサザンロックのエッセンスをまぶした、ドライなギターの音色を聞かせてくれました。本作ではリル・ヨッティをゲストに招くなど、単なるクワイエットなSSW像に留まらないアーティストとしての幅をリスナーへと見せてくれました。
長らく来日を望まれていた彼女、その初来日となるステージが<フジロック>で繰り広げられます。アルバム『I Know I’m Funny haha』で共演を果たし、共にUSツアーを回る盟友・mei eharaも同日に出演予定。ゆるいながらも確固たる芯を持った両者、陽だまりのなかで全てを忘れて浸りましょう。
Text by Ikkei Kazama
INFORMATION
FUJI ROCK FESTIVAL’25
2025.7.25(金)26(土)27(日)
新潟県・湯沢町 苗場スキー場
FUJI ROCK FESTIVAL ’25オフィシャルグッズ