東京・神泉駅前にあるモーラム酒店を舞台にタイカルチャーに精通する様々なゲストとSETSUZOKUプロデューサー・西堀純市がイサーン料理とM-150のオリジナルカクテルに舌鼓を打ちながら、それぞれにとってのタイをキーワードにした雑談とちょっぴり真面目な対談を行う-Culture Party- SETSUZOKUの新企画「GOODでMOOD」。皆さんの新たなタイの旅にプラスαとなる感性をお届けします。

今回のゲストは、タイ国政府観光庁(TAT)東京事務所所長を務めるセークサン・スィープライワン氏が登場。彼が現職に就任したのは2019年8月。まさに日本からタイへ約180万人という過去最大規模の観光客が訪れた年だった。

コロナ禍による2年間を経た現在。再びタイと日本の往来は盛んになろうとしている。特に今年2022年は日タイ修好135年というアニバーサリー・イヤー。この節目の年を境にタイ観光のあり方は、今後、大きく変化していく可能性がある。果たしてセークサン・スィープライワン氏は「タイ観光の未来」をどのように見据えるのだろうか。

※取材は2022年5月に実施。

対談:セークサン・スィープライワン
(タイ国政府観光庁(TAT)東京事務所所長)
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西堀純市

タイ観光庁が仕掛ける「ニュー・スタンダードなタイ旅行」|対談:セークサン・スィープライワン(タイ国政府観光庁東京事務所所長)× 西堀純市(SETSUZOKUプロデューサー) interview220829_goodmood_tat_01

政治や社会学の基礎も学ぶタイの「観光学」の仕組み

西堀純市(以下、西堀) 本日はお忙しいところ、貴重な機会をいただきありがとうございます。今日は所長さんのことをどのようにお呼びすればいいですか。

トン 私のニックネームが「トン」なので、ぜひトンと呼んでください。

西堀 わかりました。僕のことは「ジュン」と呼んでください。タイの友人達にはそう呼ばれています。それでは対談に入る前に、まずはモーラム酒店の料理を味わってみてください。

トン うん、これは美味しいですね。イサーンの基本3大フレーバーである、スパイシー・サワー・ソルティーがちゃんと全部入っています。ひと口食べて「これは本物のイサーン料理だ」とすぐに分かりました。これまでに日本でもたくさんのイサーン料理を食べ歩きましたが、何故か砂糖を入れたがるお店が多かった。基本的に現地の人は甘い味付けを好まないんです。ここは本場の味ですね。

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西堀 気に入ってもらえてよかったです。僕もこのお店を知った時は、日本人の舌に迎合せず、現地の味を貫いてるなと感じました。バンコクで食べたイサーン料理を思い出しましたよ。

トン ジュンさんもバンコクでイサーン料理を食べたんですね。実は、バンコクのレストランで働くシェフのほとんどはイサーン出身、ということはご存知ですか? 特に屋台料理はイサーン地方の人が多いんですよ。

西堀 そうだったんですか。 次に訪れた時は意識してみます。それでは色々とお話を伺っていきたいと思うのですが、先ず、トンさんは大学で観光学科を卒業されていますが、いつ頃から観光業に興味があったのですか?

トン 父が公務員で転勤族だったので、国内の移動には慣れていて、子供の頃からなんとなく興味はありました。でも本格的に意識し始めたのは大学の授業で観光について学んだのち、タイ国政府観光庁の本社で研修を受けたことがきっかけで、観光業のシステムに関してより本格的に興味をもち始めました。

西堀 大学では主にどのようなことを学んだのですか?

トン 観光に関することだけでなく、社会科学や政治学も学びます。最初の1年目は基礎の一般科目である数学や国語などを習得し、2~3年次になるとより専門的な勉強に特化していきます。会計やツアーツーリズムのマネジメントを学び、ホテルマネジメントも必然的に学びます。ホスピタリティについて広く学ぶからこそ、卒業後は航空会社に就いた人もいましたね。

私は、卒業と同時にツアーガイドの資格も習得しました。タイの主要な観光について学ぶ「観光案内士」といった資格の試験があり、筆記と実践科目が含まれます。日本語とフランス語、2言語でのガイドを選択でき、私はフランス語を選択しました。厳密にはフランス語を選択する場合、ドイツ語も含まれるのですが、ただ、失効年数が決まっていて、僕のはとっくに無効になっています(笑)

──日本語とフランス語にフォーカスされているのは、何か背景があるんですか?

トン 当時は国内でもネイティブ講師の体制が整っていて、なおかつ日本・フランスからの観光客が増え始めた頃だったんです。フランス大使館も全力でサポートをしていました。

西堀 なるほど。ホテル業や政治などの基礎をしっかり学んだうえで、幅広い学問を勉強するんですね。卒業後には即戦力となる人材が社会に輩出されることが想像できます。

トン 即戦力としての力はあったと思います。私が在学していた当時、競合となる近隣のASEAN(東南アジア諸国連合)諸国の中でも、特にタイは旅行先として人気が高まり、急成長を遂げた時期でした。

コロナ禍を経て変化する、理想的な「観光客」のあり方

西堀 トンさんは、タイを訪れる日本人観光客が過去最高の数に達した2019年に、TAT東京事務所の所長に就任されました。しかし、翌年の2020年、過去最大のチャレンジとなる200万人の観光客招致を目指していた矢先に、コロナ禍に見舞われてしまいました。この2年間、どのような活動をされていたんですか?

トン 大きく分けて2つの活動を続けていました。1つ目は“Top of Mind”と言って、日本の皆さんにタイを印象付け、将来の旅行先としてタイを選んでいただけるようPRをおこなう活動です。2つ目は、様々な企業とパートナーシップを組み、企業を支えるサポート業務に徹しました。例えば、ツアー会社やエアラインなどと支え合いながら、ジョイントプロモーションやPRをサポートし、どんな小規模のビジネス向けトラベル事業だとしても、規模の大小を問わず懸命にプロモーションを試みました。

──出入国が規制されるなかでのプロモーションは難しかったのでは、とお察しします。

トン 日本国内においてもやれることはあります。今年は日タイ修好135年ということで、当観光庁として新たな方向性のスタートに向けて非常に重要なキックオフとなる年です。具体的にはゴルフやスポーツ関連の様々なイベントが今後も開催予定ですし、日本全国各地に日タイ交友の協会が存在するので、各協会と一緒に様々な日タイ交流の機会も作っていて、日本各地で日タイ交流を深める動きは活発なんです。

西堀 今年はいよいよ観光が本格的に再開されるのではないか!? という期待が高まっています。2020年の時は7月にビジネス向け、8月頃には留学生を中心とした学生向け、10月には観光向けの入国を緩和する、という流れのスケジュールが組まれていたと記憶しているのですが、今年の見通しはいかがでしょうか?

トン 今年は6月以降からタイに通常通り入国できるという認識で大丈夫です。ただし、帰りの復路は日本側の入国基準があると思うので現段階では分かりません。これまでは日本からの観光者数は平均して月12万人でしたが、実際に今年の1月時点でまだ入国手続きが厳しかった時期でも、月に4,500~5,000人の入国者数がありました。なので、今後は緩和をすると同時に増え、少なくともコロナ禍前の半数には戻るでしょう。

西堀 では、再開後の観光についてお聞きします。コロナ前はタイに限らず、世界中でオーバーツーリズムなどが原因によって、一部の自然やコミュニティが破壊されてきたと思います。コロナ禍は様々な制限を余儀なくされた一方、そういった環境問題などに目を向けるきっかけにもなりました。「環境保全」と「観光客の獲得」という双方を解決し、持続可能な観光を続けることに対してどのようにお考えですか?

トン タイは環境と地域コミュニティをサポートすべく、レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)に重点を置いていきます。国内外の旅行者と受け入れ側、双方が責任をもって環境や地域コミュニティに配慮することを、今後も追求していきます。そしてジュンさんがおっしゃる通り、コロナを経て自然や環境のあり方は改善されました。人々は必然的に密を避け、今後は少人数のツアーがスタンダードになるでしょう。

注目しているのは、一人当たりの滞在日数と旅費です。一回の滞在で10日間ほどステイしてもらえるプランが必要となり、目安としては2019年に過去最高額を記録した、1人あたり55,000バーツ(約22万円)を使っていただくことが理想です。この額で、やっと地域コミュニティの経済を充実させる事が出来ます。

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ブンカーン県の田園風景
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──なるほど。そうなると、ターゲットとなる旅行客の年齢層も変わってきそうですね。

トン 長期休暇が取りにくいビジネスパーソンの層ではなく、日本の総人口32%を占める高齢者層が、今後の鍵を握ると思っています。すでに日本人のシニア層の約5,000~6,000人ほどが、チェンマイに長期滞在をしているんですよ。

特にチェンマイでは体験型のウェルネスが人気です。そうやって質の高いお客さんに長く滞在してもらうことが環境や地域経済、文化保全に繋がります。だからこそ、現地の村でのローカルな体験、提供できる内容を重視しています。

──できるだけ多くの人に訪れてもらうことが最適解ではない、ということですね。

トン 無理に200万人を呼び込もう、という時代は終わりました。より充実した内容のタイ旅行を楽しんでもらい、100万人に達したらゴール。このように目標をシフトし、ニーズに応じながら国内外のお客さんの流れをデザインしていきたいです。

最近ではタイドラマに登場したロケーションをチェックする人や、現地のタイ料理レストランやカフェを目的に訪れる女性も多いです。また、ドラマから派生して、タイ語を学ぶ女性も多いみたいですね。例年、旅行客のうち20%がファーストビジターで、「まだ行ったことが無いけれど、タイに興味がある」という方が増えてきている実感はあります。

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サコンナコーン県にある植民地時代の古い建物

西堀 観光客の滞在日数を増やす要素として、今後のタイ観光は「ウェルネス」が重要なキーワードになるだろうという過去の記事を拝見しました。具体的にはどのようなことが挙げられますか?

トン ひとことに「ウェルネス」と言っても様々ですが、ホリスティックやメディカル、一番はスパやマッサージのカテゴリーになります。タイに訪れた観光客の皆さんが多く訪れるのは体を癒すためにハーバルマッサージやアロマセラピーなどが中心ですが、中でもファイヤーマッサージという、マッサージ師が足でタイのクライや様々なハーブ油を使って、背中など、体のツボを押して筋をほぐすものも最近では非常に人気です。こういったウェルネス体験を全面に打ち出していきます。

西堀 タイに行ったことがない富裕層のシニア女性や、ハネムナーにも注目ですね。また個人的には、子供のいるファミリー層も重要ではないかと思います。以前、音響機材のメーカーのPioneer DJとお仕事をした時、彼らの次のターゲットは「子供達」だと聞きました。その為に様々なキッズ向けのイベントなどに積極的に機材を提供し参加をしているのだと。幼少期からPioneerの機材に触れ、印象を与えておくことによって、次世代のターゲットを育てていく動きは、観光においても重要になるのではないでしょうか。

トン 次世代に体験を受け渡すことは非常に大事ですね。我々は「フューチャー・ツーリスト」と呼んでいます。例えば家族で旅行先の景色を見て、夕陽に感動した祖父母や親がいるとします。その姿を見た子供にはそれが“感動”だと分からなくても、その場で一緒に共有した体験は記憶として残っているはず。

大人になったときに同じ体験をしてみて、それが良い思い出になれば「今度は自分の子供と行きたい!」と思ったりもするわけです。そうやって次世代に体験を受け渡すことで、新たなターゲットを育てていく、というシステムはとても良い着眼点だと思います。

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利益を追い求めるだけでは、企業として「成功した」と言えない

西堀 タイでの消費や滞在日数、そして環境に配慮した活動、自身の体験をシェアする人の存在が今後とても重要になることがよくわかりました。一方で、音楽やアート、ファッション、食のようなサブカルチャーに対するサポートについては、どのように考えられていますか?

トン サブカルチャー、タイでは「ソフトパワー」と呼んでいます。食も「ソフトパワー」ですよね。例えば「カオニャオ・マムアン」というマンゴーともち米のデザートを通じ、畑でマンゴーを収穫する工程やもち米の炊き方をレクチャーする、といった「食にフォーカスした観光プログラム」も開発されているんです。

従来のように単純な旅行商品だけを売っていても、皆さんにあまり響くとは思えません。今はもっと面白いストーリー・テリングが大切で、「なぜそこへ行って、それを食べるのか」という経緯や背景が求められる時代になりました。

だからこそ、先ほど紹介した映画やドラマのロケ地巡りや芸術然り、そういったディープな「ソフトパワー」の視点による旅程はとても重要であり、インフルエンサーやメディアを経て拡散されるのだと確信しています。

西堀 例えば、タイの企業セントラルグループはタイ地方の郷土料理やプロダクトなどをバンコクに持ち込み、地方の人々の働き口を作る、という活動を行なっています。

トン チン・チャイ・マーケットですよね、僕も知っていますよ。専用のマーケットを作ることで農村の雇用や収益を守り、経済的自立を促す。素晴らしい活動です。しかも質の高いプロダクトを厳選し、人々や環境にも配慮した農業振興の発展を促進している。

今やセントラルに限らず、どの企業もコーポレートイメージを非常に大事にしています。近代のタイ企業ではスタンダードな活動方法になりました。ただ利益を追い求めるだけでは、企業として「成功した」と言えなくなったんです。

そういったイメージ発信の活動をメインとする部署は、観光庁にもあるんですよ。例えば「ゼロ・ウェスト」というプラスチック削減や再利用の取り組みでは、旅程に組み込む店舗選びでもプラスチックをできる限り使わず、再生可能な容器を積極的に取り入れている店舗を優先するんです。そして「イメージの発信」と「実践」という両方の活動が並行して行われます。

──観光庁の「ゼロ・ウェスト」のような取り組みについて、もっと知りたいです。

トン 昔はアメイジング・タイランドならではのデザインを施した紙製の手提げ袋があったんです。お客さんからも人気だったのですが、環境問題の観点で廃止となりました。その代わり、今は古いポスターの在庫を再利用した紙袋を配布しています。

ちなみに「タイのお弁当ツアー」という、画期的なコンテンツ・ツアーを打ち出した事もあるんですよ。使い捨て容器を使わずに、「ピントー」という重箱のようなタイのお弁当箱で、ツアー内の食事を提供するんです。

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ブンカーン県のコミュニティミュージアムにて
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ブンカーン県にあるコミュニティミュージアムで開催された郷土料理の料理体験会にて

お互いの文化を学び合い、たくさん交流をして欲しい

西堀 企業や団体単位でのお話をさせていただきましたが、個人の活動や発信も、大きな影響力をもたらすのではないかと思う例があります。僕の友人にマフト・サイというタイ人アーティストがいます。彼はイサーン地方のモーラムという音楽を現代のフィルターに通し世界に発信しています。彼の活動に感銘を受けて、一緒にイベントなどを制作するようになりました。

トン モーラムの話が出てきてすごく嬉しいです! 彼が活動しているバンドの名前は聞いたことがあります。 実は、いつか東京でモーラムのフェスティバルを開催したい、とずっと思っていたんですよ。モーラムに関しては、スペシャルなコンテンツがあっても良いなと思っています。イサーンの歴史や人々の生き方を映し出す、重要な文化ですから。

僕も小さい頃からモーラム音楽を聴いてきましたが、実は歴史背景などの情報をキャッチするのが難しいんです。ケーンなどの楽器も独特ですからね。でも、イサーンの人達は「人生を楽しむこと」がモットー。メロディも全体的に明るくて楽しい雰囲気だからこそ、言葉や背景を理解していない海外のリスナーでも楽しめるんです。

忘れてはならないのが、日本や東京に滞在するタイ人労働者の多くはイサーンから来ている、ということ。農業や飲食の分野に多く貢献しています。正確にはラオスやカンボジアなど、イサーン地方の近隣国からも多く滞在していますが、彼らもケーンなどの馴染みのある楽器を使い、文化が似ているので、モーラム音楽が浸透している。タイと近隣国の友好・文化交流を図る上でも要重なコンテンツなんです。

西堀 そのようなお話しを聞くと正にマフト・サイはタイの伝統と革新を発信している存在であり「タイの宝」とも言えるのではないかと思います。彼らは世界中にタイの文化や伝統、そして音楽 (モーラム) の楽しさを発信しています。日本の最大のロックフェスティバルである<FUJI ROCK FESTIVAL>にも出演を果たしました。

トン 個人的に文化交流が大好きで、僕もそういうクロスカルチャーとなるプロジェクトをやりたいです。以前タイのウドンターニー県でジャズイベントを開催したことがあります。オランダから来たミュージシャンが、タイの伝統楽器を用いてジャズを演奏する、という企画でした。

次は日本とタイ、両国の伝統楽器でコラボレーションするイベントも開催してみたいですし、いつかイサーンに東京スカパラダイスオーケストラのようなアーティストも呼んでみたい。ノーンカーイ県で開催するとなれば、その近隣国からも人が集まるでしょう。タイ国内や日本からも来ると思うとワクワクします。皆さんがイベントに参加するためには少なくとも一泊は滞在するし、観光も出来る。結果として、地域コミュニティの発展に繋がります。

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ノーンカーイ県のソンクラーン・フェスティバル(水掛け祭り)にて

もし、イサーンでモーラム・フェスを開催することになれば、間違いなく僕も運営の一員になるでしょう。ジュンさん、ぜひ一緒に開催が出来ればと願っています!

実は今年の8月で、東京の任期が満了します。日本を離れるのは少し寂しいですが、次はモーラムの聖地であるコーンケーン県に転勤するので、音楽や料理に限らずイサーン文化を再確認できる。新たな経験値を母国で積めると思うと嬉しいです。

西堀 タイには素晴らしい企業理念があり、伝統と革新を発信する人々がいる、日本も見習うべきことが沢山あると思います。僕もそういった人々の行動や気持ちに触れることによって、都度タイが好きになっていきます。早くタイに戻って、友人達と話したいですね。最後に、首を長くしてタイ旅行を待っている、日本の皆さんにメッセージをお願いします。

トン 日本とタイは切っても切れない関係です。僕は子供の頃から日本製品や日本のアニメなど、日本文化にたくさん触れて育ってきました。日本とタイ、両国の皆さんに伝えたいことは、お互いの文化を学び合い、たくさん交流をして欲しいということです。

特に若い世代の皆さんには音楽や芸術、エンターテイメントなど、興味が持てるどんな分野でも構わないので、文化交流をしてほしいです。両国の若い世代を見ていると、興味関心の対象が実は似ている。お互いに面白いと思えるはずですよ。そしてミドル世代以降の皆さんには、奥深い食文化や生活文化、ローカル・ウィズダム(民衆の知恵)に関心を持ち、次世代へと伝承してほしいと思っています。

一言で「文化」と言っても伝統的なものだけではありません。もっと幅広い視点での文化交流ができると信じています。例えばタイのイサーン歌手であるラスミー・イサーン・ソウル(RASMEE ISAN SOUL)はスウェーデン、オランダ、アメリカなどの欧米でも人気があり、従来のモーラム音楽を超えた斬新な表現を確立しています。彼女の活動を機に、海外からイサーンの文化そのものに興味を持ってもらえるようにもなりました。このように日本とタイも、更に素晴らしい文化交流を結べると信じています。

今後、入国規制が緩和され自由に行き来できる日常が訪れたら、ぜひタイへお越しください。日本に「おもてなし」の精神があるように、タイにも「タイ・ホスピタリティ」があります。我々タイ人は日本の皆さんを、いつでも心からお待ちしております。

西堀 本日はお忙しいところありがとうございました。コップンカーップ!

トン コップンカーップ!

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Text:Nozomi Takagi
通訳:Yuria Nishibori
協力:株式会社TitCai
Photo:SetsuzokuAsia

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INFORMATION

タイ国政府観光庁(TAT)

タイ国政府観光庁[Tourism Authority of Thailand (TAT)]は、国内外に対して観光情報の発信をはじめ、観光コンテンツの開発、観光産業に携わる機関・団体へのサポートを主な職務として1960年3月18日に創設しました。1968年、初の事務所となったチェンマイ事務所の開設以来、現在に至るまで国内には45、そして海外には29の事務所を有しています。(2022年4月現在)

・東京事務所
〒100-0006
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オープン時間:9:00〜12:00/13:00〜17:00
休日:土日祝祭日
管轄エリア:北海道、東北地方、石川、富山、新潟、関東地方、静岡
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