from
maco marets

なにかにつけぼんやりしているわたしですけれど、自室で棚の上に置いてあったサボテンの鉢をひっくり返したときはさすがに己れの不注意を呪い、悪態のひとつふたつこぼさずにはいられませんでした。

なにが悲劇的かって、作業机から、本箱、カーペットにいたるまで、容赦なく散乱した石や、土や、砂のこと。あわてて掃除機をかけてみても、とてもきれいに取り去れるものではありません。結局は丸一日かけて、ちりとりやら雑巾やらを使って片付けることになりました。

見た目はそれなりに元どおり。しかし、微小の粒子は部屋中のすきまというすきまに入り込んでしまったままで……ペン立ての奥底や、あるいはふと手に取った本の小口なんかにざらついた砂つぶの感触を見出すたび、己れをとりまく空間が、サボテンをひっくり返したあの一瞬でなにか異質なものへと変容したような、どうにも飲み下せない違和の念を覚えてしまうのでした。

そうしたわずかな、しかし(大げさにいえば)不可逆なひとつの異化作用につい毛を逆立ててしまう神経質さと、誤って鉢植えを取り落とすような鈍い指さきとはどうにも食い違った歯車のようです。首をかしげつつ、今日までぐずぐずと砂を拾っています。