日々の喧騒の中から少し深呼吸をして、今ある暮らしを眺める。そんな時に言葉や写真を残すことで新たな気づきがあるかもしれません。『葉書のえらびかた』は、暮らしにまつわる気づきに対し、ラッパー・maco maretsがゲストを迎え、エッセイを交わすQeticオリジナル企画です。写真提供はmaco maretsのミュージックビデオを多数担当し、近年では広告映像など活躍を広げている写真家/映像作家・河澄大吉

第7回のゲストには、山本奈衣瑠が登場。モデルとして雑誌・CMなどで活躍しながら、俳優業においても今泉力哉監督『猫は逃げた』で初主演を務めるほか、自ら編集長を務めフリーマガジン『EA magazine』を創刊、美術館のキュレーターなど多岐に渡るクリエイターとしても表現活動を披露している。果たして両名がどんなエッセイを交わすのか? そして、河澄大吉がふたりから得たインスピレーションをどのように解釈するのか? ぜひ最後までお楽しみください。

葉書のえらびかた – 山本奈衣瑠編

夏の海というのは
とても独特なものだなと思っています。

照りつける太陽は
じんわりと僕らを汗ばませたかと思えば、
海から上がった人たちの水気を吸い取りもします。

海沿いを流れる風は
心地よく僕らの間を通りすぎたかと思えば、
ジメジメと湿気を伴って僕らにまとわりついてきたりもします。

そういう”相反するものごと”が、
夏の海を情緒的に際立たせている思っています。

奈衣瑠さんにはMizu no katachiというMVに
出演してもらったことがあります。

鎌倉の海の周辺でフィルムの連続写真を撮影し、
パラパラ漫画のような技法でその写真を映像にしたMVです。

その撮影では、
真っ直ぐとした表情を見せたかと思えば、
しなやかでのびのびとした動きを見せてくれました。

さらっとした心地よい性格の裏には
みずみずしい感覚がありました。

現場にいた皆がある種の夏の海的な思い出を
その撮影に持っているかと思います。

ちなみに、
僕自身の相反することもついでに考えてみると
“顔の割に大酒飲み”とか、
“優しい口調で頑固”とかであるようで、
奈衣瑠さんのそれには到底及ばないものであったということを
筆が進むにつれて鮮明に自覚するのでした。

河澄大吉