音楽だけが飽きなかった唯一の宝物。
私にとっては初恋のような、他にどんなものが現れても絶対に一位の椅子を譲らないのが音楽だった。いつも自分の気持ちを話すよりも、深く素直に表現することができた。
これまでは、自分で作って自分で食べているようなそんな音楽をしてきたけれど、26歳、人生二度目の病は、私の意識を大きく変えたと感じてる。
『The devil came back』2023年に私がリリースしたこの曲は、親や自分自身との問題、愛着障害やそれに関連する精神的問題を抱えた心情を書いた。Devilというのはその比喩になっている。
「I need you here closer 全て知りたかっただけ 私はもうとっくに幸せだったの」
両親にはきっといろんな事情があるんだ。と幼いながらに感じていた。それは薄暗い家の中で日に日に大きくなっている気がして、ある日母親が「おばあちゃんやお父さんに聞かれても知らないって、内緒にするんだよ」とそれだけいって、大した荷物を持たないまま玄関を出て行った記憶が、数少ない7、8才頃の思い出の一つだ。
暗い話をしたいわけじゃない、重要なのはこの後。
大人になり、社会に出て生活をしていくことは感情のジェットコースター、目まぐるしい渦の中にいるような感覚だった。個人的には大恋愛ともいえる恋をする中で、この愛着は拗れもつれ、恋人に対する自分のコミュニケーションの問題が顕著に表れた頃だった。脆くて破滅的で、暴れん坊で、まさに渦そのものになった。そして仕事もうまく行かなくなった頃、ポキっと折れて休職した。
感情とリンクした人生を選んでくださいねと、
先生に言われた一言が、こんなにも難しいのかと悩んだ。何がしたくて、何が好きでここにきたんだっけ?と。誰かに求められるまま、頼まれるまま、自分が誰かに必要とされている、それが仕事になっていくことが面白くて、あの頃はなんでも全部、やりましょう!!と返事した。
少し脱線するが、この頃私はすでに飲食業に出会っている。21の頃、大好きなバンドのセッションを見るべく、流れるようにたどり着いたのが歌舞伎町の店だった。そこはクラフトビールと音楽の店で、当時の私には何もかも新しくて刺激的だったし、まだまだ何も知らない、擦れて暗かっただけの私には、今思えばあの街にどこかホッと感じていたのかもしれない。
その店では社員になり、店長になり、歌舞伎の中でもとびきり異端な、ナチュラルワインとクラフトビールの店として奮闘した。もちろん理解はなかなか得られなかったし、土地柄、おしゃれに過ごそうなんて層を呼ぶにはとんでもなく苦労した。だけど、今日か明日かもわからないほど忙しくしていたあの頃の、カリカリでトゲトゲだった自分を経ていなければ、自分を否定して周りを羨んで、自分1人だけの世界を生きていたかもしれない。
大切なものは昔から何も変わっていないんだと気づくのには、きっと時間や転機が必要だった。店は私の、大切な表現の場所になった。
私はファッションも音楽性もルーツがバラバラで、カテゴライズされずにどこの界隈にもハマれたことがない。これは今でも少しコンプレックスだが、超えてくるような沢山の変わり者に出会い、仕事終わりには夜な夜なナチュラルワインを飲み、ダブやアンビエントを仲間達と聴いてたあれは、紛れもない青春だった。夜の帰り道、ふと不安に攫われそうになっても、この感覚を頼りに何度も前を向いた。
世の中は、人に向けたクリエイティブで出来ている。どんな些細な仕事にもそう見れるようになった頃、少しだけ世界が救われた。ライブをしている時も、料理にワインをペアリングしている時も、こうして文章を書いている時も、何か少しでも、これがあなたの為になっていて欲しいと願う。私は沢山の人たちに支えられてきたから、そんな人たちのように私も、私の経験や発見を通して、為になったり、共感できたり、クスッしたり、そうやって前向きに捉えるきっかけを作っていきたい。
IM HERE FOR YOU.
私は私の為に、私はあなたの為に。
みんなの毎日を応援してるよ。
そんなメッセージを込めたコラムを書いていきたい。

HALELU(ハレル)
SSW/飲食業。音楽と食を通じてインディペンデントに活動中。本・音楽・食などのカルチャー×ウェルネスを軸に、気取らない少々早口なコラムを発信。