惜春の砌、走り梅雨に濡れる紫陽花の蕾が可愛らしい候、みなさまに於かれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

お久しぶりです。料理人の岡村飛龍(@hiiiiiiryu)です。さて、今回は小満に捧げるレシピを紹介します。

この時期は、二十四節気では「小満」と呼ばれ、徐々に春の穏やかな気候から力強い夏の気候に変わり、万物が夏に向けエネルギーを蓄積する時期です。ほととぎすの鳴き声と共に暑さが増し、弱々しかった新緑は青々と茂り、紅花は咲き乱れます。

確かに、走り梅雨と呼ばれる降るのか降らないのか煮え切らない天気になったり、妙に寒くなったり、不都合もありますが、雑誌などと睨めっこをしながら今年の夏の流行りを見据えて夏服を買いに行ったり、お盆休みはどこに行こうか? と夏の予定を立てるのもとても楽しいです。

こんな、祭りの前の様な楽しい時期に何を食すか?
やはり、ハレの日に食べるような華やかなものではない方が良いですし、かといって質素なものだと夏に向けた心のわくわくに水を差してしまいます。

この時期は、ピーマンに、枝豆、トマト……、夏野菜の初物が出回り始め、鱧や鮎の高級魚から、鯵、鰯の大衆魚も旬を迎えます。どれも良いのですが今回のテーマからするとちょっと派手な気がします。

エネルギーを蓄えているイメージの食材が良いのですが、先に挙げた食材だとちょっとエネルギーを蓄えると言うよりは、迸り気味です。例えば、なんでもそうなのですが、生物は子孫を残す前が一番エネルギーを蓄えています。この時期に産卵期を迎えるような食材が今回のテーマには合う気がします。

そこで、栄螺も良いと思いましたがバイ貝が良いと思います。栄螺やバイ貝はこの時期に産卵期を迎え、硬い殻下にエネルギーが満ちている感じがぴったりだと思います。しかし、栄螺だとあの黒々とした身がなんとなしにグロテスクです。それに比べるとバイ貝のやや黄色味を帯びた乳白色は美しい。今回はバイ貝を使おうと思います。

食材が決まりましたので、次は調理法を考えたいと思います。
バイ貝といえば、刺し身や、つぼ焼き、酒蒸し、炊き込みご飯など、様々な食べ方があります。
しかし、刺し身や、つぼ焼き、酒蒸し、だといかにも取ってつけたようで芸がいない。炊き込みご飯は旨味を逃すことなく食べれますが身が固くなり過ぎてしまいます。

バイ貝が蓄えたエネルギーそのものである旨味を逃さず、栄螺の食感を殺さない調理法…、色々と考えた結果、オイル煮が良いなという答えに至りました。

オイル煮であれば、オイルがバイ貝の旨味を全て受け止め、アヒージョのように高温を用いるのではなく、コンフィのように低温でじっくり加熱すれば身の食感も殺さない。今回のテーマにぴったりな調理法だと思います。

このエネルギーが満ちていくこの時期に、更にエネルギーを蓄える一品となれば幸いです。

下記にレシピをまとめましたので、ご参照下さい。

小満に捧げるレシピ – 巻き貝のコンフィ

材料

・白バイ貝…4個
・塩…適量
・オリーブオイル…100cc
・ニンニク…2片
・黒胡椒…適量
・鷹の爪…1本
・ローズマリー…1本

作り方

1、バイ貝をさばき、流水で洗い滑りを取る。滑りが取れたらキッチンペーパーなどで水気をしっかり取る。
2、鍋にオリーブオイルを入れ、ニンニク、黒胡椒、鷹の爪、ローズマリーを入れ弱火で加熱する。
3、2のスパイス、ハーブ類の香りが立って来たら、1を加え弱火のまま10分ほど加熱する。
4、3に塩を加え味を整え、皿に盛り付け、完成。

※ハーブやスパイス、オイルを工夫してアレンジを加えるのも良いかと思います。
※白ワインやスパークリングも合いますが、これから時期の白ビールと合わせるをおすすめします。

『巻き貝のコンフィ』小満に捧げるレシピ column160607_recipe_2