「人とつながる、音楽でつながる」をテーマに、アーティストやクリエイターが紹介するプレイリストがバトンとなり、次々と絆ながるプレイリスト連載企画。DJ/音楽プロデューサーのNAOKI SERIZAWAがホストとなり、ウィズコロナ、アフターコロナ時代のクリエイティブについてゲストに話を訊きます。

この数ヶ月、当たり前の生活が突如として変わり、それは世界共通の認識として“変わらざるを得ない新しいルール”として私たちの生活にやってきました。行きたいところへ旅すること、会いたい家族に会いに行く、フェスやクラブ、ライブ会場で音楽を楽しむことも当たり前でないものにーー。
この困難な時期、より良い世界に向かえるよう、音楽を通して人と人、想いと想いが世界で繋がっていくことを願います。

第3回目に登場いただくのは、ファッションブランド「JULIUS(ユリウス)」を手がける堀川達郎氏。ファッション領域のみならずアートや音楽への造詣も深く、そのフィロソフィーを常にデザインとして落とし込みメッセージを投げかけています。コロナ禍を経ての堀川氏の考え、想い、そして選曲いただいたプレイリストについてなどを語っていただきました!

NAOKI SERIZAWA × JULIUS デザイナー 堀川達郎

人と人、音楽で紡ぐプレイリストリレー|Vol.3 堀川達郎「Riverbed:」 column200624_playlist_julius_03-1920x1440

NAOKI SERIZAWA(以下 SERIZAWA) 緊急事態宣言中はどのように過ごされてましたか?

堀川達郎(以下 堀川) 緊急事態宣言中はデザインしてないよ。2ヶ月オフ取ったような感じ。人生で一番長いオフだった。俺はこのタイミングで、身体と心を休めることをしていた。ポジティブに生きていくために。毎日代々木公園に行って、4時間くらい本を読んでたよ。

SERIZAWA どんな本を読んでたんですか?

堀川 樋口恭介の『全て名もなき未来』と、シャルル・フレジェ(Charles Fréger)の『WILDER MANN』。この本が次の「JULIUS」のコレクションのテーマになった。この本に出てくる「マムトネス」っていうのが、イタリアのサルデーニャ島に云い伝えられてる神の使いなんだけど、彼らは独特な衣装を身にまとい、生命の輪廻や季節のめぐりを祝うんだよね。次は祝祭的なコレクションにしたかった。だから「マムトネス」ってタイトルで収穫をテーマにした。

SERIZAWA コロナ禍によってたくさんのことが制限されましたよね。人と会うことや同じ場所を共有する喜び。そういった物理的なものを制限された反動もあって収穫をテーマにしたんですか?

堀川 どうだろうな。もっと精神的なことだな。収穫とは、精神的な実りだよね。

SERIZAWA なるほど。STAY HOME中って考える時間が多かった分、精神的な収穫はたくさんありましたよね。当たり前にあったものの尊さへの気づきだけではなく、これまでの価値観をひっくり返すような、ニューライフスタイルへの気づきというか。

堀川 そうだね。そういう意味でSTAY HOMEは良かったと思うよ。この期間中、大切なものに気づいた人は結構いると思う。俺にとっては、それが“精神の解放”だった。人生において、精神を解放するということがどれだけ大切なことかがわかった。15年前に訪れたチベットと8年前にスリランカに行った時にも似たような“開いた”感覚があったんだ。でも、東京に帰ってきて忙しい日々に追われる中で忘れちゃって、それで鬱病になって。でも今回のコロナで確信に変わったから、俺は絶対に忘れない。それもあって、住居を海の方に移すことにしたよ。俺は、それが最先端でファッショナブルな行動だと思ってる。

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SERIZAWA 自分のライフスタイルをデザインするというか。この気づきを元に、自分の考え方やライフを変えられるように行動できるかが重要ということですよね?

堀川 そうだね。それこそいま出てるコレクション[DUKKHA;](FALL-WINTER 2020 COLLECTION)は、精神の解放を目指して作ったけど、いま思えばあの時はまだ解放できてなかったな。

SERIZAWA 環境を変えることが自分を変える近道だったりしますよね。僕自身旅をすることで得た音楽的なインプットが今の自分に大きな影響を与えてると思います。

堀川 それこそモロッコから帰ってきて、その時の気づきで作ったコレクションが[sefiroth;]だった。トライバルなアフリカン呪術をイメージした。瞑想的というか、儀式的って方が正しいかな。リチュアルなイメージ。

SERIZAWA 「JULIUS」の中でもすごく好きなコレクションです。僕も逗子とか鎌倉や葉山に引っ越したいと思ってます。あの辺ってマインドフルネスを追求してる人が多いですよね。

堀川 うん。マインドフルネスの聖地。あんまり人に言ってないんだけど。俺もここ2年間くらいよく瞑想するようになったから。特に、その影響がこの春のコレクション[Afangar;](SPRING-SUMMER 2020 COLLECTION)に色濃く出てる。

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堀川達郎
プレイリスト・テーマ「Riverbed:」

SERIZAWA 今回のプレイリストについて詳しく教えてください。

堀川 [Afangar;]のPVの曲をやってくれたコリー・フラー(COREY FULLER)が、コロナウィルスで亡くなった方への追悼の意を込めて作曲した“Da pacem Domine”って曲があって、この曲を軸にプレイリストを作ったんだ。このタイトルがクラシック用語で「レクイエム」という意味で、結構悲しい曲なんだけど、このヒストリカルな曲を最後に持ってきて、他は空間を埋めるような粒子っぽい感じで並べた。他の曲もコロナ中にずっと聞いてた曲。イメージとしては、体に浸透していくようなテクスチャの滝から溢れ出るイオンみたいな。

SERIZAWA 最後の質問なんですけど、いまwithコロナ時代に達郎さんが表現したいクリエイティブってなんですか?

堀川 サイバーパンクだよ。ブレードランナーとか世紀末的な。そこに精神的なスピリチュアルな要素を加えていきたい。サイバーパンクとスピリチュアルはミックスしないんだろうけど、対比してるからオレが成り立ってる。「JULIUS」が、俺の表現自体がずっとそうやってきたから。

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COREY FULLER“Da pacem Domine”

堀川達郎|Horikawa Tatsuro
1996年、サードストーン設立。この当時はグラフィックデザインを中心に活動する。97年には自身のファッションブランド「nuke」を立ち上げる。2001年、「ユリウス:JULIUS」を設立。怒りと痛みのシンボルである黒とグレーを基調としたコレクションで、世界中で人気を集めている。

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NAOKI SERIZAWA
東京を中心に音楽活動をするDJ/音楽プロデューサー。NYのアーティストコレクティブ兼レーベル〈CREW LOVE Records〉よりデビュー。これまでにアジアはもとより、ヨーロッパや南米など世界各地の20都市以上でプレイを重ねてきた。ここ日本では<FUJI ROCK FESTIVAL>に6年、<Ultra Japan>に4年連続で出演。ブルックリンのTHE LOT RADIOやイタリアのm2o RadioのSignal Hillsのゲストミックスに出演するほか、国内でもJ-WAVEやInter FM、DOMMUNEなでライブミックスを公開してきた選曲のスペシャリスト。2020年、USのレーベル〈WOLF+LAMB Records〉より“El Final Del Verano”と“Yesterday”の2枚のシングルをリリース。

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プレイリストVol.2 KOSUKE KAWAMURA