どれだけ足を運んでもまだまだ底の知れない東京の地。
オフィス街、高級住宅地、それぞれの街にそれぞれのイメージがあるだろう。しかし、響きからだけではイメージにない、あの街にも心が「ホッとする」意外なスポットが。
そんなマーケット=開拓地から発信する、放課後の教室の様な緩やかな対談企画がQeticでスタート。
日々、東京の街を徘徊するBOY奧冨がゲストを招き、目まぐるしく移り変わる都会の中で心が「ホッとする」味わい深いスポットで杯を交わしてのトークセッション。
きっと僕らがこれからの時代に必要な気持ちの安らぎや「ホッとする」事の大切さを感じられるはず。
第一回のゲストはchelmicoからRachelが登場。舞台になったのは白金。白金台駅からスタートし、ぶらぶらと白金の街を探検。そして最後は白金北里通りの中華料理屋・野沢屋で語っていただきました。
奧冨直人(BOY)× Rachel(chelmico)
at 港区・白金
〜野沢屋にて〜
TOMMY 白金は歴史のある街なんだけど、そういう視点で取り上げられる機会が少ない気がする。メディアによく取り上げられるのは開発が進行中の街が多くて、映える人気スポットだとかに集中している気がしていて。だけど、色々な視点で見てみたら、また違う街の魅力に気がついてホッとできる場所を見つけられる。そういうことを気が合う仲間と掘り下げながらのほほんと会話する企画です。
レイチェルとは、昔、浅草のリサイクルセンターに一緒に行ったよね。そこでは街の住民の委託で商品が成り立ってて、お店がほぼなんでも買ってくれる。未開封のスポンジとかを50円で売ってたりする(笑)。発想がヤバい。
レイチェル 新品だけど、家で余ってたスポンジみたいな。あとは木彫りのクマとか、本当家にあるモノ。
TOMMY 最近、また行きたくなって調べたら閉業してたんだよ。そういう街の生活の香りがどんどん消えてる。渋谷とか、歓楽街では如実にそれを感じるかな。でも、都心でも渋谷からバスで10分行ったところには、こういう生活感のある街並みが広がってて。
レイチェル バスですぐっていうのが意外だった。ここは結構奥まった場所だよね。駅がそんな周りにあるわけでもないから。
TOMMY 僕らは散々歩いたけどね(笑)。レイチェルはツアーだったり、フェスで全国各地に行くじゃない。ちなみに対バンツアーはどのくらい回るの?
レイチェル 7ヶ所かな。ほぼ平日なの。だからツアータイトルは「chelmico(ほぼ)平日ツアー」にした。1日だけ土曜がある。仙台かな。平日ツアーって言いたかったけど、それがあるからほぼ平日。もう強みに変えたいじゃん、せっかくなら。
TOMMY いいね。普段、ツアーを回ってる時に街は見る?
レイチェル すごい見るよ。でも車で移動するから、街を歩くことがあまりないんだよね。だから私はいつも悲しいな。3日くらいは居たい。前乗りして、ライブして、翌日は遊んでから帰りたい。でも日帰りが多いかな。
思い出深いのは、自分の地元の横浜の方にあった商店街。超ドープだった。でも好きだった店がここ3年くらいで無くなっちゃって超悲しい。全然行けてないんだけど、そこも案内したいな。色々、激アツな、お気に入りのロックバーがあるんだよね。それに1つの商店街の中に、パチンコ屋が4店もある(笑)。そこから広げていくと、もっとヤバいエリアもあって。地元にいた猛者たちが、今度はそこにどんどん集まっちゃった(笑)。昔は飲食店もいっぱいあって良かったんだけど、色々変わっちゃったみたい。
TOMMY 都心から外れた場所でも急激に変わっていってるよね。白金のこのエリアは去年知ってハマったんだけど、最近は大井町とかにもよく行ってる。大田区にはあまり日常で触れてこなかったんだけど、この数年になって急に行くようになってきた。きっかけはサウナなんだけど、知り合いに会わないような施設に行きたいっていう自分の欲求があって。友達と一緒に行くのは良いんだけど、静かに楽しみたいから施設内もなるべく混んでないとこに行きたい。
レイチェル 都内のサウナは混んでるの?
TOMMY 渋谷区とか世田谷区はすごいよ。時間によるけど行きたい時間はどこも混んでて、諦めて去年は神奈川までも行ったりもしてた。今は都内ではほぼ行かなくなって、DJ や遠征で各地に行った時に回りまくる。だから疲れを溜めとくの。
レイチェル 普通溜めないようにするけど(笑)。
TOMMY 東京で溜めに溜めてね。で、大井町に「おふろの王様」っていう有名なスーパー銭湯のチェーンがあるんだけど、マクドナルドがあるようなデパートの中に入っていて。大井町ってほとんど降りたことなかったから様子見てみようと思って、駅の逆側に行ったら古きよき飲み屋の横丁がブワーっと広がってる。こうやって色んなきっかけから街中を見るのも面白いなと。そして、結局飲み屋が並んでる景色が好きなんだろうね(笑)。
レイチェル 確かに、飲み屋がある道はなんか惹きつけられるよね。でも住んでなきゃなかなか行かない場所というか。この間大阪行った時、大阪に住んでる人に教えてもらった韓国焼肉みたいなお店行って、そこが天満にあった。初めて行ってすごく好きになったから、ご飯食べ終わってから、マミちゃんと別の場所で呑もうと。それで、スナックがいっぱい入ってるビルがあったの。1〜7階まで全部スナックで、入り口に看板が並んでる。そこに飛び込みで入ってみようとなった。そこで気になった「すずらん」ってとこに行った。「すずらん」って素敵だから。それで入ったら、すごく良いところだった(笑)。写真撮ったよ。これだ、プレステル天満。
TOMMY いいな。そういう場所は惹かれるよね。行きたい。大阪の十四才とYAMASTOREって店とそれぞれポップアップをやってるから、なんだかんだ3ヶ月に1回くらい大阪に行ってるんだよね。天満エリアの近くだとCompufunk Recordsっていうレコード屋兼イベントスペースが印象的だったな。記憶の中では新代田FEVERの楽屋含めたくらいある。そこでLe MakeupのDJを初めて観たのを覚えてる。
レイチェル そういえばこの前、Le MakeupとNeibissの2人と一緒に飲んだよ。急に後輩できたような感覚で楽しいんだ。遊んでくれて嬉しい。Neibissは神戸で、Le Makeupは大阪。その時は吉兆っていう大阪にいっぱいある焼き鳥屋さんに行ったんだけど、そこが本店だったのかな。ママが超個性的で面白かった。Neibissが「吉兆ってめっちゃありますよね。まぁ、いいですけど……」みたいな感じで入って行ったんだけど「俺の知ってる吉兆と違う」って(笑)。そうやって飛び込みで入るのがいいよね。ノールックが面白い。だから、今日も外観は知っていたけど、どんな感じかは分からないわけで。
TOMMY 印象的だった場所って、なかなか観光ガイドに載ってないからね。去年の2月、福井に初めて行ったんだけど、地元のみんなから「粂ちゃん」って居酒屋をおすすめされて、3軒目位で朝4時に行ったんだよ。70代半ばくらいの夫婦2人でやってて、メニューもなんだけど何より2人の掛け合いが最高で。そこでブチ上がりすぎて、6時半に何故か自分のオリジナルソングを作って弾き語りしてた(笑)。
──そういえば、奥富さんは山手線全駅に降りて飲み歩いてましたよね。
TOMMY 30歳の誕生日に、朝から山手線各駅で降りて飲んで。その頃は高輪ゲートウェイ駅ができてないから山手線は29駅で、馴染みの下北沢を終点の30駅目に。1日で計算して、1駅40分。山手線でも降りたことない駅がたくさんあるからそれも含めて新鮮だった。そこにはそれぞれの生活とか仕事があるわけじゃん。その面白さを垣間見れてまだまだ何も東京の事知らないなって。この前も王子に行く機会があったり、普段行かない街に行くとよく思う。そして、新しい発見の為に今日も歩き続けるっていう。レイチェルは街中を歩き回るとしたら飲食店が多い?
レイチェル 飲食店が多いね。スナックとか。スナックは毎日来てくれる人がいるから成り立つわけじゃん。だからベッドタウンとかにあるし、そんなに行かない場所なんだよね。
──若い人たちはあまりスナックに行かない気もします。
レイチェル 私、めっちゃ行くから、みんな行くと思ってた。確かに言われてみれば、若いお客さんいないわ。でも高円寺にめっちゃ好きなスナックあって……高円寺でスナックやろうかな。
TOMMY それは新しい引き出しができそうだよね。スナックに行ったことない人も行ける。
レイチェル その場所も看板を見て入ったんだけど、名前は「ひまわり」だった。私、花が好きなのかもしれない。私はバラにしようかな。スナック・ばら。
TOMMY 行きたい。でもこの生涯、悔しいのは時間の限りがあるのでどうしても行けない場所があること。絶対に聴けない音楽もあるし、だからこそ今出会ってるものに夢中になれるんだけど。
レイチェル 絶位に聴けない音楽があるのは悲しいよね。一度観た映画とかももう一回観たいじゃん。それをやると無理なんだよね。でも、東京だったらできるかも。エリアの飲食店全部行くとか。
TOMMY それはあるよね。下北沢のカレーフェスとかも全部行ったことある人いるでしょ。
レイチェル うん。下北沢でスナックやるのもいいかも。好きだし。
TOMMY 集い場になるよ。すずなり横丁の裏の裏とかなら良いんじゃない?
レイチェル どうやってお店だすんだろ。
TOMMY 店舗の中でも飲食出すのは大変な印象だよね。
レイチェル 誰かこの連載を見ている人でスナックの開き方を知ってる人がいたら、レイチェルに教えてください。
──白金高輪、歩いてみてどうでしたか?
レイチェル 私はこのお店も中身が外から見えないし怖いなって印象もあったけど、ウェルカムで優しくしてくれたし、旅行に来た気分みたい。自分が住んでないエリアの生活を感じることができて、もっと知りたいなって思った。こういう機会じゃなきゃ来れないし、大人だからバタバタして「来月〜再来月に〜」なんてやってるうちに、一年たったりするから。本当にこの機会があって良かった。
TOMMY 渋谷に毎日いてみんなと会ったりするけど、ものの5分10分移動すれば普段とは違う景色で違う心持ちになれるよね。
レイチェル リフレッシュできる。
TOMMY さて、次はどの街へ……。
白金台駅から白金北里通りへ
次回は何処へ?
愉快な仲間たちと街を巡る、BOY・奧冨直人の『ホッとスポットマーケット』をお楽しみに!
奥冨直人
BOY・ショップオーナー
平成元年・埼玉県生まれ。
ファッションと音楽のコンセプトショップ・BOYを2009年、渋谷円山町にオープン。2014年、現在の宇田川町店舗に移転・独立。
DJやスタイリングなど日々の活動は多岐にわたり、どんな時代も楽しく暮らしている。
Rachel(chelmico)
友達のMamikoとラップユニットchelmicoを2014年に結成。
それより前から活動してるけど、なんやかんやで2018年にワーナーミュージック・ジャパンのunBORDEよりメジャーデビューし、はや3年。良い感じのラップをしている。
色々なアーティストにリリックを提供したり、客演したり、Podcastやったり活動の幅を拡げている。
chelmicoは2023年1月12日まで、(ほぼ)平日ツアー開催中!
『chelmico(ほぼ)平日ツアー』
2022年12月13日(火)神奈川 Zepp Yokohama/iri
2022年12月15日(木)北海道 Zepp Sapporo/Lucky Kilimanjaro
2022年12月21日(水)大阪 Zepp Osaka Bayside/鈴木真海子
2022年12月22日(木)福岡 Zepp Fukuoka/tofubeats
2023年1月7日(土)宮城 仙台GIGS/STUTS
2023年1月10日(火)愛知 Zepp Nagoya/中村佳穂
2023年1月12日(木)東京 Zepp Haneda/RIP SLYME
前売り:1F スタンディング ¥5,000/2F 指定 ¥5,500(ドリンク代別・未就学児童入場不可)