idom(イドム)と名乗るアーティストをまだ知らない方のために、念のため簡単な説明をしておこう。彼は、現在24歳、兵庫県生まれ、岡山県在住、約2年ほど前にイタリアのデザイナー事務所への就職が決まっていたが、新型コロナウィルスの影響で渡伊を断念し音楽制作を始めた新進気鋭のアーティストである。彗星のごとく現れた彼は、本日、月9ドラマ『競争の番人』の主題歌を担当することが解禁された。
本稿では日本語と英語にときどき関西弁を織り交ぜながら、ラップに歌に自在にその声を響かせるidomについて、もう少し掘り下げてみよう。
idomとは?
idomとは、どのようなアーティストか。その肩書きはトラックメイカー、シンガー、ラッパー、映像ディレクター、イラストレーターなど多岐にわたるマルチ・プレイヤーであり、その魅力を簡単に説明するのは難しい。ただ、まだ音楽シーンにおいて若手と呼べる位置にありながら、早耳のリスナーたちの間ではすでに要注目な存在となっていることは確かだ。
無論その理由は彼の楽曲のクオリティの高さにある。2021年7月には“Awake”がソニー Xperia 1 III CMタイアップソングとして、2021年10月には“Freedom”がTikTok CMタイアップソングに、続けざま2021年11月には“Moment”がソニー Xperia 5III CMタイアップソングに抜擢され、3作連続で大型タイアップに起用されるという、若手アーティストでは異例の快挙を成し遂げていることはわかりやすい例だろう。その名を知らずに彼の楽曲を聴いていたという方もきっと少なくはないはずだ。
“Awake”や“Moment”、“Freedom”においてトラックメイカーとして彼と共にクレジットされているのは、ダンス・ミュージック、ヒップホップ、R&Bなど幅広く手掛け、自身のソロ名義でもリリースするTOMOKO IDA。idomの甘くしなやかで伸びのある歌声をよりダイナミックに引き立てている彼女の手腕にも注目すべきだろう。そして忘れてはいけないのがそれらの楽曲のMVだ。ディレクターにはCOACHなど世界的なファッション・ブランドの映像等を手掛けているYUANN(kidzfrmnowhere)を起用し、3曲それぞれの世界観が滲む映像は楽曲と合わせて楽しむことを強くおすすめする。とりわけ個人的に必見と言いたいのは、疾走感あふれるダンサブルなサウンドがタイトル通り自由なムードを生んでいる“Freedom”のMVだ。ダンサーたちに囲まれ183cmという長身と長い手足を共に揺らしながら人懐っこい表情を浮かべるidomがなんとも憎めない。
idom – Freedom [MV]
BACHLOGIC、Seihoらもリミックス
そして、Tik Tokで大きな反響を呼んだ自身作詞作曲“帰り路”
2022年2月には、それまでにリリースされていたシングルに完全新曲の“帰り路”や80sポップテイストになった“Freedom – PLANET ver.”、ヒップホップシーンを代表するプロデューサー、BACHLOGICによる“Awake”のリミックス、そして立体的な音像が国内外で注目を集めるSeihoによる“Awake”のリミックスも収録されたEP『i’s』をリリース。このEPによってidomが見せたのは、それまでにリリースされていたシングル群にあったダイナミックさやアグレッシブさとは非常にギャップのある表情だった。
EP『i’s』
完全新曲である“帰り路”は、idomが自身で作詞だけでなく作曲もこなしている。ギター、ドラム、ベースといったシンプルな構成で生み出されたサウンドに、とても落ち着いたトーンのラップと歌。その上に綴られているのはこの複雑な社会を生きる難しさに直面しながらも、それでも生きていくことを優しく肯定する、等身大のリリックだ。もしもあなたが生きることに疲れてしまったら、きっとこの曲はそっと寄り添ってくれるだろう。
加えてMVもidom自らが監督を務めたもので、高いクオリティの仕上がりとなっている。彼の表情や仕草のひとつひとつが楽曲の持つ親密な空気を際立たせる映像で、特に夕日が差す砂浜で友人がidomの背中をポンと叩くカットでは、友人=リスナーの比喩にもなっているのではないだろうか。
だから“帰り路”が若者を中心に共感を呼んだことは必然だったのだろう。日本では特に10代を中心としたSNSであるTik Tokで、同楽曲のMVを切り取った動画は現時点で28万再生(2.3万いいね)を記録している。それはつまり、早耳のリスナーだけでなく、ライトな音楽ファンたちもすでにidomの存在に気がつき始めているということだ。さらにgnash (Garrett Nash)が2018年にリリースしたヒット曲“imagine if / イマジン・イフ”をidomがカバーした動画は250万再生(17.6万いいね)とバズ。甘さがありながらも芯があり繊細さも兼ね備えたidomの歌声は《もし一晩だけ時を戻せるなら》というリリックを切なく響かせており、原曲の少し癖のある歌声とはまた違った魅力を引き出している。
それに伴ってTik Tokのフォロワー数も急増。すでに5.9万人を超えている。また、Tik Tokでのヒットが世界的なヒットへのひとつの登竜門となっている現在において、idomはすでにその条件を満たしているとも言えるだろう。そうとなれば、idomの次のアクションに注目してしまうのも無理もあるまい。idomのさらなる飛躍に期待が高まるばかりである。
idom – 帰り路 [MV]
Tik Tokで観ることができるのはカバー曲もショートバージョンだけだが、YouTubeではフルサイズでのカバーも披露している。あいみょん“愛を伝えたいだとか”、藤井風“優しさ”、Ed Sheeran“Perfect”など洋邦問わない選曲が魅力だ。The Kid LAROIとJustin Bieberによる昨年のヒット曲“Stay”に至っては「JPN RAP MIX」として日本語のラップも織り交ぜてカバーしているので、こちらもぜひチェックしていただきたい。
Text:Daiki Takaku
INFORMATION
idom(イドム)
兵庫県神戸市生まれ岡山県在住。1998年3月18日生まれ。
大学時代、デザインを専攻し2020年4月からイタリアのデザイナー事務所に就職予定であった。
しかし、新型コロナウィルスの影響で渡伊を断念。そんな挫折を味わったコロナ自粛をきっかけに、以前から興味があった楽曲制作に初めて挑戦。
楽曲制作・ボーカル・ラップのみならず、映像制作、イラスト制作等もマルチにこなす、まさしく新世代型のマルチクリエイター。
その非常に高い完成度とクリエイティブセンスに早くも大きな注目が集まり、音楽活動を始め約1年という早さで「Awake」「Moment」がソニー XperiaのCMソングに、「Freedom」がTikTokのCMソングに起用される。
そして、その勢いは止まることなく7月11日(月)から放送スタートとなるフジテレビ月9ドラマ「競争の番人」の主題歌を担当する事が決定!