これまで台湾マニアの中では、有名な観光地を回るだけではない、「日常を味わう」旅行も好まれてきた。

ガイドブックには載っていない路地裏の水餃子屋さん、
地元の方しか訪れない市場のざわめき、
街ゆくゴミ収集車が奏でるメロディ…。

もし、音楽で日常を味わうとしたら、どんな旅になるだろう?

今回話を聞いたのは、埼玉・都内を中心に展開している台湾音楽オンリーparty「台北コーリング」主催&広報担当のyukiさん。

3年ぶりに訪れた台湾で、自由にローカルな音楽旅を楽しんだ様子を取材。エッセイ形式でお届けします。

ナビゲーター:yuki
ローカルのレコードショップ巡り、蚤の市、念願のライヴまで、怒涛の4日間。 
DAY1 有名インディーズアーティストと、部活動が同居。高校のクリスマス会に潜入。 
DAY2 ローカルレコードショップとライヴを満喫、台北市。 
DAY3 所狭しと並んだガラクタ、本格派ローカル蚤の市の洗礼。 
DAY4 東京に戻っても「台湾感覚」が抜けない。 
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ナビゲーター:yuki

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台湾音楽オンリーparty「台北コーリング」主催&広報担当。オールジャンルでインディーズから歌謡曲、J-POPカバーまで台湾音楽をプレイ。「アジア都市音楽ディスクガイド」(DU BOOKS刊)にもレビューを寄稿。好きな台湾のエリアは大安と公館。

ローカルのレコードショップ巡り、蚤の市、念願のライヴまで、怒涛の4日間。

最後に台湾を旅したのはだいたい3年前、2020年の2月だった。

その頃にはもうコロナ関連のニュースで世間はザワついていたけれど、ここまで長引くとはまだ誰も思っていなかった。

2018年に「台湾の音楽を流すイベントをやりたい!」と思い立ち、縁あって開催にこぎつけられた台湾音楽オンリーのDJイベント「台北コーリング」は、台湾への渡航が厳しく制限されるようになった2020年3月に1回目を迎えた。

「そろそろマスクしなきゃだよね?」や「夏ぐらいには落ち着いているでしょう」など、人によってコロナへの反応は様々で、未知の感染症への戸惑いが社会全体を覆っていたように思う。

その後は、テレワークが中心のコロナ禍らしい生活に突入。

企画したイベントも延期になったり、オンライン開催を模索したり…。
世の中に振り回されながら、少しずつやり方がわかってきた。

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最初は「箱のお客さん」が中心だったけれど、回を重ねるごとに台湾に興味がある人や、別のイベントで知り合った人など、SNSのつながりで知り合いの知り合いまでどんどん広がっていく。「Instagramの告知を見て来ました」という台湾のインディー好きのお客さんもいた。

イベントが増えると、かける音源も増やさなければいけない。

台湾に行けない間は、「博客來」や「佳佳唱片」など台湾のオンラインショップをパトロールして、Spotifyで気になった曲やアーティストがSNSで告知した新譜を買ったりしていた。

「そろそろピンポイントで取り寄せた音源だけじゃなく、たくさん並んでいる中から音源を掘りたいなあ…」

そんな思いが募っていた2022年秋、日本から台湾への渡航規制が緩和されることになった。

もちろん、完全に自由ではないし、航空券も高くなった。(2019年頃には数千円で買えたLCCのチケットが、片道約30,000円に…!)
だけど行けないよりは全然いい。

仕事の都合をどうにかつけてタイガーエアで行きのチケットを取ると、一気に「また台湾に行ける」という実感が湧いてきた。

2022年12月。
ここからはじまる、4日間で10か所以上のローカル音楽スポットをめぐる旅。

DAY1 有名インディーズアーティストと、部活動が同居。高校のクリスマス会に潜入。

機内で眠っていたら、あっという間に台湾・桃園空港に到着。

飛行機を降りた瞬間、日本とは違うムシッとした独特の湿度をはらんだ空気に包まれて、台湾に来たことを実感した。

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入境エリアを超えると漂うかすかな八角のにおい。街へ出たときの、全身で感じた排気ガスと埃っぽさ、冬なのに梅雨時のような湿度の高さ。

久しぶりに台湾に来られた感動を味わう、というより「そうそうこんな感じだったよな…」と、記憶を確かめるような感覚だった。

4時間前まで、冬の東京にいたのに。

空港線で桃園駅に行き、そこから台湾鉄道に乗って向かった先は、コンサート会場でもなく、レコードショップでもなく…

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板橋市にある公立高校、板橋高中※の体育館。

※台湾では、日本でいう「高等学校」は高級中学校、略して「高中」と呼ぶ。

目的は、この日行われるクリスマス会「2022板橋高中聖誕晩會」。

クリスマス会といっても日本でよくある学校行事とは少し違う。

日本でいう文化庁にあたる、中華民国(台湾)文化部が補助金を出資するイベントで、2019年の<SUMMER SONIC>に出演した9m88、台湾のグラミー賞とも呼ばれる金曲奬を受賞した?te(壞特)など、現地の人気アーティストも出演するというものだ。

お客さんのほとんどは在校生だが、入場料300元を払えば一般人も入れる。

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受付でチケットを受け取り会場の体育館に入ると、1/3程度が板橋高中の生徒を中心としたお客さんで埋まっていた。

今回のお目当ては最近注目しているバンド・冰球樂團icyballだったけれど、開場から1時間半後の18:30に到着したら既に出番が終わっていた。タイムテーブルが出ないのも、それはそれで台湾らしい。

その日ステージで観たのは、

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漫画研究会による、現役高校生のヲタ芸パフォーマンス。

その他、ダンス部やラップ部、バンド演奏などなど…。彼らの発表の合間に9m88や?te(壞特)が持ち歌を披露する、ローカルとプロフェッショナルのハイブリッドなイベントだった。

高校生の全力のパフォーマンス、良かったなぁ。最近のHIPHOPブームの影響や中国語との親和性もあってか、ラップ部のレベルが高くて驚いた。軽音楽部の演奏は、ティーンらしい若々しさと勢いがあって微笑ましかった。

「2022板橋高中生誕晩會」
新北市立板橋高級中学

DAY2 ローカルレコードショップとライヴを満喫、台北市。

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台湾では、各地で蚤の市が開催されていて中には古いCDを売っているお店もある。

ざっと見回してみると、日本のディスクユニオンだったら300円くらいで売っていそうなものが、だいたい100元(≒当時のレートで450円くらい)で、円安の影響をここでも感じた。

(後から現地の人に聞いたところ、この蚤の市は業者が出品しているから高いようだ)

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日本もそうだけど、蚤の市事情には色々あるらしい。

Taipei Flea Market 台北蚤之市
台北市内で不定期開催

最新の情報はInstagramへ。

お昼前に到着したのは、日本にも支店がある大型書店「誠品書店」の信義店。

約3000坪の敷地に約100万冊以上の蔵書があり、その一角に音楽コーナーもある…大型の蔦屋書店のようなイメージのお店だ。

ここではCDやLP、7インチなど、探していた新譜をいろいろと買い揃えられた。

なかでもお気に入りは、台湾の伝統音楽とロックを融合したインディーズバンド「百合花」の2ndアルバム『不是路』。

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台湾のお葬式の祭壇をモチーフにしたデザインが独創的。

百合花に限らず、日本で作ったら制作費はいくらかかるんだろう…という凝った装丁が台湾のインディーズアーティストの作品で多く見られる。見た目の芸術性の高さは、音源をフィジカルで持っておきたい理由のひとつだ。

誠品生活信義店
台北市信義區松高路11號

朝から動き回って喉が渇いたのでここで一息。

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台湾随一のクラフトビール、臺虎精釀(TAIHU BREWING)のタップルーム「啜飲室 Landmark」で、1杯だけ飲んでいくことにする。誠品生活信義店から目と鼻の先にある、お洒落なお店だ。

タップリストのボードの前に立ち、英語と中国語の表記を見比べながら何を飲もうか思案していたら、お店の人が「どんなビールが好きなの?」と話しかけてくれた。ちょっとしたお節介があるのも、台湾に来た、という感じがする。

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啜飲室 Landmark
110台北市信義區忠孝東路五段68號

さて台湾には、時に私たちの想像を超えるくらい、
クセつよな個人経営のレコードショップがある。

今回の旅で「最強のクセつよ」を選ぶとしたら、このお店。

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「愛樂唱片」。

片付けが苦手なDJの部屋でも、倉庫でもない。れっきとしたお店だ。

店内のインパクトもさることながら、
ここは、入るのにも実は一癖ある。

事前のリサーチによれば、ビルの3階にあるはずだが、2階には美容室の入口があるだけで3階に上る階段が見当たらない。

意を決して美容室に入ってキョロキョロしていると、美容師のおばちゃんが話しかけてきたので、「愛樂、上?」とカタコトすぎる中国語とジェスチャーでなんとか伝えようとすると、おばちゃんはそうだと言う。

お客さんの髪を切りながらおばちゃんがあごをしゃくった方を見ると、明るい美容室とは対照的な薄暗いスペースがあって、その中央に段ボールやレコードが積まれている螺旋階段があった。

足の踏み場を探しながらおそるおそる螺旋階段をのぼっていくと、

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大音量のハードロックが聞こえてきた。
お店の入口に広がる、雑然と積まれた大量の段ボールと音源が無造作に入れられたいくつものビニール袋の塊に一瞬たじろぐ。どこを見渡しても音源音源音源…の山。

Instagramで投稿される几帳面な「今日の新入荷」からは想像できない光景に圧倒されていると、積み上げられた音源の間から、「何でも聞いてね、英語はそんなにわからないけど」と店長が気さくに声をかけてくれた。(あ、そこレジなんだ…)

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(店長のアラン・リャオ 廖俊貴さん)

すでにかなり買い物をしていて袋をたくさん抱えているのを見て、「荷物はそこのソファに置いていいよ」と言われるが、

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一瞬通り過ぎてしまうくらい、ソファも音源に埋もれていた。

段ボールの中までじっくり見たかったけれど、後の予定が詰まっていたので棚をざっと見て気になったCDを2~3枚ほど買ってお店をあとにした。

なお、このお店についてTwitterで投稿すると翻訳されて、店長に速攻で情報共有されると
もっぱらの噂だ。

もし日本の方が訪れたら、Twitterへの投稿もセットでぜひ試してみてほしい。

愛樂唱片
台北市中正區重慶南路一段44號3樓

続いてレコードショップ2軒目は、90~2000年代のポップスの中古CDを多く扱う啓元唱片。

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ここはとても整理されていて、20年くらい前の日本でよく見た「街のCD屋さん」のような雰囲気。

ざっと眺めただけでもワン・リーホン(王力宏)や、リッチー・レン(任賢齊)、ウーバイ(伍佰)など、ポップスター、ロックスターたちのCDがずらり。戒厳令解除直後でもない、現行のポップスでもない時代の音源を探している自分には、たまらないお店だ。

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初めて買い物した人はお会計から10%OFFになるようなので、少し昔のポップスが好きな方におすすめのお店。

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啓元唱片
台北市中正區林森北路5巷8號

今日は音源を買える場所をたっぷり巡ってきたけど、台湾旅行2日目の一番の目的はこれだ。

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台湾のバンド、椅子樂團 The Chairsのワンマンライヴ。

椅子樂團 The Chairsは、台湾のインディーズバンドの中で一番好きなバンド。1stアルバムのオーガニックなフォーク風のテイストから、活動休止を経て2ndアルバムは西海岸の雰囲気を持つアメリカンロックテイストへ。

台湾語詞の曲もあり、私が考える「台湾の音楽」を体現しているバンドだ。今回のライヴは、4thアルバム『香格里拉的呼喚Shangri-La Is Calling』のリリースツアーの台北追加公演である。

会場は、日本統治時代の工場をリノベーションしたクリエイティブ・アート空間こと華山1914文創園区の一角にある、約1000人キャパのライヴハウス「Legacy Taipei」。

ここは文創区全体で台湾のインディーズの祭典《Asian Rolling Music Festival》など大型のイベントも行なわれており、そのメイン会場となるライヴハウスだ。これまで、滅火器FIRE EX.、No Party For Cao Dong、美秀集團など、日本にもファンが多いインディーズバンドのワンマンライヴが開催されている。

SNSで並んだ順に入場という噂を聞いていたので、まあ開場の1時間前に行けばいいかなと思ってたら既に長蛇の列。

最前はさすがに無理かな…と思っていたら、

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どういうわけか奇跡的に最前の端っこを陣取ることに成功。

ずっと夢見ていた、椅子樂團のライヴ。最前で最高のパフォーマンスを観ることができた。

泣いた。

最高だよ椅子樂團。

どの曲も言葉にできないほど感激したけど、中でも印象的だったのは「Afrodite」。
もともと英語詞だった曲を、ゲストで登場した百合花のボーカルのイーシュオ(林奕碩)が台湾語で歌うというサプライズ。

周りを見てみると、台湾のお客さんも様々な形でライヴを楽しんでいた。

特定のメンバー推しと思われる、ずっと同じメンバーの動画を撮っている女性。
バックハグで楽しそうにステージを観ているカップル。
ヒット曲のイントロに思わず歓声をあげる男性。

日本にいるときはずっとアルバムやYouTubeで音源を聴いていたから、「音源と自分の世界」に浸っていた。現地のライヴに行くと、地元の人がどうバンドに接しているか、リアルな空気を感じられる。
そんな当たり前のことを、改めて実感できた。

Legacy Taipei
100台北市中正區八德路一段1號華山1914創意文化園區中5A館

DAY3 所狭しと並んだガラクタ、本格派ローカル蚤の市の洗礼。

台湾には、日本から移住してすっかりローカルに溶け込んでいる方々がいる。

現地で会社員として働く傍ら、バンド活動をしている新道さんもそのひとり。
台北コーリングの活動をする中で、SNSを通してできた知り合いである。

そんな新道さんにお誘いいただいて、とある蚤の市に向かった。

昨日と同じ感じなのかな、と思っていたら…

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これは、ガチなやつだ…。

所狭しと並んだガラクタ、使い道不明の謎の器具、古着や食器… その中で、カセットやCDが無造作に売られている。

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台湾では、標準中国語(いわゆる台湾華語)が公用語といわれているけれど、ここに集まる人たちは台湾語を話している。生の台湾語、初めて聞いたからちょっと興奮してしまった。

戒厳令下のレコードをいくつか入手しながら、

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CD専門のお店で、昨年レコードが再発されたスー・ホェルン(蘇慧倫)の『鴨子』を購入。

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常連らしきおじさんに「なんで(こんなに古い曲を)?」と聞かれたので、「欲しいから買うんです」と笑顔で答えた。

日本でそれなりのところから買ったら7000円くらいしそうな台湾ヴィンテージのお皿が200元(約900円)で売っていた。これも蚤の市の醍醐味。

とあるローカルな蚤の市
台湾北部のどこか

台湾の旅もあと少し。駆け足で、気になっていたレコード屋巡りを進める。

茉莉二手書店 影音館は品揃えと商品の状態がとてもいいので、台北で一番好きな中古レコード屋だ。

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2020年2月に来たときは支払い方法は現金のみだったけど、レジにクレジットカードのマークがついていたので、欲しいと思った音源は我慢せずに買った。店を出たら、2時間経っていた。

茉莉二手書店 影音館
100台北市中正區羅斯福路三段244巷10弄17號<.p>

茉莉二手書店影音館からほど近いところにある「レコード屋然」とした店構えの、個体戸唱片行 indie music。
お店の中は古い紙のような匂いがして、入った瞬間レコード屋さんだ~!とわくわくする。

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商品をレジに持っていくと、1枚1枚盤をクリーニングしてくれた。

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ここでは、ブラックビスケッツ「スタミナ」中文版の8cmCD、L.A.Boyz、伊能静、戒厳令解除以降の台湾ポップスのキーマン・ホンインリン(黄韻玲)がプロデュースしたアイドル?のアルバムを購入。こういう現地でしか手に入らないような音源に出会い、いろいろと吟味できる旅をしたかったんだ!

そういえば、以前来た時にはお店の看板猫がいたような気がするんだけど。
猫はどこにいってしまったのだろう…。

個体戸 indimusic
台北市大安區羅斯福路三段297-5號3樓

今回の音源探しの旅の最終地は、小白兔唱片 white wabbit records。

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MRT古亭駅から徒歩6分。住宅街の中にポツンと現れるお店だ。
最初に来た時は、「こんなところにあるの…!?」と道すがら不安だったのが懐かしい。

ここは、日本の台湾インディー好きの間で必ず名前が挙がると言っていいほど知る人ぞ知る場所で、気になった音源は視聴させてくれるので台湾音楽入門にぴったりなレコード屋だ。

店内では台湾インディーの新譜のほか、店員さんがセレクトした海外の音源も紹介している。昨今のレコードブームの影響で、数年前から日本の中古レコードも取り扱うようになった。

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Day2に買いそびれていた海豚刑警イルカポリス の新譜、厭世少年Angry Youthの1stアルバム、 浅堤Shallow LevéeのデモCD、ボカロの自主製作EPと思われる8cmCDを購入。

White Wabbit Records 小白兎唱片
106台北市大安區浦城街21巷1-1號

ホテルに戻って、旅行期間中に購入したアルバムを数えたら27枚だった。LPとカセットもあわせると40枚近くの音源を日本に持って帰れる。

当初の目的、「たくさん並んでいるなかから音源を掘る」が達成できて、とっても満足。

満足感と台湾への名残惜しさを肴にお酒が飲みたい気分になり、日本でもファンの多い台湾ウイスキーブランド、カバラン(KAVALAN)直営の「Kavalan Whisky Bar」へ。

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お店の表記はあるのにバーへの入口が見つからず、ドアを探して壁の前でうろうろしていたら、同じフロアにある焼肉屋の店員さんがこちらに気づき、「壁についている台湾島のエンブレムを押してみて」と一言。

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開いた。

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店内はイノベーティブレストランのような洗練された雰囲気で、日本語と英語が併記されているメニューが用意されている。

あとから旅行者と思しき2人組が入ってきたから、きっと観光客にも人気なんだろう。

Kavalan Whisky Bar
台北市中山區南京東路二段1號新生北路口2樓

DAY4 東京に戻っても「台湾感覚」が抜けない。

駆け足で、台湾のローカル音楽をめぐる旅はここでおしまい。
フライトは15時だけど、帰りは松山空港だからギリギリまで台湾を満喫できる。

初日からずっと雨で、10年ぶりの寒波が台湾に来たりしていたけど、最終日はすっきり晴れてお散歩日和だった。

この濃密な4日間を振り返ると久しぶりの台湾が嬉しくて、予定をぎゅうぎゅうに詰めてしまった。
もっとゆっくりしたかった…。他にも行きたいお店、いっぱいあったな…。

名残惜しいけれど、羽田行きの飛行機へ。

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東京に戻ると、まだまだ冬が続いていた。

暖かくて湿度のある台湾の余韻と、日本の冬の感覚が混ざってなんか変な感じ。

東京にいるのに、無意識にエスカレーターで右側に立とうとしてしまったり。
コンビニでレシートを受け取る時、「謝謝」と言いかけたり。

4日間だけだったけど、しっかり現実逃避できたみたいだ。

この原稿が世に出る頃の日本はもう、春の足音が聞こえているはず。
台湾への渡航制限は更に緩和されて、行きやすくなっているだろう。

コロナ前のように気軽に行けなくなっても、「好き」というポジティブな気持ちだけでいろいろな障壁を乗り越えられた。今回の旅は、これまでの訪台の中でも特に印象深いものになって一歩踏み出して本当に良かったと思う。もし迷っている人がいたら、「今の台湾」は「今」だけだから、とそっと背中を押したい。

INFORMATION

yukiさんが主催するイベント「台北コーリングvol.6」の開催が決定しました。
台湾にゆかりと愛のあるDJが集まって、台湾の音楽をオールジャンルでかけるイベントです。

yukiさんも現地で集めた音源をたくさんかける予定です。
ぜひ、台湾音楽で踊りに来ませんか。

日時:2023年3月5日(日)
場所:KUNI HOUSE さいたま市浦和区仲町1-8-1

詳細はInstagramへ。

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