SixTONESの快進撃に、休息はない。今年1月発表の2ndアルバム『CITY』から、たったの2カ月足らず。3月2日に、彼らの新シングル『共鳴』がリリースされる。

さて、本稿で注目したいのは、同作収録の新規MV。今回はそれぞれ、初回盤Aで“共鳴”、初回盤Bではカップリング曲“FASHION”のMVを楽しむことができる。前作シングル表題曲“マスカラ”でいえば、舞台やミュージカルのような「劇場風MV」仕立てのMVなど、映像作品においてもそのこだわりぶりに定評があるSixTONES。そこで今回は楽曲MVという切り口から、“共鳴”と“FASHION”の2曲をレビューしていきたい。

COLUMN:SixTONES

グリーンバック×画面転換で刺激を生み出す“共鳴”MV

TVアニメ『半妖の夜叉姫』弐の章 1月クールオープニングテーマに起用された表題曲“共鳴”。メンバー自身が好むロック・ヒップホップ・ジャズといったあらゆるジャンルのソースを同じテーブルに並べた、疾走感と力強さの同居する1曲だ。過去にも『半妖の夜叉姫』には、3rdシングル表題曲“NEW ERA”も提供しているが、同じミクスチャーロックでも、同楽曲に比べてビートを軽やかになり、今回はメンバーの織りなすハーモニーに重点が置かれている気がする。

そんな“共鳴”のMVを制作したのは、えむめろ。SixTONESとは、既発曲“うやむや”や“フィギュア”のほか、グループ初の“実写×アニメーション”を軸として、松村北斗×髙地優吾のユニット曲“真っ赤な嘘”のリリックMVでタッグを組んできたアニメーターだ。そんな経歴を高く評価されてか、今回の映像も“リリックMV”のような仕上がりに。

例えば、サビに登場する《どれが運命で なにが賢明なんだ?》というフレーズが画面上にいくつも敷き詰めて表現されている描写。文字というものを、歌詞を伝える道具として以上に、むしろ求めるデザインを完成させるためのパーツのような捉え方をしている。このあたりが、えむめろの作風といえるだろうか。

また、今回は映像全編を通して、メンバーをグリーンバック撮影したとのこと。メンバーの姿が画面上に切り取られてコラージュされた合成映像ということもあり、本来はあるはずの地面の概念が消失して、彼らのダンスが普段以上に広い角度から俯瞰できるようになっているのだ。

加えて、数々のシーンが矢継ぎ早に切り換わるところも大きなポイントだ。まるで戦いの場において、常に選択を迫られる感覚を与えるかのように、リスナーも自ずと集中力を求められ、映像の1秒1秒に目を見張ってしまう。何より、メンバーへの寄りからダンスの引きカットまで、まったく構図の違う映像が繋ぎ合わさっている。これはグリーンバックの効果と合わせて、いい意味でリスナーとメンバーの距離感を“バグらせる”。あくまで概観をさらったのみだが、“共鳴”のMVがいわゆる“2.5次元”的で斬新さを覚える映像として成立しているのは、このあたりが理由だろう。

『半妖の夜叉姫』について少し語っておくと、今回のダンスには作品を彷彿とさせる“弓を射る”振り付けなどが随所に挿入されている。SixTONESについては、サビ後半のフレーズ《代わりなんていない 僕ら》がとりわけ、「6人で歌う以外は考えられない」という旨をたびたび口にする、グループの結びつきを象徴するようだ。最後に、改めて今回のMVについて、四方八方から歌詞が飛び込んでくる光景が、まさに人と人が“共鳴”する姿そのものーーとまで喩えてしまうのは、さすがに筆者の考えすぎか。

SixTONES – 共鳴 [YouTube ver.]

多様なスタイリング、目まぐるしく展開される “FASHION”

カップリング曲“FASHION”はバブルガムポップに近い、突き抜けるような爽やかさと、どこか懐かしさも携えたものに。今回こそ夜のパーティをイメージしているようだが、晴れた休日に思わず出掛けたくなるような開放感なバイブスが伝わってくる。『CITY』収録曲“Ordinary Hero”や“Good Times”などを経て、こうした抜け感に優れた楽曲とますますの好相性を発揮しているようだ。

楽曲MVは、メンバーがティファニーブルーを基調とした自室風の空間で、タイトル通りに個性豊かな“ファッション”を次々に打ち出した“ルックブック”風の華やかな映像に仕上がっている。メンバーのゆるいインナー姿から始まり、1番では遊び心を効かせたセットアップ、そこから2番以降はカジュアルな服装となり、セレブ風、モード系、ストリート、アメカジ……と、思い思いのビジュアルが披露されていく。ジェシーのヒョウ柄コートを筆頭に、楽曲のテイストに合わせて一貫したバブリーさを漂わせているのも面白い。「世界中の洋服はお前らのものだ」とでも言いたくなってしまうほど、本当にどんなに派手な洋服でも着こなしてしまえる彼ら。アイドルとしてマガジンの表紙を飾るなど、豊富なモデル経験が楽曲でも大いに活かされているように思えた。

また“FASHION”では全員で揃うシーンがないことから、表題曲とは異なり、振り付けというある種の制約からも解き放たれる。そこで楽しめるのは、メンバーのアドリブ的な自由すぎるおとぼけ。田中樹がエレキギターを上下逆に構えて弾いたり、松村北斗が皿回しの要領でレコードをくるくるとさせたり。楽曲のサウンドも相まって、くだけた雰囲気が心地よいシーンばかりである。

動画の編集方法にもポイントが。料理動画で例えるならば、空中に投げた食材が次の瞬間、カットされた状態で手元に戻ってくるようなジャンプカットがテンポよく展開されている。メンバーが体に重ねた洋服がメロディに合わせて瞬時に着せ替えられるなど、この手法こそが楽曲の軽快な持ち味を大いに引き出しているのだ。同時に、途中で何度も挟まれるメンバーソロカットの静止画は、あえて画面の縦横比にならわずマガジンのワンカット風に仕立てられており。まるで何かの撮影中にメンバーと一緒に撮りたてほやほやのデータをチェックしているような……。そんな幸せな感覚にさせられる演出だった。

楽曲自体の補足をしておくと、SixTONESはヒップホップカルチャーの中で知られるモチーフをポップスの領域で違和感なく表現するのが上手いグループだと、改めて実感させられた。ジェシーが《Brand new な kicks 履いて》と歌うように、まるで“下ろしたてのスニーカー”のようなフレッシュさはヒップホップにおける格好よさで重要視されるひとつのポイントだ。そもそもファッションにおける靴という要素自体が、ヒップホップとは結びつきが強いものだし、そうしたお作法的な表現やギミックをさらりと自分たちの歌に溶け込ませるあたりが、とても彼ららしく思える。

もっと言えば、“FASHION”のMVで見られるようなハイプなファッションとヒップホップは、カルチャーとして切っても切れない関係性にあるもの。そうした意味で、SixTONESがこの楽曲を歌うのは、もはや運命だったとも感じられる。本当にヒップホップが大好きなグループなのだろう。それこそ、人々の憧れの対象として《Cover girl, Rap star それとも Like a movie star?》とすら歌っているわけだし。

また《世界中がキミの Runway》のフレーズから想起させられたのが、4thシングル『僕が僕じゃないみたいだ』収録曲“Strawberry Breakfast”。リスナーに向けて《主演女優賞をあげる》と歌ってくれた彼らが、またしても我々を特別な存在だと祝福し、背中を押してくれる。自分らしく好きなファッションに身を包み、ありのままでいれば、いつだって最高の気分になれる。新しい洋服を着てスマイルを見せよう。“FASHION”のMVは、SixTONESがそのお手本を見せてくれるような傑作だ。

Text:一条皓太

SixTONES – FASHION [YouTube ver.]

PROFILE

SixTONES 『共鳴』のMVから紐解く、“共鳴”“FASHION”が象徴するメッセージ column220301_sixtones-01

SixTONES

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SixTONES 『共鳴』のMVから紐解く、“共鳴”“FASHION”が象徴するメッセージ column220301_sixtones-02

共鳴

2022年3月2日
SixTONES
初回盤A
Disc1(CD)
M1.共鳴
M2.Waves Crash
Disc2(DVD)
V1.共鳴 -Music Video-
V2.共鳴 -Music Video Making-
V3.共鳴 -Dance Performance Only ver.-

初回盤B
Disc1(CD)
M1. 共鳴
M2. FASHION
Disc(DVD)
V1.FASHION -Music Video-
V2.FASHION -Music Video Making-
V3.FASHION -Music Video Solo Movie-

通常盤
CD Only
M1.共鳴
M2.FASHION
M3.Gum Tape
M4.マスカラ -Emotional Afrobeats Remix-
M5. 共鳴 -Instrumental-

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