見る者すべてを強制的にブチ上げる。それこそ、SixTONESによる表現の真骨頂だ。

8月5日、YouTube限定でMV公開された新曲“PARTY PEOPLE”。SixTONESにとって初となるサマーチューンは、事前告知なしのサプライズ解禁となったほか、同MVがまたしてもファンの求めるテイストをど直球から狙いに行く一曲に。思えば、トロピカルハウス調などの爽やかなものがメインストリームを占めていたここ数年の夏うた。対する“PARTY PEOPLE”は、甲高いブラスが映えるミクスチャーロックで、ORANGE RANGEや湘南乃風など、いわば「平成レトロ」を想起させる。灼熱の太陽のように、王道の“ギラギラチューン”に仕上がっているのだ。

ハメは外しても、楽曲は外さない

メンバーによるサビまでのマイクリレーについては、ワンフレーズを歌い終えるところでの「がなり」を加えたボーカルのニュアンスの付け方が、普段よりも切れ味鋭く感じられる。なかでも、この楽曲で一際冴え渡るのが、田中樹によるラップパート。前作シングル表題曲“わたし”ではラップを封印していただけに、ファンとしては待ってましたと言わんばかりだろう(というより“わたし”からの振り幅が大きすぎるのも、いつもながらのSixTONESらしいあたりだ)。舌の転がし方やハネ感を重視した発声は、他メンバーと比べてもやはりラップでこそ光るもの。詳細は後述するが、《So Eeeny, Meeny, Miney, Moe》(=どれにしようかな)など、こうした内容の楽曲でこそリズムも意味もぴしゃりとハマってくる。

ただ、サビは全体を通してどこか涼しげな印象も。“わたし”で表現したシルキーなハーモニーについては以前のレビュー時(https://qetic.jp/column/sixtones-watashi-220525/431119/)に言及した通りだが、このあたりの軽やかな聴き心地は、彼らの歌声も持ち味でもあり強みである。それでいて、歌い出しの《NANANA…》に立ち帰れば、夏感しかないシンガロングは、とにかく汗だくで熱っぽい。そのほか、1番から2番までのブリッジのベースなど、いい意味で楽曲の「チャラさ」を引き立たせている。本当ならばトラックについても深く語りたいところだが、今回はこのあたりで留めておこう。

それにしても“Special Order”や“RAM-PAM-PAM”など、これまでに数々のフロアバンガーを発表しているSixTONES。“PARTY PEOPLE”を聴いて、サングラス越しに照りつける太陽、腕に塗った日焼け止めから漂ってくる夏の匂い、ビーチで隣のグループから飛んでくるスイカ割りの飛沫など……。この楽曲を聴くと、かつての夏の記憶を呼び起こされるリスナーもいることだろう(あるいは、楽曲の勢いが凄すぎて考える余地もないだろうか)。ハメは外しても、楽曲は外さないあたり、流石はSixTONESの一言に尽きる。

“再生後1秒で大笑い“
SixTONESらしさが詰まったMV

そんな“PARTY PEOPLE”は、MVの威力もまた桁違い。そもそも、今回は楽曲公開のプラットフォームを映像主体のYouTubeとTikTokに限定しているだけに、映像面には特にこだわりを感じさせる。通常であれば、楽曲からMVが生まれる流れだが、今回はむしろ、MVを作るために楽曲が生まれたと思わされるほど。つまり、MVがなければ“PARTY PEOPLE”ではないと言い切ってしまいたくなるくらい、ファンが求める要素が詰め込まれているのだ。

現に、あくまで筆者の所感だが、再生後1秒で大笑いをしてしまった。冒頭から、これから夏が始まる、今から我々は夏になるのだと「わからせられる」映像なのである。前述した大笑いの原因は、トップバッターであるジェシーの“浮かれポンチ”具合。彼が柄シャツ姿でこちら側に向けて吠えてくるあたり、ここから数分間、絶対に面白いことしか起こらないのだと期待しない視聴者はいないだろう。

余談だが、グループの公式TwitterではMV解禁に先駆けて、各メンバーの顔を映さない形で衣装カットを事前予告していた……のだが、添付された写真がモロッコテイストであることに驚く声や、それが実はジェシーの自宅ではないかと指摘するコメントも秀逸だったと付け加えておきたい。

メンバー衣装については、6thシングル『共鳴』収録曲“FASHION”から継続して、今回もファッショニスタぶりを披露。なのだが、京本大我のタイダイのほか、メンバー全員が柄シャツを着用。そして、SixTONESにサングラスは、令和版の鬼に金棒である。

そんな彼らがMV冒頭、ビーチを歩いている自分自身へと次々に誘い文句を投げかけてくるように、とにかく顔を近づけてくる。前述した《So Eeeny, Meeny, Miney, Moe》のリリックは、このシチュエーションに最大級に相応しいものだ。そこから2番では、《ここまで本気にさせといて はぐらかすつもりなんて》などの歌詞に沿って恋の駆け引きにおける“引く”スタンスを示してきたかと思えば、最後には花火にシャンパンに──。楽曲タイトルにここでようやく言及しよう。「パリピ」のすべてがここにあると。

とはいえ、今回の見どころはそれだけではない。サビでは引きの画角から、メンバー全員でのダンスがしっかりと捉えられている。ファンにはお馴染みだろうが、振り付けは今回もGANMIが担当しており、腰振りに意識が向けられるセクシーなものに。なかでも親指と小指を伸ばす、いわば“パリピポーズ”を大きく左右に振ったり、同ポーズをドリンクに見立てて、飲み物が体に流れ込む様子を抜群のボディウェーブで表現したりと、ダンスに馴染みのない人でも真似ができる楽しめることを前提に、プロが踊ることで技術的な深さや格の違いを追求できるようにもなっているのだ。

振り付けの難易度でリスナーが踊れるものを提供しつつ、そこにSixTONESの振り切れたヤンチャさが重なることで、ますます踊りやすいものに昇華される。ヤンチャさとダンスという点で、双方を両立できるのも彼ららしい表現の真骨頂だろう。この夏、絶対にこのダンスで盛り上がりたい。……盛り上がりたくない?

形に囚われない“表現への想い”

さて、本MV解禁直後の8月6日には、ジェシーと田中がラジオ番組『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』に出演。ジェシーが「ほぼ自由」、田中が「朝が早くても苦じゃなかった」と、今回のMV撮影の楽しさを振り返るなかで、田中から核心を突く発言が。本楽曲が現時点でパッケージ化を予定していないことについて「僕たちにとって音楽は大事な武器で、大好きなもの」「商品としてのシングルやアルバムなどに囚われずに、楽曲を皆さんに届けるというのもSixTONESにとってすごく意味のある表現方法」とコメントしていたのだ。

さらに「純粋に楽曲を楽しんでもらって」とジェシー。今回の楽曲制作も、楽しいことをしたいからただそうしただけという話の流れで「そういうノリなんだよね、SixTONESって」と田中がそれぞれ明かす。実際に、YouTubeでのプレミア公開時には約13万人が同時視聴、8月9日時点でも1500万回以上もの再生回数で、急上昇ランキング第1位という確かな実績を記録。彼らの純粋なエンタメ精神には確かな求心力が伴っていると証明するに他ならないものである。

最後には、田中から「どこで新曲が解禁されるかわからないから、team SixTONESは気を抜くなって」との気になる宣言もあった同ラジオ。現にその3日後に新曲“Sing Along”が使用された、ジェシー・松村北斗出演のECCジュニアのTV CMの発表もあり、ますますその“言葉”の意味を強くさせた。そうなると、次なるYouTube等での限定楽曲や、誰もが首を長くして待っているサブスクリプション解禁ももしかすると……。そんな期待感に胸を膨らませつつ、まずはSixTONESとともにパリピになって、まだまだ続くこの夏の暑さを、逆に楽しみ尽くしてやろうではないか。

Text:一条皓太

SixTONES – PARTY PEOPLE

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SixTONESがYouTube限定で新曲を発信した意義──“PARTY PEOPLE”から真骨頂を紐解く column220809_sixtones-01

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