SixTONESが『Feel da CITY』で魅せた
“アーティストとしての佇まい”

SixTONESはこれから、もっともっと「SixTONES」になっていく。この言葉は、彼らが2021年10月に発売したライブ映像作品『on eST』をレビューした際、筆者が記事の幕切れに綴ったものだ(レビュー:SixTONESがアリーナツアー<on eST>で体現、従来のアイドルソングを覆すオントレンドな音楽性とステージパフォーマンス)。

この“SixTONESになる”とはどんな意味だったのか。様々な定義が思い浮かぶなかで、うちひとつに“アーティストになる”という言い換えができると思う。SixTONESがアイドルではなく、もっともっとアーティストとしての佇まいを獲得していく。そう考えさせられたのは、9月28日に発売されるライブ映像作品『Feel da CITY』の視聴を終えてのことだ。

同作には、SixTONESが今年1月から約半年弱にわたり開催した全国アリーナツアー『Feel da CITY』より、1月6日の神奈川・横浜アリーナ公演の模様を収録。同ツアーで最初に訪れる土地にして、彼らがジャニーズJr.時代より親しみのある、いわば“ホーム”のような会場。何より、本番前日は今回のセットリストの中核を担った、2ndアルバムにして名盤『CITY』発売当日という好タイミングだったわけである。決して筋書き通りのライブにせず、街から街へと火をばら撒いていく。そんなメンバーのバイブスは、画面越しでも熱すぎるくらいに感じられるはずだ。

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ロック、ダンスチューン、ニュージャックスウィングまで
“踊れる楽曲”が凝縮

本題に入ろう。それでは、アーティストが作り出す“最高峰の表現”とは何なのだろうか。言わずもがな、明確な答えはない。アーティスト自身の得意とするジャンルによっても十人十色だろう。ただ、少なくともSixTONESにとって、それは“踊れる楽曲を提示”することだと思う。“キングオブステージ”と言われんばかりに、ペンライトのみならず、首をも振れる音楽を届けることだと日々、感じている。

それを今回のライブで特に証明してくれたのが、本編2ブロック目。6曲目“Dawn”から14曲目“WHIP THAT”までだ(と書いていて改めて思ったが、ユニット曲を挟むにせよ9曲連続で披露するスタミナが凄すぎる)。勇敢な男の意志を歌うゴシックテイストなワイルドロック“Dawn”に始まり、“Papercut”では80年代テイストを織り交ぜた色気のあるミドルダンスチューンに。

そこから“Papercut”と同じ毛色の王道ディスコチューン“Odds”へと気持ちよくパスすると、お次はなんと、アルバム『CITY』初回盤Bのみに収録された、ジェシー×森本慎太郎によるユニット曲。ニュージャックスウィングを取り入れた“LOUDER”である。こんな美しすぎる流れはもう、全人類が漏れなく頭を振りまくるに違いない。むしろ、ここまでダンス系の楽曲が続いていて踊らない方が失礼。もちろん筆者も画面に映るSixTONESに捧げるかのように頭を振り倒した。

“人を踊らせる”域に達している

少し私情を挟んだが、このあたりのパフォーマンス映像を観た視聴者のなかには、“いかにもアイドルらしいラインダンスだ”と思う方もいるかもしれない。たしかにメンバーが花道に並ぶ姿は一見するとそうとも取れるのだが、ハンドマイクを持つ代わりに足元のステップを重視したダンス、演出とダンスの相性、何より彼らの“歌”に比重を置いたステージを見れば、考えが変わる可能性もあるのではないだろうか。

これは決してアイドルとアーティストという概念を並べて比較して、上下関係をつけようとしているのではない。“Papercut”や“LOUDER”など、SixTONESの楽曲は“人を笑顔にする”次元を超越して、“人を踊らせる”域に達している。ただそれだけを伝えたいのだ。

恐ろしいのは、この2ブロック目が現時点でまだ折り返しにすら到達していないこと。“LOUDER”以降を駆け足に紹介すると、松村北斗×髙地優吾のユニット曲として、TikTokのバズメイカーこと和ぬかが提供した和メロ〜チャイナポップな趣きを感じる“真っ赤な嘘”、当時発売前だった6thシングルからの先行披露曲として、ロック方面でも“踊らせられる”ことを示したハイスピードな“共鳴”。さらには、冬の日を思わせるようなメロウなHIPHOP調のトラックの上で、最愛の人への想いをチルに歌うR&Bバラード“love u…”でも、自然と身体を揺らされる。

2ブロック目の終盤は、エレクトロ〜トロピカルハウスな“You & I”と、ダーティなEDMチューン“WHIP THAT”と、徐々にボルテージを上げていく形でオチが付けられる。振り返ると、アルバム『CITY』収録曲はもちろん、前回のライブではお披露目とならず、ファン待望だった2ndシングル『NAVIGATOR』カップリング曲から、まだ発表前の楽曲まで。ライブ本編のラストスパートなどにシングル表題曲を並べ、メジャーデビュー以降の歴史を感じられたこともまたオツなことに違いない

『Feel da CITY』の全貌で描いたもの

しかしながら、こうしたグループの先進性を示す、“精鋭”と呼ぶに相応しい楽曲を集めた2ブロック目。もちろん、team SixTONESは特典映像まで余すところなく視聴するに違いないが、家族や友人に本作を貸し出す(あるいは“布教する”と言った方が伝わりやすいか)際には、この2ブロック目だけでも観てほしいと、何度でも念押ししてほしい。本稿を読んでいる読者が、“大事なことは2回言うタイプ”だと信じている。

それ以外にも、京本大我×田中樹ペアでの“With The Flow”は、京本がギターを弾き、田中がリリックを書き上げたというメンバー自身も制作や楽器演奏に携わった楽曲。この情報は、田中が歌唱前にも説明していたが、その際の口ぶりはとても自信と充実感に満ち溢れたものだった。

また、ライブ序盤まで遡って、“S.I.X”はいつもの頼れるフロアバンガーだったし、3ブロック目の幕開けとなった“Everlasting”、本編ラストの“Good Times”、この日のフィナーレを飾った“Cassette Tape”と、要所ごとに挟まれたバラードは、エバーグリーンなサウンドでSixTONESの歌の温かさを体現してくれる。本稿では2ブロック目を特筆して取り上げたが、この日に披露されたアンコールを含み、30曲すべてが、彼らが描く街の主人公だったのだ

当初の予定では、SixTONESとステージで使用するハンドマイクの関係性という、もう少しアーティストチックな話題を掘り下げるはずだったのだが、ここまで収録内容について少し語りすぎたために割愛するとして、本稿の締めくくりに、全国アリーナツアー『Feel da CITY』の全貌に改めて触れていきたい。

SixTONESにとって、同ツアーはメジャーデビュー後初となる、当初計画の全公演を完走する思い入れ深いツアーとなった。そのタイトルに掲げたのは“Feel da CITY=街を感じる”。前回ツアー『on eST』にて自らの“最上級”を更新したとなれば、そのスキルや想いが自身の周囲=街へと拡張していくのは自然な流れだろう。ライブ序盤に放たれた「ここがオレたちの街だ!」というパンチラインは、誰もの心に刻み込まれたはず。同時に、北は北海道、南は熊本まで。全国を飛び回るツアーを経験したことで、メンバー自身もライブ参加者とは別の意味から各地方の“街を感じ”、街を拡張させていったのではないだろうか。

さて、SixTONESはこのたび、同ツアーで日本全国を“オレたちの街”に染め上げたわけだが、それはつまり、彼らの音楽を受け止めるために、この日本という街ではすでにキャパシティが目一杯だということ。となると、1ファンとしての勝手な期待と願いとしては……。SixTONESに、この街はもう狭すぎる

Text by 一条皓太

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INFORMATION

> SixTONES - 『Feel da CITY』を2ブロック目だけでも観るべき理由 column220924_sixtones-01
『Feel da CITY』通常盤ジャケット

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