だが、情熱さえあれば“こっから”始められる

だが、情熱さえあれば“こっから”始められる──SixTONES、10thシングル「こっから」とドラマ『だが、情熱はある』との共鳴 column230604_sixtones-02

SixTONESの通算10枚目のシングル“こっから”が、6月14日にリリースされる。

“こっから”は日本テレビ系で放送中の、森本慎太郎(SixTONES)が南海キャンディーズの山里亮太を、高橋海人(King & Prince)(※高=はしごだか)がオードリーの若林正恭を演じるドラマ『だが、情熱はある』の主題歌として書き下ろされたもの。ブレイクビーツやラップを大々的に導入したヒップホップ調のトラックで、「天才でもないし人としても未熟、だけど情熱さえあれば“こっから”始められる」という熱いメッセージが込められたリリックが、ドラマの内容と深くシンクロしておりすでに大きな話題となっている。

『だが、情熱はある』は、のちにユニットコンビ「たりないふたり」を結成し数々の漫才を生み出す山里と若林を、幼少の頃から描く「ほぼ実話」のドラマである。プロデューサーは、『すいか』(2003年)『野ブタ。をプロデュース』(2005年)といったドラマや、森本主演の朝ドラマ『泳げ!ニシキゴイ』(2022年)、高橋出演の映画『ブラック校則』(2019年)なども手掛けてきた河野英裕。

【だが、情熱はある】5分でわかる!第1話ダイジェスト!【#髙橋海人 #森本慎太郎】

実は河野は、「たりないふたり」の存在を知らずに山里と若林の人生が交差するドラマを立案したという。以前からそれぞれのエッセイを愛読し、「2人の実話ベースで、新しいタッチの物語を届けられるんじゃないか」(*)と思い立った河野が、その企画を持ち込んだ先は奇しくも日本テレビの編集部。そこは「たりないふたり」の仕掛け人であり、企画演出を手掛けた安島隆(ドラマでは、薬師丸ひろ子が彼をモデルにした島貴子を演じている)の所属する部署だったのだ。

「自分が尊敬しているプロデューサー(河野)さんが、たりないふたりをまた12年後に見つけてくれた」(*)「これは運と縁でしかない」(*)

企画を受け取り、そう感じた安島が山里と若林に企画を打診。好感触を得たことから話が進み、実現に至ったという。

(*)「12年越しに見つけた“たりないふたり” 『だが、情熱はある』P×仕掛け人・安島隆が語るドラマ化秘話」(https://www.oricon.co.jp/news/2274219/full/

ドラマ放送前から話題になっていたのは、その意外なキャスティングだ。特にSixTONESの森本が山里を、King & Princeの高橋が若林を演じることについてはSixTONESとKing & Prince、そして南海キャンディーズとオードリーそれぞれのファンからも賛否両論が渦巻いていた。が、実際に放映されるとそのクオリティの高さに誰もが驚かされることに。森本も高橋も、本人たちへの取材はもちろん、過去の映像や著書、出演ラジオなどのリサーチを重ねながら役作りの精度を上げていった。髪型やファッションだけでなく、話し方や身のこなし、表情に至るまで、まるで憑依したかのように本人になりきった2人の演技を見ていると、本当に山里と若林がそこにいるような気がしてくるから不思議だ。

そうした森本と高橋の演技に本人たちも絶賛。若林は自身がパーソナリティーを務める『オードリーのオールナイトニッポン』で、全く売れていなかった不遇時代のシーンを取り上げ、「もうやめたほうがいいんじゃないかな」と相方の春日俊彰(演:戸塚純貴)が住む「むつみ荘」へ打ち明けに行った時の、高橋のアドリブのように自然な演技を「完全に俺の気持ちを理解してくれてた」とコメントしていた。

一方、山里もドラマ放映時にはリアルタイム視聴をしながらTwitterに連続投稿をしており、相方である「しずちゃん」こと山崎静代(演:富田望生)の人気に嫉妬する過去の自分を忠実に演じている森本について、「これ、森本慎太郎くんが嫌われてしまわないか心配だよ」と呟いていた。

SixTONESとして常日頃、身体能力を鍛えている森本だからこそなし得た「役作り」

圧巻だったのは第7話。南海キャンディーズが『M-1グランプリ 2004』に出演し、披露した「医者ネタ」の完全再現シーンだ。映画『ソロモンの偽証』(2015年)では体重を15キロも増量して役作りに挑むなど、憑依型の俳優として評価の高い富田望生が扮するしずちゃんと共に、細部に至るまで作り込んだ漫才は、まるで映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)で、クイーンの『ライブエイド』出演シーンを「完コピ」したラミ・マレックをも彷彿とさせるものだった。

【だが情熱はある】第7話で放送された南海キャンディーズ「M-1グランプリ2004」の漫才、未公開シーンを含む約4分のフル尺漫才初公開!

こうした精度の高い再現について森本は、5月31日にゲスト出演したラジオ番組『水曜JUNK 山里亮太の不毛な議論』で、「ダンスを覚える感覚に近い」「『このセリフのときに、こういう動きをしてるな』と映像を何回も見て、山里さんの動きに合わせて真似ている」と明かしていた。SixTONESとして常日頃、身体能力を鍛えている森本だからこそなし得た「役作り」といえるかもしれない。ちなみにこの時のラジオ放送で山里は、森本と富田の演技に刺激を受け、「南海キャンディーズで久しぶりに『医者ネタ』をやってみようと思って」と話していた。ドラマが現実に、こうやって影響を与えているのもスリリングだ。

他にも、お笑い芸人のTAIGAやバーモント秀樹、放送作家の藤井青銅らが実在のモデルとなった役柄を演じるなど、不毛リスナー(*)やリトルトゥース(*)のツボを押さえた仕掛けが随所に散りばめられている。何より、山里と若林がこれまで著書(『天才はあきらめた』や『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』『ナナメの夕暮れ』など)やラジオで話していた「想像上のエピソード」が映像となって目の前に立ち現れるたびに、彼らのファンであればあるほど胸が熱くなるはずだ。

*TBSラジオ『山里亮太の不毛な議論』
*『オードリーのオールナイトニッポン』リスナー、広くはオードリーファンを指す

さて、冒頭でも述べたようにドラマ『だが、情熱はある』の主題歌“こっから”は、森本が所属するSixTONESが担当している。作詞作曲は、関ジャニ∞“YOU CAN SEE”(2009年)で作家デビューを果たしたSAEKI youthKことシンガーソングライターの佐伯ユウスケ。迫力あるサックスのリフに導かれ、ワウギターが炸裂するヒップホップやファンクの要素を取り入れたミクスチャーサウンドに仕上がっている。うねるベースラインに絡みつくような怒涛のマイクリレーに続き、ドラマでは山里役の森本が叫ぶようにラップするサビ前は聴きどころの一つ。《これだけじゃやれねえってわかってる でもこれしかねぇからこれにかかってる 間違ってる未来でも俺には光ってる》というラインは、若き日の山里亮太の、そして若林正恭の「心の叫び」とも共鳴しているようで、ドラマの中で流れるたびに熱い血が滾るようだ。

今、この原稿を執筆している時点でドラマは第8話が終わったところ。いよいよ佳境に入っていくストーリーは、一体どこまで描かれるのか。あのエピソードや、あの人物はどんな形で再現されるのか。そして、この主題歌“こっから”が、私たちの心の中でどのように響き方が変わってくるのか。これからも目が離せない。

SixTONES – こっから [YouTube ver.]

Text:黒田隆憲

INFORMATION

だが、情熱さえあれば“こっから”始められる──SixTONES、10thシングル「こっから」とドラマ『だが、情熱はある』との共鳴 column230604_sixtones-01
通常盤ジャケット

こっから

2023年6月14日
SixTONES

予約はこちらSixTONES 10thシングル「こっから」DISCOGRAPHY