11thシングル『CREAK』メンバーソロ楽曲を全曲レビュー

前作シングル『こっから』をリリースしたのが、6月14日のこと。それからわずか3週間足らず。詳細は後述するが、SixTONESがまたしてもサプライズで、本当に“しれっ”と新曲情報を解禁してきた。

ということで、SixTONESが8月30日、11thシングル『CREAK』をリリースする。表題曲は、メンバーの松村北斗が、なにわ男子・西畑大吾とともに主演を務めるミステリードラマ『ノッキンオン・ロックドドア』(テレビ朝日系)主題歌に起用。ドラマがクランクインしたタイミングで、SixTONES公式Instagramでは、西畑が松村についてどれだけ詳しいかを試すクイズ企画「ノッキンオンマツムラドア」に挑戦したのだが、なんの前触れもなく新曲情報が明かされたのもここでのことである(こうした楽曲解禁サプライズの振り返りも記事としていつかまとめたいものだ……)。

そして、本稿の本題はここから。今回のシングルの初回盤A・初回盤Bには、ファンであるteam SixTONES待望だった、デビュー以来初となるメンバーソロ楽曲を収録。初回盤Aでは、松村、髙地優吾、ジェシーが自分の内面、仲間への感謝、人への愛情など“愛”を歌う楽曲を。初回盤Bでは、京本大我、森本慎太郎、田中樹が意中の相手への想いや、うまくいかないもどかしさなどの“恋”を歌った楽曲を楽しむことができる。

ただ、田中樹のセルフライナーノーツに記載されていた通り、メンバーソロ楽曲といえど、1人のアーティストとしてではなく、あくまでもSixTONESの世界観を個々に表現し、メンバー全員の想いを背負うことに挑戦したという意識が強いようだ。すでに8月12日より、各楽曲のメイキング映像が公開されているが、今回はメンバーソロ楽曲のみに焦点を当ててレビューしていきたい。

【レビュー】SixTONES 、11thシングル『CREAK』メンバーソロ楽曲を全曲視聴 column230820_sixtones-creak-03

松村北斗「ガラス花」

松村北斗に感じる、触れたら壊れてなくなってしまうような──だからこそ、その影に惹かれてしまう危うさ。まるで“ガラス”のようである。

今年10月公開予定の映画『キリエのうた』で松村と共演し、本楽曲の作詞作曲を手がけたアイナ・ジ・エンドもまた、7月18日放送のラジオ番組『SCHOOL OF LOCK!』にて、今回の制作を振り返り同様のことを語っていた。「感性が芽吹いてて、歌にまったく同じフレーズがない」「歌うたびにどんどん変わっていくし、どんどん色んな挑戦をしてくださるので、テイク選びにすごく悩みました」と、レコーディングの際にはかなりの試行錯誤があったようである。

そんな楽曲の全体像は、ストリングスが胸をきゅっと締める抒情的なバラード。かつて「わたし」で発揮されたような、松村の儚い恋愛が似合ってしまう歌声にこれ以上ない最適解を提示してくれている。折角なので、この楽曲のテーマについてはあえて隠しておきたいのだが、タイトルにあるガラス花は、大切な人への想いの欠片や涙。そして明確に“ある物”のメタファーとなっているのだが……《僕》と《君》の想いが2番から対比的に切り替わる歌詞を読み、その正体を想像してみてほしい。本当に、松村北斗という人間に対する、アイナ・ジ・エンドの解像度の高さには脱帽だ。

SixTONES – ガラス花 (Hokuto Matsumura) [1 minute teaser]

髙地優吾「MUSIC IN ME」

髙地優吾は、こんな音楽を聴いて育ってきたに違いない。そんなことを考えてしまう、心温まるラップミュージック。サウンドやラップのフロウは、2000年代のヒップホップを踏襲したもので、後述する田中樹“Sorry”よりもポップス寄りなぶん、普段聴きしやすいかもしれない。ラップの発音も、バースではトラックに叩きつけるように。フックではメロディを歌いながら伸びやかに。こうした歌声の切り替え方や、フックの後に英語詞×コーラスのようなメロディでもうひと伸びをする楽曲構成など、まさしく当時のレガシーを追いかけたものといえる(筆者はKREVAを思い出した)。

楽曲で歌っているのは《夢果たすため来たFrom港町》という出身地=神奈川・横浜から始まる、自身の半径1メートルにあるものを描いた物語。2番以降では、SixTONESやteam SixTONESを強く意識した言葉が並ぶのだが、自分たちはどこまでも行ける。自分以外のメンバーや、ファンの声すら、自分の内側から鳴っている音楽なのだ。そんな宣言をしてくれるようなエールソングで、本当に一言一句、余すところなくチーム愛に溢れている。

日常の頑張りどころではもちろんだが、個人的にはいつかグループで活動した日々を振り返ってお互いを讃えあう日など、タイムカプセルのように大切にしまっておき、節目のタイミングでこそ聴きたいとも思えてしまった。

SixTONES – MUSIC IN ME (Yugo Kochi) [1 minute teaser]

ジェシー「Never Ending Love」

「本当にずっと待ってたから」「オレもデビューできて、同じ土俵というか、ステージに行けたから」と、この楽曲の制作が誇張抜きで“念願”だったと、メイキング映像にて深く語るジェシー。映像内では、8〜9年以上前から、“この人と曲を作りたい”と繰り返していたとも明かされている。その人物は、事務所の先輩である堂本剛。

堂本といえば、ENDRECHERI名義での活動が思い浮かぶのだが、今回の楽曲はファンク路線ではなく、むしろ“スペーシー”と呼ぶのが相応しいだろうか。レビューの意義に反して申し訳ないのだが、この楽曲だけはあえて雰囲気や展開について詳しく明かさず、ぜひ前情報なしでフルコーラスを体感してほしい。とはいえ、全体像について少しだけ話すとすれば、満ちては引いていく、波のようなピアノバラードの印象がある。太いベースに支えられつつ、ボーカルやギターソロを含め、エコーなど奥行きあるエフェクトを多用しているのが面白い。

また、Aメロが1ループ終わるタイミングのスキャットの唸り方や、全体的な哀愁漂う歌声の揺らし方に、堂本のそれに限りなく近いものを感じた。長年、相手を見てきた間柄からこそ実現できる表現の域。改めて、堂本は最高な先輩で、ジェシーは最高な後輩であると感じさせられる。濃密な音楽体験を、ぜひとも。

SixTONES – Never Ending Love (Jesse) [1 minute teaser]

京本大我「We can’t go back」

今回のソロ楽曲企画で、メンバー唯一の自作曲を携えて挑んだのが京本大我。7年前に1人で制作した原曲から、生バンドと10名以上のオーケストラによって、サウンド面で生まれ変わりを見せながらも、メロディは完全に当時のまま。歌詞もアレンジを加えたのはたった1割ほどだという。分厚い音のロックチューンながら、どこか柔らかな印象は忘れない。ハイトーンな京本の歌声とも好相性だが、それは自作曲だからという理由が大きいのかもしれない。

歌詞の内容は、自分の見ている世界のすべてを捧げたって構わない。かつての失恋を引きずりながらも、大切な人を想う気持ちは過去の時間軸を語ったものではなく、現在進行形で、いまも変わらずに育み続けられているものであるという、既存のラブソングの枠組みを越えようとする気概を感じられる。どこか若く、青く、壮大すぎるくらいに聞こえてしまう歌詞もあるかもしれない。しかしながら7年前の京本を思えば、当時の彼にとってそれが何よりもリアルであり、“そうでもしないと表現できない”とただ一点を信じ抜き、表現を突き詰めることもまさに若さともいえる。

形は変われど、当時の意志は変わらず。京本がこの楽曲に懸ける想いには、楽曲の主人公が大切な人に抱くそれと重なる部分が大いにあるはずだ。

SixTONES – We can’t go back (Taiga Kyomoto) [1 minute teaser]

森本慎太郎「Love is…」

気遣い、思いやり、懐の広さ──筆者は、SixTONESがかつて新横浜ラーメン博物館までのドライブ企画(【SixTONES】ゆるっと…久々の6人だけで横浜ドライブ!!)を行なった際、運転できるメンバーが舞台などで多忙な時期だったことから、“森本がそれとなく普段履きのサンダルではなく靴を履いてきたのでは……?”という説が大好きなのだが、森本慎太郎の気遣い、思いやりや懐の広さを表すには、ぴったりなエピソードではないだろうか。

そんな彼の人柄が滲み出るのが、高校生時代から憧れてきたという平井 大からの提供曲“Love is…”。大切な人に抱いた愛情と、そこで過ごす毎日を「ストーリー」だと捉えるロマンチックな歌詞は、まさに森本慎太郎という人を等身大で捉えたラプソングだろう。瑞々しい印象のトラックは、極上のポップミュージックとして、楽曲の主人公のみならず、我々の生活にも潤いを与えてくれるように鳴り響く。仕事が長引いてしまったものの《ごめんね、遅くなって 眠ったキミの頬に そっと触れてみればほら》と、帰宅後に何気ない幸せを噛み締める経験なんて、日常生活で誰もが最も憧れるシチュエーションではないだろうか。

そのほか、森本の男気を象徴するような、いなたいギターソロも注目ポイント。日常とラブロマンスのちょうど間のところに舞い降りた名曲“Love is…”に、ぜひ期待してみてほしい。

SixTONES – Love is… (Shintaro Morimoto) [1 minute teaser]

田中樹「Sorry」

2010年代のR&Bとヒップホップの絡み合った進化を分析する際に、そこには明快なルールがただ一つだけある。お金の流れを追いかけるか、Ty Dolla $ignの動きを追いかけるかだ──。

“Sorry”を聴き終えて、まず思い浮かんだのが、一部では有名なこのテキスト。ラッパー&シンガーとして君臨するTy Dolla $ignの新曲かと思ったら、まさかの田中樹だった。スモーキーメロウなトラックは、もともとSixTONESのデモ楽曲のなかでもお気に入りとしてストックしていたものとのこと。今回の楽曲化にあたり、これまでに“love u…”などを制作してきたTSUGUMIと共作する形で、自身でラップ詞を綴ったという。

リリックで描いたのは、恋の終わりと自身の未練。合計3バースのなかで、強気だった田中がだんだん弱気に移り変わっていく様子を、リリックとフロウの双方で描き出すのが巧みである。例えば、序盤は《あれから Stopした Calling 俺不足だろ? Shorty》など、“-ing”や“-ty”といった伸びのよいライムを、大回しな超仕上がりのフロウで強調。いわゆる“俺様”な印象を受けるのだが、2バース目以降はライムを強調せず、歌声のトーンを下げて言葉を詰め込み、3バース目でも張り裂けそうな後悔の想いを、あくまでも語るようにラップしていく。まるでどこか弁解をしているような印象だ。

フックの面でも、《Baby you can call me Anytime you want me》と楽曲内で何度もループするのだが、聴き進めていくにつれて“好きなときに電話しなよ”という調子のよさから、“いつでも電話を待っています”という願いを秘めるかのように、受け取る際のニュアンスが変わってくるはず。そのほか、いい意味でのチャラさやウィスパーなど、表現の幅が豊富なアドリブ(ガヤ)も聴きどころなので、ぜひ意識してチェックしてみてほしい。

SixTONES – Sorry (Juri Tanaka) [1 minute teaser]

SixTONES – CREAK [YouTube ver.]

Text:一条皓太

INFORMATION

【レビュー】SixTONES 、11thシングル『CREAK』メンバーソロ楽曲を全曲視聴 column230820_sixtones-creak-01

CREAK

2023年8月30日
SixTONES
松村北斗&西畑大吾W主演
テレビ朝日系オシドラサタデー「ノッキンオン・ロックドドア」主題歌

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