SixTONESが6月8日(水)に発売する7thシングル『わたし』。表題曲は、思いもよらぬ恋に抗いながら、どうしても心奪われてしまう心情を描いたスロウバラードで、メンバーの松村北斗が出演するドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』挿入歌に起用されている。

同楽曲は、SixTONESとしては珍しいバラードでのシングルカットに挑戦するもの。振り返れば、今年元日にYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』にジャニーズから初登場を果たし、4月には『題名のない音楽会』にも出演。“Imitation Rain”“Everlasting”など、グループを代表するバラードをしっとりと届けることで、こうした大舞台を乗り越えてきた。

SixTONESの活動全体が、“聴かせる”フェーズに突入したとまでは断言しかねるものの、彼らがファンダム以外に対しても、歌唱力においても確かな自信と技術を持つ集団だと訴求をしていく上で、今回のリリースがとても理想的な流れの上にあるのは間違いない。

COLUMN:SixTONES

繰り返される《わかってはいるよ》と3つの本心

新曲“わたし”のプロデュースを担当したのは、これまでに4thシングル表題曲“僕が僕じゃないみたいだ”、6thシングル表題曲“共鳴”などを手掛けてきた佐伯ユウスケ。今回も信頼と実績の賜物といえる仕上がりのトラックは、チルトラップの要素を取り入れたピアノバラード調に。全員歌唱の“Lifetime”、ユニット曲であれば京本大我と松村北斗が歌う“ってあなた”など、 SixTONESが持つ既存のバラードのどれとも似つかない新たな一曲となっている。

SixTONES – 僕が僕じゃないみたいだ [YouTube Ver.]

SixTONES – 共鳴 [YouTube ver.]

トラックのポイントは、サウンドの盛り上がりをあえて抑えていること。全体的にボーカルが熱っぽくなりながらも、わかりやすくテンションが振り切った表現にさせない狙いがあるのだろうか。いわゆる曲数を重ねることで初めて歌えるような、テクニックを求められる楽曲の印象を覚えた。筆者個人の想像力を働かせたのは、楽曲の冒頭と終盤に微かに鳴るレコードノイズの役割。これは、アナログな雰囲気によって物語感を漂わせたり、歌詞で描かれる心情への没入感を与えたりする意図があるのだろうか。このあたりはぜひ、読者の意見も伺ってみたいものである。

また歌詞においては、突然の恋に心を突き動かされまいとしながら、本心では《わかってはいるよ》とその想いに身を委ねてしまいたいと認めるフレーズが3度にわたり展開される。奇しくも、ドラマ劇中では男女3組、計6名による恋愛が群像劇的に描かれるのだが、この《わかってはいるよ》に続けて明かされる3つの本心は、彼らの三者三様な恋愛スタイルに重なる影を感じるはず。

と、“3”という数字の類似性に絡めるのは、やや都合がよすぎる解釈とも自覚している。しかしながら、例えば広瀬アリス演じる桜沢純の“恋愛で傷つきたくない”という想いを建前で隠す性格は、最後の繰り返し部分である《わかってはいるよ きっと素敵なことだと/それでも“わたし”が追いつかない》に通ずるとも感じてもらえるのではないだろうか。

何より、この落ちサビの歌詞がとにかく秀逸なのだ。大人の恋愛の多くには、失うものが付き纏う。松村演じる長峰柊磨と恋仲になる役どころの広瀬だが、ドラマ放送前のインタビューでは彼の存在について「すごくミステリアスだけど、“なんか委ねてもいいかも”って、どうしても隙ができちゃうような魅力がある男性」だと分析していた。この“隙”にハマると、もう後戻りができなくなる。たとえ刹那主義だとしても、どうすれば本当の幸せを享受できるか“わかって”いて、それを求めてしまうからこそ、自身に感じる憂い。このあたりの感情を引き出すのが上手いアーティストがいる。お察しの通り、SixTONESだ。

慣例をあえて逆手に取るような「歌割り」の妙

彼らの色気と同居した吐息、あるいはため息は、楽曲内で通奏低音的に横たわっている。“大人っぽい”と簡単にまとめるといささか乱暴ではあるが、雰囲気こそ違えど、常田大希(King Gnu/millennium parade)プロデュースの5thシングル表題曲“マスカラ”でも、このあたりのムードの醸し出し方を育んできたことを読み取れるだろう。つまり、ためらいやもどかしい感情を匂わせるのは、ほとんど SixTONESの専売特許なのだ。

SixTONES – マスカラ[YouTube Ver.]

さて、メンバー自身やファンの間では、今回の新曲を「王道のバラード」と謳っている場面を多く見かけるが、彼らが「このジャンルの音はこうあるべき」と、自分たちらしさを二の次にして既存の音作りの枠組みに収まりにいくような楽曲を発表したことがあっただろうか。彼らの洗練されたサウンド作りについてはもとより、本稿で特筆したいのは「歌割り」の妙である。

まずは《有り得ない》と心が静かに崩れ落ちるような松村の歌始まりでインパクトを与えると、続けて京本大我が細い線をなぞるかのような歌声を響かせる。SixTONESのハイトーンボイスといえば、このふたりだ。そこからの聴き手に純真無垢な印象を与える歌声のジェシー、持ち前のラップをあえて封印した田中樹、《いっそほら》と吐き捨てるような歌声が絶妙すぎる森本慎太郎、グループの歌声のバランスを担う髙地優吾の歌割りも、歌詞やタイミングとメンバー各位のキャラクターの相性が非常に考え込まれている。楽曲における各々の歌声の役割がとても明確なのだ。

そして、楽曲最大の聴かせどころである大サビを歌うのは、松村……ではなくなんと田中。そこからユニゾンを挟みつつ、京本、ジェシーの順にソロパートを披露して楽曲は終焉を迎える。ドラマタイアップという性質上、作品に出演する松村は楽曲の「顔」として、どうしてもイメージの結びつきが強くなるものだ。それにも関わらず、むしろそうした慣例をあえて逆手に取るような歌割りで、他メンバーの表現力にハッとさせられると、ファンはもとより、多少でもドラマの概要を存じている視聴者も気づくのではないだろうか。決して任意のメンバーのワンマンに頼らない、SixTONESらしいチーム意識が色濃く反映されている。

話は戻るが、SixTONESが真正直に「王道」を選んできたことがあったかを少し思い返してみてほしい。彼らはむしろ、自分たちの選んだ道を王道にしていく……もっと言えば、歩いてきた道のりが勝手に王道になるとでも豪語するほど、確かな表現力に基づく強気が売りの集団だったと記憶している。新曲“わたし”も王道のように感じられながら、決してその言葉の意味だけには収まらない楽曲だった。だからこそSixTONESは、私たちの《この胸を奪って》仕方がないのだ。

SixTONES – わたし [YouTube ver.] / Watashi [YouTube ver.]

Text:一条皓太

INFORMATION

SixTONES新曲“わたし”解剖──「歌割り」と「歌詞」|ドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』との相関性 column220525_sixtones-watashi-05

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SixTONES新曲“わたし”解剖──「歌割り」と「歌詞」|ドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』との相関性 column220525_sixtones-watashi-02
初回盤A
SixTONES新曲“わたし”解剖──「歌割り」と「歌詞」|ドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』との相関性 column220525_sixtones-watashi-03
初回盤B
SixTONES新曲“わたし”解剖──「歌割り」と「歌詞」|ドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』との相関性 column220525_sixtones-watashi-01
通常盤

わたし

2022年6月8日(水)
SixTONES

【初回盤A】
[1] CD+DVD
[2] スリーブケース
※初回盤は数に限りがありますので、お早めにお買い求めください。


▼CD
M1. わたし
M2. シアター

▼DVD
わたし -Music Video-
わたし -Music Video Making-
わたし -Music Video Solo Movie-

特典:
【先着購入特典】”わたし”を”わたそう”グリーティングカード
※ご購入頂いた方に先着でプレゼントいたします。特典がなくなり次第終了となりますので、お早めにご注文ください。

【初回盤B】
[1] CD+DVD
[2] スリーブケース
※初回盤は数に限りがありますので、お早めにお買い求めください。


▼CD
M1. わたし
M2. WHIP THAT -Live from “Feel da CITY”-
M3. Everlasting -Live from “Feel da CITY”-
M4. Good Times -Live from “Feel da CITY”-

▼DVD
Documentary of “CITY”

特典:
【先着購入特典】“CITY”アメコミ風絵柄ステッカーシート
※ご購入頂いた方に先着でプレゼントいたします。特典がなくなり次第終了となりますので、お早めにご注文ください。

【通常盤】
CDのみ

■初回仕様
[1] スリーブケース
[2] フォトブック20P
※初回仕様の在庫がなくなり次第、通常仕様に切り替わります。
※現在ご注文は初回仕様で承っております。


▼CD
M1. わたし
M2. オンガク
M3. セピア
M4. 共鳴 -Brave Marching Band Remix-
M5. わたし -Instrumental-

特典:
【先着購入特典】“わたし”絵柄クリアファイル
※ご購入頂いた方に先着でプレゼントいたします。特典がなくなり次第終了となりますので、お早めにご注文ください。

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