lyrical school・hanaのコラム『“スキ”は細部に宿る』第6回「再解釈」。hanaが出会った古今東西の“スキ”を掘り下げていくとともに、撮り下ろし写真も掲載。出会った時、靄のかかった生活に光が刺すようなその一文、一瞬、一枚を紹介していきます。(Qetic編集部)
片付いているとはとても言えない部屋の隅に眠っていたエッセイをふと手に取ってみた。私が何年か前、大学受験とその他諸々のストレスを抱えていて、藁にもすがるように本や音楽で気を紛らわせていた頃に買ったものだ。
読み返してみると、不思議だった。当時印象に残ったエッセイだったはずなのに、文字を辿っていっても自分がこれを読んで何を感じていたのかがあまり思い出せなかった。
少し前にMBTI診断というものがSNSで流行り始めて、試してみたことがある。自分の性格についての93個の質問に答えると、16タイプの診断結果が出る。今では血液型でその人の性格を判断するより、この結果の方がより詳しくその人のことを知ることが出来るらしい。
質問に答えていくと、INFPという結果が出た。
長所も書かれていたけれど、そんなの申し訳程度だろうと感じてしまうくらい、短所として並べられている言葉が重くのしかかってきた。「陰キャ」「繊細すぎる」「ネガティブ思考」……これはほぼ悪口だと思った。所詮ネットの性格診断だし、そもそも人をカテゴライズさせるなんてナンセンスだろう、と自分に言い聞かせてそっとそのページを閉じたけれど、正直凹んだ。当時は感情の起伏が激しい性格がコンプレックスで、ただの診断だと分かっていても、自分の嫌な部分が言語化されて直に伝わって来たことに耐えられなかった。
それでもつい最近になって、やっと考え方が変わってきた。
今までの人生では出会うことがなかった色んな人と関わるようになったり、環境の変化にも少し慣れてきたからか、むしろ上手くいかなかったり落ち込んでいる時こそ、自分がより良い方向に進むためのエネルギーが働いている、と思えるようになった。
気持ちが穏やかな時には絶対に無い、心の底からメラメラと湧き上がってくる原動力みたいなもの。嫌なこと、悲しいこと、悔しいこと。楽しく生きていくためになるべく避けたいけれど、出会ってしまったらそれはそれで良いかな、別に悪いことじゃないな、と思えるようになっていた。これは私にとっては大きな進歩だった。
冒頭で触れたエッセイは、韓国のシンガーソングライター・映像作家・コミック作家など様々な形で活躍するイ・ランさんの「悲しくてかっこいい人」。
彼女が生活していて感じたことが、自身の経験と共に淡々と綴られている。文章を読んでいて、彼女も相当繊細な性格をしていて、感受性が豊かな方であることが伝わってくる。
この人生で、悲しいことからは逃れられないと分かっていながらも、笑いとか癒しとか、一筋の光になるものを探し続けている。上手くいかないことも丸ごと受け入れながら、なるべく楽しく過ごそうとする彼女の生き様が、今の自分の考え方とリンクしている気がした。
「わたしが生きているこの一日を、君も元気で過ごしていますように。お互い無事に生き抜いて、また会えますように。変わらず美しいままでありますように、悲しくいますように、愛し合ってまた別れますように。いつまでもそうしていますように、忘れませんように。」
読み返した時、最初に読んだ時の気持ちが思い出せなかったのは、自分が変わったからだと気づいた。マイナスな感情までも抱きしめて生きることができるなんて、今までの自分にとってはありえなかった。そして彼女のエッセイを読んでいなければ、この変化にも気づいてなかったかもしれない。
悲しくてかっこいい人。何て素敵なタイトルなんだろうと、何度も頭の中で繰り返した。