lyrical school・hanaのコラム『“スキ”は細部に宿る』第12回「浮き足立つ季節」。hanaが出会った古今東西の“スキ”を掘り下げていくとともに、撮り下ろし写真も掲載。出会った時、靄のかかった生活に光が刺すようなその一文、一瞬、一枚を紹介していきます。(Qetic編集部)
すっかり寒くなり、今年も師走のせかせかとした時期が始まった。
ついこの間までジリジリと焼けるような暑さにうんざりして早く寒くならないかと思ったのに、いざ季節が巡れば寒さも天敵だ。分厚くて重たい上着を着たくない。お風呂から上がった後が寒すぎる。冷たい空気が、身体が覚えていた冬の厳しさを思い出させる。
それだけで終わっていたら冬なんて決して越せないけれど、私たちにはクリスマスがある。
あちこちからクリスマスソングが聴こえてきたり、ホリデーシーズン限定の商品が次々と登場して、否応なく浮かれた気分にさせられる。コーヒーショップでは、どうせなら、と季節限定のものを選びたくなり、赤色と緑色をしたカップを片手に歩く時間は何よりも尊く感じる。
街中のイルミネーションを眺めることも好きだ。ジュエリーみたいに光る大きなツリーや、カラフルに彩られたテーマパークのものよりも、地元の駅にあるような何でもないイルミネーションの方が特別感があって、一年中ずっとこうだったらいいのにな、と思うくらい見惚れてしまう。
それでも、実際クリスマス当日は特にやることがない。
どう過ごすのが正解なのか分からないから、大人になってからはこれといった思い出も少ない。あれだけ長い間街中をソワソワさせておいて、結局当日はしっぽりと過ごす事になる。マイナスな意味ではないけれど、拍子抜けするような感覚にいつもなるのだ。
そうしてうかうかしていたらすぐに正月がやってきて、あれだこれだとやり残したことが頭の中に浮かび、気づいたら年を越している。
清々しく新年を迎えたことなんてないから、毎年12月に差し掛かれば「あ、いつものやつですね」と身構える自分がいる。
かつてのクリスマスのメインイベントは、サンタクロースからのプレゼントだった。
昔はやっぱりその存在を信じていて、毎年欲しいものをリストアップした手紙を枕元に置いていた。朝になるのが待ちきれず、午前4時くらいに目が覚めて、薄暗い部屋のベットの脇に見慣れない大きな箱が置いてあるのを確認すると、この上ない満足感に包まれた。無謀なプレゼントを注文したこともあって少し恥ずかしくなるけれど、今振り返ってみても、あの気持ちは確実に12月25日の明け方にしか味わえないものだったと思う。
そして、いつしかサンタクロースの真実を知るようになる。
直接説明された訳ではないけれど、両親から「今年からサンタは来ないよ」と言われた時には何故か理解することができた。はっきりとは覚えていないが、同級生がプレゼントの話をしなくなったことで、何となく勘づいていたのだろう。
逆に「あ、まあ、そうだよな」と受け入れられるくらいに成長するまでサンタクロースの魔法を解かないでいてくれていた両親に感謝している。
一年で一番キラキラした季節だけど、蓋を開けてみれば何をするべきか分からないし、いつか解ける魔法のような嘘を隠し持っているクリスマス。自然と惹きつけられるくらい魅力的で、少し残酷なこの季節を何だかんだ愛している。
私にとってのクリスマスソングといえば、ポール・マッカートニーの『Wonderful Christmastime』。
小学生の頃から冬に家族でドライブに行く時によく流れていて、毎年「今年もこの曲が聴ける」と安心する。
みなさんがこの季節に聴きたくなる曲は何ですか?